記憶の欠片 始まりと事の始まり 1
私は彼の部屋を出た。
ただ浮気していただけの時より罪悪感を感じた私はかなり疲れていた。
清潔感はあるがどこか古臭さを感じさせる廊下を、私は力無く一歩一歩あるく。
廊下の窓から見えた空には白い鳥が優雅に飛んでいた。
飛んでいる鳥と自分を比べてしまい私はより鬱な気持ちになる。
なぜ私はこんなことになったのだろう。
事の始まりはすでに、高校生の頃から始まっていた。
私は私立の高校で割と成績を取っていたので、指定校推薦で大学に入学することは容易であった。
そのため皆んなが苦労している受験というものを私は知らない。
友達に受験中話しかけるのは流石に気が引けたため、私はSNSに没頭した。そこで知り合った人たちと頻繁に連絡を取り、仲の良い友達は増えた。
何よりネッ友の良いところは実際の友達よりも腹を割って話せる事だと思う。
そういう人って陰キャっぽいとか言われたりするが、結構皆んなやっている。
私には10人ほどのネッ友がいたが、その中でも特に仲の良い男がいた。
いつも私が辛い時励ましてくれて、私の愚痴を一生聞いてくれた。普通に性格の良い人。
その性格の良さから私は彼と毎日のように連絡を取っていた。そのうちに私も彼も互いに惹かれ合っていった。
大学生になる前、友達の受験が終わりだす頃、私はネットの友達と関わることは少なくなっていった。彼との連絡頻度もどんどん減っていき、ついには連絡はほぼ途絶えた。
なので、大学に入学した時の私の頭には彼のことなど一つも入っていなかった。
私はコミュニケーションは普通に取れるタイプなので、話しかけられるくらいの友達みたいなのがたくさんいる。だからわざわざネットで友達を作る必要性を感じなくなった。
大学のガレージを歩いていた時、私は見つけた。
彼に似た学生がベンチに座っている。
私は立ち止まって2秒間凝視した。
私たちはInstagramを交換していたため、お互いの顔を知っている。
すぐにでも声をかけたかったが、本人じゃなかった時のことを危惧して彼に連絡した。
『まって!隣にめっちゃ優馬くんみたいな人いる!』
『え!俺の隣にもめっちゃ美玖みたいな子が今座ったよ!』
私たちは互いに目を見合わせた。
その瞬間に恋に堕ちた。
運命だと思った。
私は受験生の地雷を踏まないよう、基本的にネッ友の受験事情について話を投げかけなかったので彼が同じ大学を受けていたことなど知りもしなかった。
彼も同じ気持ちだったのだろう。
私たちはその日、付き合うことになった。
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