第5話 密猟者



 アニマル・ラッキィの世界には、竜がいる。

 しかし、竜は個体数が少ないので絶滅危惧種に指定されているらしい。

 人がその姿を見かける事は滅多にないのだそうだ。


 発売前に聞いた情報でも、そんなような話をちらほらきいた記憶がある。


 今度のゲームには竜がでるのか、と私も思っていた。


 竜と言えば強いイメージがあるけれど、この世界ではそんなことはない。


 個体によっては人間より弱いものもいるという。

 あとは子供の竜なども、人間には簡単に負けてしまうのだとか。


 そんな竜のうろこや角はレア素材で、病気によく効果を発揮するらしい。

 そのため、密猟者が竜をよく狙うのだ。


 病気にかかった人達は、借金をしてまでその素材を手に入れようと、密猟者にお金を渡す。

 そしてその密猟者も貧困にあえいでいる事が多くて、その負の連鎖はなかなか断ち切る事ができないでいた。


 獣の里に巡回してくる騎士の独りも、近年密猟が増加しているとぼやいていた。


 そんな竜が、獣の里に落ちてきたという事は


 密猟者に狙われたのだろうか。


 だが、他の町に落ちるよりは運がいい。


 ここは様々な獣と共存する里なのだから。




 里の外に出てみると、すぐに竜の姿が見つける事ができた。


 その巨体が目立つからだ。


 大きさは20メートルほど。


 子どもではないようだ。


 だが、遠くからでもわかるほど、傷ついていた。


 血がたくさん流れたあとで、ひどく憔悴しているようだった。

 怪我だらけで、動く気力もなさそう。


 竜の事はよくわからないけど、顔色が悪いように見える。


 かけつけた町の人達は、どたばたと大忙しで動いていた。



「薬が足らない、もっと持ってこい!」

「後は清潔なタオルだ」

「それと水もいるぞ!」


 みんな竜を助けようと一生懸命にできる事をやっている。


 それが分かるのだろう。


 手当されている竜も大人しくしていてくれた。


 私やアリオも「何か手伝う事はないですかっ!」と、急いでその輪に加わった。


 竜の治療は、大仕事だった。その日から、三日三晩かかったのだから。


 三日後には峠を越えて、容態が安定したが、怪我が深刻だったらしく、竜の傷の治りはおそかった。



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