釣内島暮らしの手引書

木古おうみ

御見送りの手引き

 夏はひとが亡くなりやすい季節です。

 都会ならともかく、こういった島では医者や葬儀屋が足りず、正当な手続きを踏めるまでご遺体を家に安置しなければいけない場面も多いでしょう。


 その際の手引きです。



 一、ご遺体を北枕に寝かせましょう。


 二、日没後は一時間に一度、ご遺体に呼びかけてください。その際、故人や故人に近しい者の本名以外を呼んでください。故人の名前を呼んではいけません。


 三、枕元には鏡を置きましょう。故人がまだ自分は錯覚しないため、死に顔が正しく映る位置に置きます。


 四、偶に故人の目が開くことがあります。死後硬直の段階で自然なことです。


 五、ご遺体に呼びかける名前は架空のものなら何でも構いません。しかし、「真砂まさごさん」とは呼んではいけません。


 六、呼びかけに応じて目が開くようであれば鏡を増やしてください。


 七、目が開く以外でご遺体に違反があった場合、遺族の方々でご遺体の周りを囲み、全員で畳をたたきながら呼びかけを続けましょう。異変が収まるまで続けてください。



 夜明けまで必ず繰り返しましょう。



 御尾みお寺住職

 釣内つりうち鐘門しょうもん

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