記憶の欠片 愛する気持ちと浮いた気持ち

私はその日から優馬と光瑠、どっちとも遊ぶようになった。

私には優馬を手放す覚悟がなかった。お守りのような、そんな感じだ。だからどちらか1人を選ぶことができなかったのだろう。

時間が経つにつれてその事実を伝える勇気は失われていき、代わりにその罪悪感、不安感が私を襲っていった。でもそこから得られる罪悪感は私の心を熱くする。これがクセになった。

最低なのはわかってる。

でも仕方ないのではないか。そうするしかなかったんだから。


優馬が家に来たことがあった。その時にはすでに光瑠と付き合っていたが、優馬と光瑠には全く共通点がなかったため案外両立することができた。

優馬はもちろん自分から手を出してくることはない。何か自分から提案することもしない。

ただ私がやりたいことを真っ当にする、ロボットのようだ。

これが光瑠だったらどうだろうと考えてしまう自分がいた。

仕方ないので私から助け舟を出して行為をしたが、それも積極性のないプレイであの日の夜のような楽しみは無かった。されるがままでなにもしてこない。「して」と言っても少しだけ。

私はだんだん彼の優しさに呆れてきて、刺激が欲しくなってきた。私は光瑠に浮気のことは話していないが、彼と話したくなり連絡してみた。

その時途端に腹痛に襲われ、「ちょっとお腹痛いからトイレ行ってくる」と一言交わしてトイレに駆け込んだ。

天罰だったのかもしれない。原因不明の腹痛だった。

トイレ戻ってくると彼はもっと優しくなっていた。

お腹が痛いのを心配して、ストレスをかけないようにと必死なのだろう。正直その優しさが一番ストレスなのだ。

その日は特に私の不満が顔に出やすい日だったためか、彼は焦っているような様子、どうしたら良いかわかっていないようだった。


彼の優しいところが好きだった。

いや好き。

でも今はその優しさがストレス。

でも彼に優しさがなくなったら彼には何が残るの?

じゃあ私はもう彼とは会わないほうが良いんじゃないの?

でも彼の優しいところにたくさん助けられてきた。だから別れたら誰が私を助けてくれるの?

光瑠?でも光瑠とは遊ぶだけで、相談とか乗る柄じゃない。

私には彼が必要。

彼の優しいところが大好き。


これがエンドレスで頭に流れてきた。

答えを見つけられない。

何も捨てられない。

何も失いたくない。


その欲望が私を苦しめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る