第105話


「ねぇねぇ、建物がいっぱいって、どんなのがあるの? 」


「ん? そうだな。ご飯屋さん、薬屋さん、道具屋さん、色々あるな。そして、忘れちゃダメなのが協会の支部だな」


「しぶ? しぶって何? 」


「支部って言うのは、小さいお店かな。協会って言う大きいお店があるんだ。でも、大きいお店だからはそこから動けない。だから色んな場所に小さいお店を出すんだよ。それを支部って言うんだ」


「わかんない」


「あーそうだね、ちょっと難しいね。……アレクス君、何かいい言い方ないかい? 」


「え? ……そうですねぇ」


 急に話しを振られてビックリした。


 ルナの方を見ると「うーん。なんだろう」と唸っている。考えてくれてる様だが答えは出てないみたいだ。


 少し考えてみる。でも支部を支部以外で表現するのは難しいな。


 子供たちも俺の事を静かにじっと俺を見ている。


 そんな綺麗な目で見つめないでくれよ。


 うー、おじさん。そんな話し急に振らないでくれよぉ、困るよぉ。


 部屋に静寂が訪れる。


 アンリおばさんがご飯の準備をしている様で、「トントントン」と包丁の音が響いている。


 ああ、良い匂いがしてきたなぁ。腹が減ってきたよ。


 肉を焼く良い匂いがこちらまで漂ってきた。


 ……! 閃いた!



「あー、あれじゃないですかね。お祭りの出店。お店はあるんだけど、違う場所に店を出すでしょ。お店が本部。出店が支部。みたいな感じ」


「出店! それならわかるよ。雑貨屋さんのおばちゃん、お祭りになると外でお店やってる」


「出店か。……うん、いいんじゃないか。支部は出店だな。それで、その出店の一つがキエルの町にあるんだよ。……アレクス君ありがとう、助かったよ」


「いえいえ」


 ふー、俺の面目は守られた様で一安心ひとあんしんだ。

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