第67話


「ただいまーっと。……おっ、なんだルナ、髪の毛を切ったのか? 」


「おかえりなさい、お父さん。エヘヘ、どう、似合う? 似合う? 」


お父さんの前に立ちクルっと一回転して見せた。



「ああ、とっても似合うよ。昔を思い出すなー。あの頃のルナは小さくて可愛かったなー」


「むー、同じ様な事お母さんにも言われた」


「ん? そうなのか。やっぱり夫婦は似るもんだな、ハハハ」


「はいはい。……でも今日はいつもより早いんだね、お仕事終わったの? 」


「んん? ちょっとな、ルナと話しがしたいと思ってな」


 随分と改まった言い方をするお父さん。


 いつもの場所、お母さんの隣の椅子に座る。



「私と? いいよ、何の話し? 」


 私も椅子に座る。お父さんとお母さん、二人と対面する形になる。


 言いにくい事なのだろうか、お父さんはお茶を一口飲んでから話し始めた。



「アレクス君と一緒に冒険に出る日が近づいてきただろう。その話しをちょっとな」


 緊張が走る。思いもしなかった話しが出てきて心臓が「ギュッ」となった。


 このタイミングで、この切り出し方は嫌な感じがする。



「……まさか反対なの? 」


 今更、反対なんてされたら……どうしよう。


 ”一緒に冒険に行こう”

 

 昔交わしたあの約束、アーちゃんとの約束を守れなくなる。


 それは……それだけは嫌だ。

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