第43話


「皆さん、おはようございます。まずはアレクス君とルナさんが無事戻って来ました。はい、拍手~」


 みんなが拍手をしてくれた。二人はなんだか恥ずかしくもあり、誇らしい気分になった。


 それからリリアン先生が「はい」と一度手を叩き、みんなを静かにさせてから授業を始めた。



「それでですね、今回の授業はお金を稼ぐ方法・手段について教えたいと思います。村の中で暮らすにしても、外に出ていくにしてもとても大切な事ですよ」

 

 アレクスとルナの方をチラッと見た。金を稼ぐ方法。冒険をするなら色んな所で路銀を稼ぎながらになるだろうから、必要な知識の一つだろう。


 金稼ぎの方法と聞いたルナの目が段々と大きくなりキラキラし始めた。



「と言っても、簡単に儲かる話なんてものはありません。皆さんは、簡単に稼げるとかすぐに大金持ちになる方法がある。なんて話は真に受けてはいけませんよ」


 ルナの目から光が消えた。簡単に金儲けが出来ていたら、みんなすでに金持ちになっている。



「皆さんは真面目に働いてお金を貰って下さいね。それが安心で確実です。それじゃそうですね。……皆さんはどうやればお金を貰えると思いますか? 」


 子供たちに金の貰う手段を聞いてきた。「野菜を売る」「動物を捕まえて肉や皮を売る」「お店をやる」子供たちは思い思いの事を口にした。


 リリアン先生はしばらくの間静かにしていて子供たちの考えが出揃うのを待った。


 一通りの考えが出たみたいで次第に静かになる教室。頃合いを見計らいリリアン先生が口を開いた。



「はい、皆さんの考えはだいだい出た感じですかね。それじゃ一旦まとめてみましょうか。……ええと、そうですねぇ」


 リリアン先生はいつの間にかみんなの意見を自分のノートに書き留めていて、それを見ながら考えをまとめた。



「うーん、まとめると。物を売る。お店をやる。お店で働く。ですね。うんうん、皆さんだいだいはわかっていますね。ではこれらのお仕事はどこに行けば受ける事が出来るか、わかりますか? 」


 仕事をする、と簡単に言うが勝手に押しかけてやるわけにはいかない。物を売るにもそこら辺で勝手に売る事も出来ないだろう。


 アレクスとルナが今回の冒険に使った金は自分たちで直接稼いだ金ではない。家の手伝いと小遣いを貯めたものだ。

冒険には金がかかる。腹は減るし装備はいつか壊れる。暑さや寒さ対策も必要になるだろう。だから金を稼ぐのはとても大事だ。



「んー、ちょっと難しかったですかね? 答えは協会と役所です。逆にお仕事をお願いするのも同じくここですね」


 協会は各地に支部がある。村単位にはないが町単位ならある。役所は村にも一応ある。ただし立派な建物じゃなく村長の家がその役割をしている。



「協会ではお仕事の斡旋、つまりお仕事を紹介しています。どんなお仕事かと言うと、基本的に協会のお手伝いです。簡単なものは事務作業、書類の整理や授業の助手等があります。次に難しいもの……と言うか危険なもの。これは他の土地への手紙や荷物の配達なんかあります。巡回教師だけでは周りきれないものを手伝ってもらう仕事ですね。そして手配魔獣の討伐。つまりは狂暴な動物や魔物を退治するお仕事です」


 魔物退治。この言葉に反応しない男の子はいない。もちろんアレクスも男の子だ。



「お仕事は基本、難しければ難しいほどお給料が高くなります。動物や魔物退治はそれ自体にお金が出ますし、動物だったら素材を、魔物だったら魔石を売ればさらに高額のお金が貰える可能性があります」


「じゃあ魔物退治すれば一獲千金も夢じゃないって事ですか? 」


 アレクスは身を乗り出して質問する。ルナもこの話には興味があるように、目を大きくしている。

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