第103話

「キエルの町に行くには、アレクス君とルナちゃんの村とは反対の入口を使うんだよ。ではどう行くのか。うーん、そうだな、まずはこの森を抜けなきゃな。半日、朝起きてからお昼ご飯になるくらい歩く。そうするとね、やっと森を抜けられるんだよ」


「森が無くなるとどうなるの? 木が無くなっちゃうの? 」


「そうなんだよね。木が無くなっちゃうんだ。その代わりに一面平原、そうだな、原っぱでいっぱいになってるんだよ」


「原っぱ? 原っぱってとこなら、いっぱい走れるの? 」


「ああ、走っても走っても、大丈夫だよ」


「いいなー、僕も行きたいなー」


「私も行ってみたなー」


「そうだな、もっと大きくなったら、みんなで行ってみような」


「約束だよ」「楽しみだな~」「私も行く~」


 子供たちは口を揃えて楽しみを口にする。


 子供たちと同じで、俺もルナも森を出た事がない。


 周りが森に囲まれた村で産まれ、行き来した事があるのは、自分の村とこのオムタ村だけ。


 平原の事も先生たちから聞いただけ。


 想像するが、いまいちピンとこない。


 木が無い? 一面原っぱ? 


 わからないな。だから楽しみだ。



「そうしてね、その原っぱをずーっと歩いて行くと、キエルと言う町に着くんだよ」


「どのくらい歩くの? いっぱい歩くの? 」


「そうだな、んー、森を抜けてから二日ぐらいかな。お馬さんがいればもっと早く着くんだけどね」


「お馬さんすごい! お馬さんはえらい! 」


「そうだね、うんうん、お馬さんはえらいね。だからみんなで大切にするんだよ。わかったかな? 」


「「「「はーい」」」」


 子供たちの声が気持ちよく揃って、大きな声で返事を返す。


 ん? 最後の返事。隣からも聞こえた気がしたよう……。

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