記憶の欠片 continuation of that day
「何か隠してることない?」
彼が真剣な言葉と眼差しが私の胸を刺す。
複数の鎖に強く縛られているような気持だった。
ただら今の私はさっきのような死にたくなるほどの不安に取り憑かれているわけではなく、かなり落ち着いて来ていた。
息をゆっくり吐いて気持ちを整える。
大丈夫、疑われてるんじゃない。大丈夫。
「私、今日実は結構体調悪かったかも、、。」
彼は軽く目を瞑った。
そして心配そうな顔で目を開ける。
「ほら!やっぱり無理してる!」
彼は私の両腕を軽く掴んで言い聞かせるように言った。
「言わなきゃいけないことはしっかり言う!」
私は控えめな笑顔で可愛く返事をするり
彼はにっこり笑って、「それじゃ」っと軽く手を振ると、駅の奥へと歩いて行った。
はぁー。大変な1日だった。酸素が足りないような、貧血だろうか。
今日は彼も違う人なんじゃないかと思うくらい積極的で、でも私の理想像とは程遠い。
彼には彼のイメージが染み付いてる。変わったところで、感じるのは違和感しかない。
彼が自覚あって積極的になっているのかはわからないが、どっちにせよ私の求めているものとは違う。
言わなきゃいけないことはしっかり言う、か。
私のモットーのはずなのに。まさか指摘されるとは。
モットー、ね。自分に都合の悪いことは堂々と黙ってるのに。
ふふっ。ははは。
自嘲の笑みがふっと溢れた。
小学校の頃の通学路。懐かしい道を歩いてる途中だった。
右手には住宅街、左手には開けた田んぼが広がっている。
丁度、太陽が沈む準備をし始めた頃で、カラスの声が遠くから響いて来ていた。
『見て見てー!お母さん!カエル捕まえたよー!』
幼い頃この田んぼでよく遊んでいた。
生き物が好きで、特にトカゲ、カエルなどの爬虫類や両生類を捕まえては親に自慢していた。
『痛っ!!うう、お母さん痛いよー!」
ここの道で転んで泣いたなー。
あの頃は純粋だったなー。浮気なんて言葉知りもしなかった。考えもしなかった。こんな自分になるとは思わなかった。
あーーーあ。私は不適な笑みを浮かべる。
「私なんでこんなになっちゃったのかなー!!」
私は狂気に狂って笑う。
もう何にも縋れない。もう誰も、助けてくれない。どうにもならない。
もう笑うしかない。
はぁーー人生って腐ってるなーー!
私はこの日から、だんだん、不安定になって来ていた。
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