第41話


「ほまはへ」


「ああ、まずはパンを食べてからな」


「ん」


 ゴックンとパンを呑み込みアレクスと一緒に学校に向かう。



「行ってきます」


「ああ、行ってらっしゃい」


 朝早いが仕事を始めている村人は少なくない。そんな人たちから見つからないようにアレクスの後ろに隠れて警戒しながら歩くルナ。



「歩きにくいんだけど」


「いいからいいから」


 キョロキョロと周りを見ながら背中を押してくるルナ。そのままの姿で村長の家に着く。


 アレクスがノックをし、出てきた村長に挨拶をし変換器を返した。オムタ村の朝市で買ったお土産をルナが渡し、お礼を言って学校に向かう。



「ふぅー、ここまで来れば安心だね」


「何が? 」


「ちょっとね」


 アレクスの質問を適当に返しながら学校内にある部屋に急ぐ。そこに先生たちは住んでいる。


 学校は協会が建ててくれた物だ。知識を広めるために各地に建設している。 


 田舎の村だと外から来た人が泊まる宿が多くない。そこを協会の人間が埋めてしまうと支障が出る。そこで学校内に巡回教師の宿泊施設を作り、リリアン先生を始め他の先生たちもこの施設を利用している。    


 逆に外の人がいない時は宿を利用して村に金を落としている。


 先生たちが泊まっている部屋の前に着いた二人はドアをトントンとノックをした。



「先生。アレクスです。ルナも一緒です」


「あら? アレクス君? どうぞ、入って下さい」


「失礼します」


 部屋に入るとリリアン先生とガロッゾ先生の二人が居た。まだ授業には時間があるのでお茶を飲みリラックスしていた。



「昨日の夜無事帰って来ました。それで挨拶に来ました」


「私もアーちゃんも怪我も何もありませんでした」


「お帰りなさい。それは良かったです。一安心しました」


「おお、お帰り。どうだった初めての冒険は? 」


 二人の顔を見た先生たちは安堵の表情を浮かべた。



「はい、とても楽しかったです。猪を途中で見つけたんでルナと二人で狩ってお土産に持って行きました。後はただ歩いてご飯食べてただけと言うか」


「ガハハ、すげぇじゃねぇか。怪我とかしなかったから、良かったじゃねーか」


「まぁ、そうなんですけど」


 実際冒険と言うよりは隣村にピクニックしに行った感が強かった。狩りは村でもやる、言わば日常の範囲だ。魔物との戦いも見知らぬ人との交流も無かった。



「まぁ、いきなり遠出は危険だからな。親御さんの気持ちもわかってやれや」


「はい、わかってます。……ああ、そうだ。これ」


「ん? 」


 冒険の記録を書いた日記を取り出すアレクスとルナ。それを受け取り読む先生たち。


 書いてあるのは、ここ数日なので直ぐに読み終わった。

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