第38話


 謎の魚の塩焼きと野菜スープを堪能する二人。食べ終わると慣れた手つきで片付けを済ませる。


 使った道具を洗い体を拭き日記を書いて寝袋に入った。


 翌日も天気が良く順調に歩を進める事が出来た。



「あっ!アーちゃん見えたよ」


 暗くなる前に村の入口が見えてきた。たった二・三日なのだが懐かしく感じる。


 

「ああ、帰ってきたな」


 歩く速さが増す二人。ついに走り出して、どちらが先に村に着くか競争するかのような勢いで村に向かった。



「たっだいまー! 」


 先に着いたルナが、テンションが上げり過ぎたらしくバンザイしながら笑顔で大声を上げながら村に入っていく。


 入口付近で井戸端会議をしていたおばちゃんたちがその一部始終を見ていた。


 ルナと目が合うと気まずい空気が流れる。


 でもすぐに「ああ、ルナちゃんか」「ルナちゃんじゃない」となぜか納得したように井戸端会議を続けた。



「ルナ、早いって」


 遅れて来たアレクスが追いついた。なぜかバンザイしたまま固まっている後ろ姿のルナがいた。


 動く気配が無いルナに近づく。



「ルナ? どうした? 」


 背後から声を掛けてみたが反応が無い。仕方ないので前に回ってみる。そこには顔を真っ赤にして動かなくなったルナがいた。



「どうしたルナ? 」


「アーちゃん。私もうこの村に居られない」


 意味のわからないの事を口走るルナ。しょんぼりした様子で今来た村の入口の方にとぼとぼと歩いて行った。



「ちょ、ちょっとルナ! どこ行く? 」


「アーちゃん、元気でね」


 また意味のわからない事を言うルナ。



「意味わからん事言ってないで家に帰るぞ」


 しょうがないのでルナの手を引いて家を目指すアレクス。それを見ていたおばちゃんたちが何か言ってる様な気がしてルナはさらに顔を真っ赤になった。


 ルナは家の前に着いても下を向いたまましょんぼりしてる。家に着くまでにアレクスが何か言っていたが全然覚えていない。



「ルナ着いたぞ」


「……」


 声を掛けても返事が無いので、アレクスがノックをする。

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