第21話

 夕暮れが近づき薄暗くなってきた。気温も落ちてきて肌寒くなり、森の表情も一変して不気味なものになってきた。荷物の中から防寒着として持ってきた厚手のマントを羽織り、手袋を出してはめる。ルナは肩掛けマントに付いているフードも被る。


 薄暗くなり道が見えづらくなってきたので、ランタンに火を付け足元に注意しながら進む。



「日が落ちて寒くなってきたな。大丈夫か? 」


「うん、大丈夫だよ」


「リリアン先生は暗くなる前に休憩小屋に着くって言ってたよな? 」


「そうだけど先生たちはこの道に慣れているけど、私たちは初めてだよね。それじゃ歩く速さとか違うんじゃない? 」


 普段から協会の仕事で色んな場所に出向いている先生たち。それに比べて今日が初めての冒険の子供二人。

違いがでるのは当たり前の結果である。


 しばらく進むと小屋が見えてきた。窓から明かりが見えないので誰も中に居ないのだろう。


 小屋に近づきランタンの灯りを頼りに一周りして外観を見てみる。中央に階段が三段ある木造でドアの両側に窓が二つと側面に一つ、煙突が空高く伸びてるのがわかる。裏手には薪置き場があり多くの薪や枝が保管されていた。


 ただ休憩するだけに使うには、もったいないほど立派だ。ウッドデッキ付きログハウスの様な建物だ。リリアン先生が言っていた通り、裏に川が流れているので水には困らないだろう。


 アレクスが階段を昇りドアの前に立ちルナがそれに続く。とりあえずノックをしてみると、コンコンと音が響く。……返事が無い、誰も居ないようだ。



「すみません。誰か居ますか? 」


 再度ノックをしてみる。……やはり返事は無い。

 

 ドアをゆっくり開けて中を見てみる。しかし真っ暗で何も見えない。


 中に入りランタンで照らして見ると、テーブルとイスが四脚、二段ベットが二つと質素な寝具、奥に薪ストーブがあり、簡単な料理設備、棚の中に皿やナイフとフォークもあり鍋やフライパン等もあった。


 テーブルの上にあったランプに火を点け周りを見てみる。意外と埃っぽくなくて綺麗になっている。リリアンたち協会の人たちが丁寧に使用しているのがわかる。


 油がもったいないのでランタンの火を消してテーブルの上に荷物を置き、薪ストーブに火を入れる準備をする。


 アレクスが裏手に行ってマキを斧で割る。焚き付けに使う細い物、火力を上げる中くらいの物、火が安定したら入れる太い物の三種類を作る。


 ルナが小屋の中に持って入り薪ストーブの前に行き、下から細い薪を格子状に組んでいき真ん中に良く乾いた枝を入れる。


 次に細く割った薪の表面をナイフで薄く削り、小さい羽が何重にもなってるような形を作る。技術のイリアム先生が教えてくれたフェザースティックと言う着火剤だ。


 フェザースティックにマッチで火を点けてみると、薄い羽の部分に勢いよく燃え広がった。そのまま格子状に組んだ薪の真ん中に入れると火が枝に移り一気に燃え広がった。火が点いたら中くらいの薪を入れて火を大きくする。火が安定してから太い薪を入れて火起こしは終了。


 薪がパチパチと鳴きだし暖かい炎が小屋の中に広がり始まった。


 マキ割りを終えたアレクスが帰ってきて手袋を外して薪ストーブに手をかざして暖まる。

 

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