記憶の欠片 contrast 2

「んーーー、足のサイズ、、、。」

私はボウリングシューズを借りる途中に自分のサイズぴったりが良いのか、少しきつめにするべきなのか迷っていた。

「どしたー?」

光瑠が声をかけてきて、事情を話す。

「あー最初は迷うかもな。普通に足のサイズでいいよ、痛くなるし。」

「そうなんだ。」

23.5センチのシューズを借りた。


「何ゲームくらいしたい??」

彼が聞いてきた。

「1ゲームでいいよ。やっても2回じゃない?」

「いやー。1ゲームって意外とあっという間よ?俺が友達とやる時なんて7ゲームはするからさ。」

「え!そんなにするの!?」

ボールを投げるだけの単純なゲーム。そんなに熱中するものなのか。

とりあえず延長もできるしいっか、と彼が言うので早速席に荷物を置き、ボールを取りに行った。

ボール置き場には様々な大きさのボールが分別されて置かれている。彼は13ポンドのボールを手に取っていた。ポンドという単位が全く身に染みない。

とりあえず、10ポンドのボールを手に取ってみた。

「え!ちょっ!」

重いのはわかっているつもりだったが、ボールを支えきれずその場でボールが落ちてしまった。

ガン!という音がボーリング場に響いたが、自分たちのゲームに夢中で私の失態に気づいた人は誰1人としていなかった。

ひとまず悪目立ちしなかったこと、ボールが割れなかったことに安堵し、自分に合うボールを探す。

「んーーー。」

私が迷っている間、光瑠は席でスマホを見ていた。

結局私が選んだのは7ポンド。正直これでもかなり限界に近かった。

「お待たせー。」

私が席に戻りボールをレーンに置くと、

「え!?それ、7ポンド!!?俺が小学生の頃使ってたボールじゃん!」

と彼に言われた。

「えー!それは光瑠が力持ちなだけでしょー!」

そう言うが、隣でプレイしていた中学生くらいの子も8ポンドのボールを普通に投げている。

「あれーー、なんでだろう。。」

「まあとりあえず始めるか!」

彼はそんなに気にしていなかった。

そして私のより一回り大きいボールを抱えてシュート前のポジションへ移動する。

一投目は思いっきり回転をかけて投げていて、私も「おお!」と声をあげたが、6ピンほどしか倒れなかった。

二投目は普通にストレートだった。結局合計は8ピン。あんなにボーリング慣れしてそうなのにそんなに難しいのか。

渋い顔で唸りながら光瑠はベンチに座る。

「よし、美玖投げてみー!」

彼はまたすぐに気持ちを切り替えて言った。

私はボールを掲げてポジションへ移動する。

そして、見様見真似のフォームでストレートを投げようとした。


バタン!!!

「痛っ!!」


私はボールに体重を持って行かれて思いっきりその場に倒れた。

「おーい!大丈夫かよー!」

光瑠は心配してこちらに駆け寄ってくる。

私は色々なところを痛めてしまった。


そして、薄々感じてはいたが、わかったことがある。


これは私に力が無いんじゃなくて、体に、力が入らない。

食事も取れていない。すごく良く眠れているわけでも無い。

私はもう普通に生活ができない体になってしまったのだろうか。


結局この日のボーリングは、全て彼に投げてもらった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る