記憶の欠片 contrast 1

光瑠と会うのは午後なことが多い。

基本的に光瑠と会う時にはワンナイトするから、朝から一緒にいる必要はないかなっていう利害が一致する。

今日は先日の夜約束した光瑠と会う日で、空は少し曇っていた。

結局あの日から体調はそこまで回復しておらず、食事も全く取れていない。

少し貧血気味ではあるが、少し動いた方が食欲も湧くし元気になるでしょ、と自分に言い聞かせる。

「よしっ。」

私はベッドから立って慣れないストレッチをするが、鳴りそうで鳴らない関節に少しストレスを感じた。


母は今日用事があったようで、『食べるなら適当にパンでも焼きなさい。 母』と置き手紙が残されていた。

流石にずっと食べてないので食欲は無いにしても何か食べようと体が勝手に動いた。

私は食パンを一枚トースターに入れる。

「んーーーー。」

食パンが焼き上がっていく様を見るとだんだん食べれない気がしてきた。じわじわ頭も重くなってきて、息を大きく吸って吐く。

朝というのもあって息が妙な臭いを漂わせた。

「ううう。」

朝から最悪のルーティーン。私は光瑠に断りの連絡を入れようか本気で迷った。

まあただ家にいても何も変わらないしなー、と思いながら焼き上がったパンをそのまま口で挟む。

全くおいしさは感じなかったが、何も考えずに飲み込むと意外と食べられた。


午後の3時くらい、目的地に着いた。光瑠はまだ来ていない。

ちなみに約束の時間を決めても光瑠は余裕で遅刻する。軽く謝ってすぐに切り替える。そういう人間だ。

逆にこっちも気を遣わなくて良いしそれはそれで楽なんだけど、結婚するなら優馬かなーって感じ。

逆に優馬には気づかないうちにかなり気を遣っているから、この前もかなり乱れたのかもしれない。今日は意外と大丈夫そうだ。


そこから5分ほど待っていると、遠くから小走りしてくる光瑠の姿が見えた。

「美玖、ごめん!」

光瑠は息を荒げて言った。

「おーいー!彼女に待たせるって何事なの!?」

私は光瑠にそういうところは求めてないので、おふざけ半分で言った。

そして彼の頭を軽く叩く。手には髪の毛のワックスが少し残った。

「うおあー髪の毛!」

そういうと彼はすぐに髪を整え出した。

ごめん。心の中では思ってるけど私は絶対口には出さない。

「よっしゃーどーする?」

流石、光瑠は切り替えが早い。

「夜のことしか考えてなかったからねー。ちょっと時間潰さないとかな?」

私がそう提案し周りを見渡すと、大きなボーリングのピンに目が止まった。

彼の方に目を移すと、彼もそちらを向いている。

「ボーリング、ちょっとやってみたいかも。」

「お、やったことない??」

光瑠は、やっちゃう?のテンションで言ってくる。

「ちょっと、行ってみない?」

「おっけー!」


私たちは大きなボーリングのピンを目指して歩き出した。

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