第18話
村を出発したアレクスとルナ。両脇を森に囲まれた道を進む二人。最近は雨は振っていなかったので、ぬかるみや水たまりが無く歩きやすい。
二十分も歩くと村は見えなくなって、周りの景色は森一色になり風が木々の葉を揺らし優しい音を奏でていた。森を知らない者にとっては何が飛び出してくるかわからない深い森。しかし森に囲まれた村で育った二人にとっては、もはや見慣れた光景で特に警戒した様子は無い。
最初は適当な話をしていたが、そのうちに会話も少なくなり足音だけが響くようになった。しかしそこには気まずい雰囲気などなく、二人の間に流れる空気は自然のものだった。
「ねぇ、アーちゃん」
「んー? 」
アレクスが、いい感じの長さの、いい感じの太さの、いい感じの棒を振り回してる時にルナが質問をしてきた。
「聞いた事無かったけど、どこか行きたいとこがあるの? やりたい事とか」
「んーそうだな」
冒険に行く。漠然とした目標はあったが「ここに行きたい! 」と言った具体的な場所は無かった。
「とりあえず海は見てみたいな。……ああ、あと船も乗ってみたいな」
「あー、海ね。それなら私も見てみたかな」
リリアン先生の授業で教えてもらった海。アレクス達の村には湖や池は無く、魚は近くの川で釣っていた。
「……なぁ。ルナはないのか? 行きたいとこや、したい事? 」
「私? 行きたいとこは思いつかないけど、したい事はあるよ」
「何? 」
「お金持ちになりたい」
「あー」
昔からルナはお金や宝石が好きだった。村での金持ちなんて、村長の家がちょっと大きいだけだ。
村では主な収入は野菜や山菜、養蜂で取ったハチミツ、狩りで取った肉や皮等だ。定期的に来る行商人に売ったり物々交換なんかしている。
村は貧しくは無いが特に裕福でもない。だから金持ちの生活がどんな感じか知らないし、なり方も知らない。
ちなみに協会の先生たちは協会本部から給料が出ているので、各村での負担は無い。
「金ってどうやって稼ぐんだ? 」
「さぁ、わかんないよ」
「わかんないって……」
どうやらルナも漠然とした目標しかないようだ。
しかし自分も特に目標も無いまま冒険に出ようとしているから同じようなもんか。
そう思うと自然と笑いがこみ上げてきた。
「ははは。俺たち二人揃ってわかんない事ばっかだな。俺たち似た者同士なのかもな」
「ふふ、そうかもね。似た者同士かもね」
「んじゃ、似た者同士楽しんで冒険するとしますか」
「うん! 」
さっきまで静寂だった道中に笑い声が響く。
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