第19話
しばらく歩くと水の流れる音が聞こえてきた。ここまで何事も無く順調に進んでいる。確か左側に川が流れていたなー、なんて事を思い出しながら歩いていると、道が広くなり川が見えてきた。
記憶の通り左側に川が見えてきた。川幅は五メートルぐらいで腰ぐらいの深さ、流れはゆっくりで魚も泳いでいる綺麗な川だ。途中は見えなかったが村に続いている。
「少し休憩しようか」
ここまでずっと歩き続きだった二人。変換器のおかげで疲れはしないが、腹は減るし喉も乾く。
川の近くで一休みする事にした。川から水を汲んできて、枝や木を集め火を起こした。火が安定したら川の水を入れたポットを火にかけ沸騰するのを待った。
その間に紅茶の葉を出し、砂糖変わりのハチミツを用意してしばし待つ。ポットからグツグツと沸騰した音が聞こえてきた。
カップの上に茶こしを置き茶葉を入れお湯をゆっくりと注いでいく。紅茶の優しい香り立ってきた。
そこにハチミツをスプーンで一杯、二杯、三杯。
「ちょっとアーちゃん、ハチミツ入れ過ぎだよ! 」
「いいじゃん、母ちゃんが居ないんだから」
「お姉ちゃんが居ます! 」
ルナは胸を張りぷんすかしている。自分はスプーンに一杯だけのハチミツを入れてから紅茶を飲みほっと一息ついた。カップを両手で包み込むように持つ。すると紅茶の熱が手を伝わってきて温まってきた。
体の疲れは感じ無いが精神的な疲れは少しだけあった。いくら変換器でも精神までは守ってくれない。
そのまま少しの間紅茶を飲み、川の音を聞きながら休んだ。
紅茶を飲み英気を養った二人は片付けをして焚火に水を掛け、また歩き始める。
道は川沿いに続いていて、川を眺めながらゆっくりと進む。足音と荷物の揺れる音。道中誰とも合わず二人だけの静かな時間が続く。
このまま静かな時間が過ぎていくと思った時、予期せぬ音が静寂を破った。
グ~
アレクスのお腹の虫が騒ぎ出したのだ。さっきの休憩からだいぶ時間が経っていた。二人は顔を見合わせて笑った。
「そろそろお昼ご飯にしよっか」
いつのまにか太陽が真上に昇っていた。村を出て数時間。時間的にもお昼だ。川沿いに移動して準備を始める。
アレクスは休憩の時と同じく焚火を起こしお湯を沸かした。ルナはご飯の準備のため小さいフライパンを出し油を引いて熱した。
干し肉を薄く切りフライパンで軽く焼き、玉葱は一センチぐらいに輪切りにしてバターで焼く。トマトも一センチぐらいに切る。レタスは手の大きさぐらいに千切る。
丸パンを横半分に切り、切った両面にバターを薄く塗る。そして下から、パン、レタス、焼いた玉葱と干し肉、そこにマヨネーズをかけまたパンで挟む。これで特性ルナバーガーの完成した。
そこにアレクスが淹れた熱々の紅茶が揃えば、立派な昼食の出来上がりだ。
「「いただきます」」
焼いた干し肉とバターで焼いた玉葱の良い匂いが食欲を刺激する。
二人は手を合わせてから食べ始めた。アレクスは口を大きく開けガブリと一口。ルナバーガーに綺麗な歯形が残った。
「んっ! 美味しい! 美味しいなこれ! 」
「ふふん。そうでしょそうでしょ」
ルナも一口パクリ。うん、美味しく出来てる。
焼いた事によりうま味が増した干し肉、バターの風味が乗った玉葱、新鮮なトマトとレタス、そこにマヨネーズの酸味が合わさり、パンで挟む事により見事一体化している。
ルナは味わうようにゆっくりと食べる一方でアレクスは、誰にも渡さないぞ、と言う速度で食べてしまった。
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