第36話

"フータース"を出た俺達は、イリスが滞在する"銀蘭亭"へ向かう。


夕暮れ時になっており、この時間帯はダンジョンの浅い地区で活動する若手や終業した街の人が行き交っていて非常に込んでいた。


そんな中をはぐれないよう、俺の腕に抱き付くイリスと宿に到着し彼女の部屋に入ると、俺が魔鎧を解除して一息ついたところでイリスが抱きついてキスをしてくる。



「ふぅ……」


「んっ♡」


「むぐ」


チュッ……チュルッ……



イリスは革鎧を着けたままなので、抱きつかれているその感触はイマイチなのだが……


暫く好きにさせていると、彼女は口を離して申し訳無さそうに自分の防具へ手をかける。



「防具を着けたままじゃ感触が微妙よね。すぐ脱ぐから」


「まぁ……にしても、そんなにがっつかなくてもいいぞ?明日は休みにするし」


「そうなの?」


「ああ。ウェンディさんに注文した触媒は明日セリアに届くらしいし、2日後にダンジョンへ入ることにするからそれまでに荷車の調達もしておく」



荷車に関しては少し金が足りなかったので"紛い物"で作成するつもりであり、その辺でよく見る物を模造しようと思っている。


荷車のようなありふれた道具であれば、もし模造品だとバレても自作しただけだと判断されそうだしな。


そんなわけで……換金はまだだが今日はそれなりの稼ぎがあったし、今後は長期間ダンジョンへ入ることになって休めないかもしれないので明日はお休みということにする。


それを伝えると、イリスは防具だけではなく自分の服にも手をかけた。



「じゃあ、今日は朝まででも大丈夫よね」


「そんなにか」


「そんなによ。私のために色々手を尽くしてくれてるんだから、私だって尽くさないと」


シュルッ……



そう言ってイリスは首の赤いスカーフを解き、紐パン姿で俺をベッドへ連れ込むと……妖艶な微笑みで誘ってくる。



「この身体、私が気を失っても好きなだけ使ってね♡」









翌朝、俺はイリスのベッドで目を覚ます。


隣にはベッドの主が横たわっており、本人のご希望通りに気を失ってからもその身体を愉しませてもらった。


休憩を挟みつつ彼女の身体を弄り、催してきたらへお邪魔する。


そんなことを繰り返すと、身体中を汚した精液を拭き取ってから俺も眠りについた。


ティッシュを使い、それをトイレで魔力に戻して精液のみを捨てたので、通常の事後処理に使用される布が汚れていないことを気にされてしまうかもしれない。


なのでその布は水で濡らしてきつく搾り、室内で張れる物干し用のロープに干しておくことで、事後処理に使ったが洗っておいたことにする。


ここでふと思い出す。


この街に来てから、風呂に入れていないんだよな。


一応、洗顔シート等で拭いたりはしているが、せめてシャワーぐらいは浴びたいところだ。


数年前に知り合ったドラゴンのルナミリアによると、浴槽でお湯に浸かるのはお偉方ぐらいだと言っていたような気がする。


ってことは、街に入浴施設は無いのか?


まぁ、水やお湯で濡らした布を使って身体を拭いたりはするようなので、衛生を全く考えていないわけではないだろうけど……昔のように入浴できる、人目に付かない場所はないかな?


そこで真っ先に思いついたのはダンジョンだが……浅い区域はそこそこ人目があって見つかる可能性は普通にあるし、奥には大手のカンパニーが居るだろうからそちらも人目はそれなりにありそうだ。


まぁ、その辺りは実際に確かめてみないとわからないのだが。


フレデリカやウェンディさんの家にならあるのかもしれないが、流石に知り合って間もない女性に風呂を貸してくれとは言えないし、やはり別の何処かを探すしか無いか。


そんな事を考え、今回も洗顔シートやボディシートで身体を拭いてから魔力に戻す。


拭かれた汚れは床に落ちるだろうが、土足の部屋だしそこまで問題はないはずだ。


掃除も毎日されているらしいしな。


そう言えば、特に何も言わず"牛角亭"に泊まらなかったが……何か言われるだろうか?


部屋は1日ごとにしか取ってなかったので金銭的な問題にはならないはずだし、宿替え自体はごく普通のことのはず。


ただ、それは相応の理由があるものだし、その理由が宿側にあると思われると少々困る。


可能であれば今後も"牛角亭"を使うつもりではあるからな。


リンナには親切にしてもらったし……うん、今日は"牛角亭"に部屋を取ることにするか。




暫くして、仰向けで寝ていたイリスが目を覚ます。



「……する?」



俺が胸を触っていたことからか、軽く股を開きながらそう聞いてきた彼女。



「いや。朝にしては結構遅いし、そろそろ荷車を調達とかセリアに予約を入れたりしないと」


「そう。私は行かなくていいいの?荷車は"モーズ"として使うんだし、買うときも鎧姿よね?声を知られないために話せないんじゃないの?」


「ああ、それは今後"コージ"として会わなければ喋ってもいいんだが……いつどこで声を聞かれるかわからないか。まぁ、交渉が必要なら筆談でもいけるだろ」



実際は自前で用意するので交渉なんてしないしな。


その点で言うとセリアにも声を知られるべきではなかったが、触媒の受け渡しは持ち運びに不自然ではない量で行い、必要であれば追加で行うことになるので1度や2度では済まないだろう。


彼女はダンジョンで経験を積むことによる治癒能力の向上も狙っているし、協力関係でさえあれば口止めできる……はずだよな?


俺がそう返すとイリスは納得し、下腹部に手を当てながら目を閉じる。



「流石にもう暫く休んでおくわ。でも挿れたかったら……良いからね?」


「……鍵は掛けておくからな」



少しになりかけたが、流石に身体への負担がきついだろうから止めておく。




俺は"モーズ"の姿になるとイリスの部屋を出て、ドアの隙間から魔力の糸を侵入させて鍵をかけた。


これで侵入しようとする者が現れたとしても大丈夫だろう。


……あれ、これって俺が侵入者側にもなれるってことになるな。


まぁ、よっぽどの理由がない限りは不法侵入などする気はないが。


そんな俺が宿を出ようと食堂へ降りたところ、前回"コージ"として会った女性従業員がそこに居た。



「……」


「……」



立ちはだかるように俺の前にいる彼女は、訝しむような目で見てきている。


前回と同じような雰囲気だな。


だが、"コージ"として会ったことがある以上は"モーズ"として声を出すわけにはいかない。


なので避けて出入り口へ向かおうとすると……



スッ


スッ



同じ方向に身体をずらし、俺の正面に位置取る彼女。


やはり偶然ではなく、意図的に俺の前進を阻んでいるようだ。


どうしたものかと考えていると、彼女はやっと口を開いた。



「昨日、イリスさんがお連れになった方ですよね?」


「……(コクリ)」


「彼女の部屋でお泊りに?」


「……(コクリ)」



イリスの部屋に入るところを誰かが見ている可能性があり、嘘はつかないほうがいいかと正直に頷いて答えたのだが……それに対し、その女性従業員は俺を睨んで問い詰める。



「まさかベッドまで……いえ、もっと率直に聞きましょう。同意不同意関係なく、彼女を犯しましたか?」



単刀直入に聞いてきたな、しかしどう答えたものか。


イエスかノーしかないわけだが、そもそも答えなければならない義務はない。


その上、何故彼女がここまでイリスのプライベートな事情を気にかけているのかがわかっていない。


見た限り彼女は女性だと思われるが、イリスに恋愛感情でも抱いているのだろうか?


別に同意の上であればそういう関係が存在すること自体は構わないのだが、少なくとも現在同意を得ているのは俺である。


なので彼女に口出しされる謂れはなく、俺は堂々と頷いた。



「……(コクリ)」


「スゥー…………………………ハァァァァ」



その答えに、彼女は長~い深呼吸をしてみせた。


服の上からでもわかる程度には盛り上がっていた胸が、息を吸うと共に身体を反ったことで強調される。


そして息を吐く際には身体を前に倒し、それによって重力に引かれた胸が再度強調されていた。


昨夜は存分に発散したと言えるぐらいではあるのだが……こんな世界だし何があるかわからないので、常に万全の体制を整えるために"紛い物"でよく効く栄養ドリンクを作成して飲んでいる。


それもあって、そういう所にはいつでもよく目が行ってしまうのだ。


そんな彼女は俺の視線を感じたのか、数秒何かを考えると……



ガシッ


「ちょっとこちらへ」



そう言って俺の腕を掴み、先ほど降りてきた階段を上がらされた。


で、朝にしては遅い時間だったからかすでに客が去った後らしい部屋に連れ込まれると、彼女は俺を壁に持たれ掛けさせ、足の間でしゃがんでズボンの前を開け始める。


全身鎧姿と言っても股間部分は動きやすさを考慮して普通の服であり、用を足すために開けやすくもなっているので、そこに手を伸ばしている彼女の手は順調にを進めていた。


も魔鎧で覆い感覚を遮断しておけば、傷つけようとされても大丈夫なので様子を見ていると……



スッ


「う…………っ!」


レロンッ



ズボンをずらして現れたに少し躊躇するも、彼女は舌でそれを舐め出した。


噛まれる可能性もあったので警戒していたが、とりあえず危険はなさそうなので感覚だけ遮断を解除すると……少し前まで愉しんでいた感覚が蘇る。



レロレロレロォッ……


「あむ」


パクッ



滑りを良くするためか一通り舐め回すと、即座に口で咥えてしゃぶり始めた。



ジュッ、ジュルッ、ジュボボッ!


「ンッ、ンッ、ンッ……」



そんな音を発しつつ、不満そうな顔で激しく頭を振る彼女。


その様子に、自分が相手をするからイリスには手を出すなとでも言うのか?と予想しながら股間の刺激を暫く味わっていると……



「っ!」


「んぐっ!?」



特殊な状況だからか、俺は我慢することなく若干早めに達した。



「ゴクッ、ゴクッ……んくっ」



状況的に服を汚したくないだろうと口の中で発射させてもらったがその推察は合っていたようで、彼女はそのまま出された物を飲み下し、中に残っているぶんを吸い出すと外側を舐めてキレイにする。



チュウゥ、ジュジュッ……チュポッ、レロォ……



「ふぅ。ど、どうでした?あれだけ出たんだから……っ!」



やはり不満そうながらも俺を満足させるのが目的だったからか、それが完遂されたことで安堵しかけた彼女だが……俺のはまだ硬く、ひくつきながらもまだまだ元気そうにそびえ立っていた。



「………………仕方ないわよね」



彼女はそう言うとスカートの中に手を突っ込み、その直後にが足元に落ちる。


何をするつもりかは明白なので、筆談で色々と確認するために紙とペンを作成してササッと文字を書き連ねる。



サラサラサラ……


「ん?」



いきなり何かを書き始めた俺に怪訝な顔をしていた彼女だったが、俺が書いた文章を見せると納得して頷きその内容に答えた。



「(俺は喋ることが出来ない。どういうつもりでこんなことを?)」


「ああ、そうなんですね。理由は単純で、今後は私がお相手するので、イリスさんにはもう手を出さないでいただきたいのですが」



やはりそうくるか。


だが、イリスとの行為は俺が協力することと秘密の厳守を前提としたものであり、それを一切断るとなるとその契約が揺らぐことになる。


結果として、いつか協力関係を切られるのではないかと彼女は不安な日々を過ごすことになるだろう。


これはよっぽどの理由がないと受け入れられない話だな。



「(そこまでする理由は?)」


「私がそうしたいからです」


「(それが何故かというところが重要なのだが)」


「そう言われましても……」


「(俺はイリスが望むからしているわけで、断る理由がない以上は難しいぞ)」


「それは私のが良かったとか、何とでも……」


「(ダメだな。この関係は俺が協力することで成立している。俺が彼女を拒めば、彼女は俺からの協力を断たれる可能性を恐れて、より激しく求めてくるかもしれないぞ?)」



俺がそう返すと、彼女はズイッと距離を詰め、自分の腹に俺のを接触させながら問い詰めてくる。



「気になっているのはそこです。彼女がその身を差し出すほど成し遂げたいことは何なのでしょうか?」



ふむ、この女性従業員はイリスの目的を知っているわけじゃないのか。


それを知っていて邪魔をするつもりなのか?と予想し、ここまで様子見をしていたのだが……


まさか、本当に私情でイリスから手を引かせようとしているのか?


とりあえず、俺は彼女の質問にこう返す。



「(教える義務と義理はない。)」


「……」


スッ、ヌチュッ


「っ!?」



彼女は俺の返答を読むとサッとスカートを捲り上げ、即座に手で俺のを自分の股間へ挟み込む。



クイッ、クイッ……

ヌチュッ、ジュチュッ……にゅぷっ



に擦り付けて軽く準備をし、彼女はを咥え込んだ。


壁に持たれ掛けていたままだったので、多少あった身長差は問題にならなかったらしい。


に何かを仕掛けているわけでもなさそうだったので……再び紙に質問を書き、つま先立ちで腰を振る彼女にそれを見せる。



「(どういうつもりだ?)」


ニュチュッ、ヌチュッ、ヌチュッ……


「ンッ、ンッ、ンッ……」



彼女は俺の質問をチラッと読むも、それを無視して腰の動きを激しくする。


襲われたと騒ぎ立てる可能性もあったが……声を抑えて行為を続けている以上、そういうつもりはないようだ。


感覚を遮断して相手のスタミナ切れを待つか?


でもこのぶんだと……機会があるごとに絡まれそうなんだよな。


よし、方向で進めるか。


そう決めた俺は魔鎧で覆ったを、変形させたり振動させたりし始めた。



「ンッ!?ングッ、ムグッ!」



俺の動きに声を上げかけた彼女だったが、その口を閉じて何とか我慢しているようだ。


彼女としてはこの行動を秘密裏に進めたいらしい。


ならばと俺は攻勢を強め、程なくして女性従業員は大きく身体を大きく後ろに反らす。



「~~~~~~~~~~~~っ!」



身体を跳ねさせる彼女に俺も我慢していたものを開放し、暫くしてそのから退去する。



「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」



床に崩れ落ちた彼女が荒い呼吸を整えようとしている間に、俺は自分が出した物をハンドタオルで拭いて仕舞っておく。


後で処分しておかないとな。


少しして、話せる状態になった彼女が何を言ったかと言うと……



「ハァ、ハァ……どう、でした?中には出さなかったけど、手拭いに出してたみたいだから良かったんですよね?私なら、いつでもハメに来ていいんですよ?」



どうやら、自分の身体を味見させてイリスに手を出すことを止めさせようとしたようだ。


もしかして……イリスの家の関係者だったりするのか?


だが、それにしてはイリスの態度が他人行儀だったし、そうであれば彼女の目的も知っているだろう。


大きい家なら覚えていない人も居るのかもしれないが……それならそれで、最初からそう言えばいいはずだ。



「(お前は何者で、何の理由があってイリスの身を案じてるんだ?)」


「別に……いいじゃありませんか、好きに犯せるんですから。ほら」


クィッ、ニチュ……



やはり俺の質問には答えず片膝を立てた形で股間に手をやり、指でを開いて見せるので……俺は紙に書いて彼女のお誘いに返答する。



「(断る。)」


「……」



その紙を見てがっかりする彼女を放って服を直し、俺は今度こそ"銀蘭亭"を出たのだった。

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