第115話


ルナが何かないかと、キョロキョロしながら歩いている。


 

「ん~……なんか、あんまり変わんないね」


「まぁ、そうだな。森を出れば変わるんだろうけど」


「私ってさ、森を出た時ないんだよね~。楽しみだな~。アーちゃんはあるの? 森出た事」


「俺だってないよ。小さい頃からルナとずっと一緒だったろ」


「えへへ、そうだったね。ずっと一緒だったね」


 嬉しそうに手を後ろに組んで、足を大きく上げながら歩くルナ。


 荷物の下に手を当て、荷物を”おんぶ”しているみたいだ。


 昔はよく、ぬいぐるみを背負って”おままごと”を一緒にやったっけ。


 そんな事を、ふと思い出した。



「そう言えばさ、アーちゃん」


「ん? 」


「さっきさ、おばあちゃんがお腹が減らなかったら、疲れてるから注意しろって言ってたよね」


「ああ、言ってたな。それがどうかしたのか? 」


「前にさアーちゃんが”腹が減るのは元気な証拠だ”って言ってたよね? あれと、同じ感じなのかな? 」


 昨日の夜、休憩小屋で言った事だな。


 父ちゃんから聞いた”腹が減るのは元気な証拠”と、さっきおばあちゃんから聞いた”お腹が減らなかったら、疲れてる証拠”。


 確かに似た様な事を言っていたな。



「んー、そうだなぁ。やっぱり色々苦労してきたと思うんだよな。その時に経験した事じゃないのか」


「おじさんと知り合いってわけじゃないよね、おばあちゃん。でも同じような事を言うって事は、本当の事なのかもね」


「そうだな。俺たちは疲れたりしたら、ゆっくり休んで、ゆっくり冒険しような」


「うん! 疲れちゃったら、疲れちゃうもんね」


 ”疲れたら、疲れちゃう”


 うん、ルナらしい考えだな。



「ははは、そうだな。そりゃそうだよな」


「えへへ、そうだよね~」


 元気よく足を上げ道を歩く。


 急に景色が変わるわけもなく、見慣れた森の景色が続いている。


 途中で休憩をはさみ、また歩く。


 先生たちやおばさんたちから聞いた通りなら、お昼ご飯頃には森を抜けられるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る