第110話

「うーん、それじゃあ、こういうのはどうだい? 」


 そんなルナを気遣う様にエミールおじさんがある提案をしてきた。



「この外壁の傷はね、ルナちゃんとアレクス君、二人の冒険の一歩目を刻んだ記念。そう言う事にしておきなさい」


「でも、物理的に刻んじゃダメですよね? 」


「ははは、他の場所じゃ勿論ダメだよ。……でも何て言うのかな、いい記念が出来たよ」


「そうだね、あんた。この凹みを見るたびに、二人の事思い出しそうだよ。どこにいるのかな? 元気にしているのかな? ってさ。だから、いい記念だよ、これは」


「わたしもね、ルナお姉ちゃんくらいおっきくなるね。このへこんでるとこ目指して、おっきくなるの! 」


 女の子がぴょんぴょん跳ねて、凹みを触っている。

 

 おばさんとおじさんも壁の凹みを優しく撫で「本当にいい記念になったよ」と、ささやいていた。

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