第68話


「いやそうじゃない。確かに心配じゃないと言えば嘘になるが、その話しは終わっている。お父さんもお母さんもルナの事を応援してるよ」


「……じゃあ、何の話し? 」


 とりあえず安心だが、いまいち話しが見えない。


 自然と口調がきつくなる。



「ルナがいつも言ってるもう一つの夢? かな。そっちの話しだ」


 私が冒険に出る意外の夢。そうなれば多分あれだろう。


 事あるごとに口にする言葉。それは……



「お金持ちになる……ってやつ? 」


「ああ、そっちだ」


 やはり話しが見えない。



「お金持ちになっちゃダメなの? 」


「いや。お金はとても大事な物だ」


「じゃあなんで! 」


 声を荒げる。


 私は……私はただ……



「ルナは優しいからね。そのお金持ちになるってのも、私たち家族のためなんだろう? 」


 私の家は裕福じゃないし、貧しいわけでもない。


 両親に私と弟妹四人。合わせて七人家族。


 食うに困る事はなかったが、弟妹たちの服はいつも私のお下がりだし、もっと美味しい物を食べさせたいと思った事はある。


 服がお下がりなのはどこの家でも同じだし、ご馳走なんてそうそう食べられないなんて知っている。


 お父さんとお母さんはいつも働きづめだ。私たち姉弟たちの面倒を見るのにも忙しい。


 もっとゆっくりして欲しい。


 それを一気に解決するのが、お金だ。


 だからお金持ちに成りたい。

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