第66話


 私はアーちゃんに新しい髪型を見せつけて、満足気に家路に着く。


 嬉しくなってスキップをしながら歩いていたら、あっという間に家に着いちゃった。


 家の前でもう一度、髪の毛を触ってみる。


  

「えへへ」


 アーちゃんが似合うって言ってくれた髪型。


 それを思い出すだけで笑みがこぼれてしまう。

 


「ただいまー」


 家の中にはお母さんがお茶を飲んで休んでいた。


 夕飯にはまだ早く、弟妹たちは外で遊んでいるのだろう、まだ帰って来ていない。


 

「おかえり。どうだったんだい、アレクス君の感想は? 」


「うん、似合うってさ。それに私っぽいって」


「なんだいそりゃ? 」


 髪型の感想を「っぽい」なんて聞いた事が無い。そんな感じの顔をしているお母さん。


 それには私も同じ意見だ。


 普通「っぽい」なんて感想、女の子に使わないでしょ。


 まぁ、そこが「アーちゃんっぽい」けど。


 でもお母さんの「なんだいそりゃ」って顔がおかしくて笑っちゃう。



「昔は短かったでしょ。そのイメージがまだ残ってるんだってさ」


「確かにね。……そう言えば、なんで伸ばしたんだい? 短いのが好きー、なんて言ってたのに」


「えへへ、ないしょー」


 秘密のおまじないはもう叶っている。


 でも、この秘密は私だけの物。


 きっとずっと秘密のまま。


 そんな会話をしていると、お父さんが帰って来た。

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