第108話


 美味しいご飯を食べて一晩ゆっくり休んだ俺たちは、朝早くから冒険の準備を始める。


 と言っても、早い時間からやっているお店で食べ物を少し買うぐらいだ。


 水はおばさんの家で補充するから問題ないな。


 戻って来てから朝ご飯をみんなで一緒に食べて、出発の確認をする。


 荷物をまとめていると、おばさんが声をかけてきた。 



「はい、これを持って行きな」


 そう言って渡してきたのが、小さな袋と紙が数枚。



「ん、これはなんですか? 」


「こっちの袋の中はスパイスだね。こっちの紙にはスパイスのレシピ、調合の割合だよ」


「いいんですか、おばさま。おばさまが頑張って作ったんですよね」


「ははは、いいんだよ。そんな大層なもんじゃないよ。いつも美味しい美味しいって食べてくれたからね。私も嬉しかったよ、いっぱい食べてくれて」


「おばさん……ありがとうございます。貰っていきますね。ご飯本当に美味しかったです」


「私も大好きでしたよ、おばさまのご飯。このスパイスを使って、美味しいご飯いっぱい作りますね。レシピもありがとうございます」


「私からの応援だから、気にしなくていいんだよ。……それじゃあ、村の入口まで一緒に行こうかね」


 玄関を出て外に出るとエミールおじさんと子供たちが元気に遊んでいた。


 俺たちを見つけると嬉しそうに抱きついてきた。


 頭を撫でるとくすぐったそうに、笑っている。


 そのまま子供たちを連れて村の入口に向かおうとしたとき、ルナが急に足を止めた。


 荷物を下ろして、おばさんとおじさんの前に立つ。



「おじさま、おばさま、ごめんなさい! 」


 急に頭を下げて謝るルナ。


 俺を含め、その場にいた全員がかたまる。



「えっとぉ……どうしたんだい? ルナちゃん」


 困惑するおばさんに、家の壁の方に指を差して説明する。



「昨日壁にぶつかった時に、壁が凹んじゃったみたいで。ごめんなさい! 」


「昨日……? ああ! あれか」


 少し考えたら直ぐに思い出した様だ。

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