第89話


 最初のページは俺たちの最初の冒険、冒険の練習の事が書かれている。 



「これが俺たちの最初の冒険だったな。懐かしいな」


「そうだね、懐かしいね。でも私は、昨日の事の様に覚えているよ」


「うん、そうだな。俺もよく覚えているよ」


 せっかくだから自分の日記を読み比べをするか。


 ルナから俺の日記を返してもらい、読み比べをする。


 ……読み比べをしていくうちに、ある事に気が付いた。


 ある事と言うか、無い事と言うか。


 俺の日記に書いてある事が、ルナの日記には書いて無かったり。


 逆にルナの日記に書いてある事が、俺の日記には書いて無かったり。



「面白いもんだな」


「な、な、何が面白いの? わ、私、変な事書いてた? 」


「いや、そうじゃなくてさ。結構違いがあるもんだなぁって」


「……ああ、そう言う事。不思議だよね、同じ時間で同じ物を見てきたのに」


 ルナは胸をほっとなで下ろして「ふー」と息を吐いている。


 恥ずかしいのか、そわそわして落ち着きがない感じだ。


 俺も人が書いた日記を読んだ事が無いので、実は少しドキドキしている。


 でも、恥ずかしいからそんな事言わない。


 日記の内容には意外と違いがあった。


 俺は出来事をそのまま書いてる。


 ルナは、その何て言うか、心情的なものが多い気がする。


 俺はあの時、こういう風に思っていたのか。


 ルナはあの時、そんな風に感じていたのか。


 読み比べをして、その違いに初めて気が付いた。 

 

 確かにこれを一つにまとめたら、いい感じの本になりそうではあるな。

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