第63話


 普通は変換器を貰う事が出来るのは、学校を卒業してからだ。


 学校を卒業して、人間性や性格に問題が無いと判断されて、初めて持つ事が許される。


 それでも村に提供されたやつを貰う、と言う形だ。


 ガロッゾ先生が言っていた通り、個人で貰うのは珍しい事だ。


 先生たちはかなり無理をしてくれたのであろう。感謝してもしきれない。


 変換器を貰ってから一通りの事は試してみた。勿論、魔石は今までと同じ物だ。


 冒険の荷物を背負って歩いてみたり、村の中を走り回ってみたり。狩りにも行ってみた。


 色んな事を試してみたが、結果は今まで使っていた変換器と同じ使用感だった。


 やはり同じ型、同じ大きさの変換器では違いは無い様だ。


 性能の確認意外にも、早くに変換器を貰って良かった事がある。


 父ちゃんの農作業の手伝いが出来た事だ。


 今までの手伝いは肥料を撒いたり種を蒔いたり、後は草むしりや収穫ぐらいだった。


 力が必要な畑の開墾(かいこん)や水の運搬等は、父ちゃんが基本的には一人でやっていた。


 勿論父ちゃんは変換器を使っている。それでも一人でやるには手が足りないみたいで、いつも忙しそうにしていた。

 

 母ちゃんも変換器を持っている。農作業もやるが、家事や俺たちの面倒を見る事が忙しくなるにつれて、あまり手伝えなくなっていった。


 変換器は家事でも大活躍する。料理に使う水も一度に大量に汲んでくる事が出来る。食材を買う時は大量に持てるし、洗濯の際に手が荒れたり、あかぎれをする事もない。


 弟二人を両肩に担いで、あやしているのを見た覚えもある。

 

 そんな昔の事を思い出していると、台所から声が聞こえた。

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