第16話
冒険の準備に戻ったアレクスをルナはじっと眺めている。
「ねぇ、変換器も持っていくの? 」
「ああ、本番と同じ装備じゃないと練習の意味が無いからな」
変換器を使えるぐらい体が成長しているアレクスとルナは、リリアン先生とガロッゾ先生の授業で何回か使ったこと事がある。
予備の変換器と魔石は村長が保管しているので出発する時に借りよう。
村や町の街道には休憩小屋が等間隔で建っている。これは協会の巡回をする際に休憩するために使用する物だが、行商人とその護衛なども使って良い事になっている。
アレクスとルナは二人で相談しながら冒険に必要な物を書き出した。食料、水筒、寝袋、簡単な料理器具、暗くなった時に使うランタン、あると便利なスコップ、そして武器と変換器と魔石。それらを準備するためのお金。そんな事を考えながら準備を進めた。
準備は順調に進む。二人は必要な装備を揃えるためにお金を貯めた。
アレクスは畑仕事や狩り、家事の手伝いをしてお小遣いを貯め、村の仕事として土木工事もやった。石や木材を運びを手伝ったりもした。
ルナも家の手伝いをしてお小遣いを貰いそれを貯めた。また料理の腕を磨くために様々な本を読んだり、お母さんやリリアン先生を始め協会の先生たちにも聞いたりして、色んな料理に挑戦した。
その間にも授業を真面目に受けて知識を増やしていった。基本的な読み書きや算数。そして各先生からはそれぞれ専門的な事。
知識のリリアン先生からは各地の歴史や風習等。
戦闘のガロッゾ先生からは基本的な戦い方や罠の作り方、危険な動物や魔物・魔人の特徴。
技術のイリアム先生からは火の起こし方や水を綺麗にする方法を始めサバイバル術。
医療のエイトリン先生からは応急手当のやり方や薬草、病気に対する知識。それに体に良い料理。
そして変換器の使い方や実際使っての授業。色んな知識を惜しみ無く教えてくれる先生たちには感謝しかなかった。
暖かい春が過ぎ、うだるような暑さの夏が来て、物悲しい秋が訪れ、全てが止まったかの様な冬が来る。
いくつもの季節が過ぎ、ショートカットだったルナの髪が肩まで伸びた。アレクスの身長はまだルナより小さい。
そしてとうとうこの日が訪れた。
冬の名残だっ雪も溶け、春先の優しい風が吹く季節になった。朝日が昇り一日が始まる。鶏が元気に鳴き、村のみんなが動き始める。いつもと同じような一日が始まろうしていた。そんななか、いつもと違う事が起きていた。
村の入口にいくつかの人影が見えたのだ。アレクスとルナの家族、それとリリアン先生とガロッゾ先生だ。今日は長い間準備していた冒険の日。
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