第86話 決着
リリィ達が魔王国魔王城で部屋を用意されている頃、地獄剣山ではララ達と邪神カシエラの眷属チェンの戦いに動きが見られた。
眷属のチェンは、ララ達の猛攻でほとんど虫の息だ。
ララは、もう手を抜いてフミヤと邪神カシエラの戦いを見ていた。
フミヤは邪神カシエラに対して、拳で相手していた。
邪神カシエラは、フミヤの拳や蹴りをほぼ無抵抗で笑顔で受けている。
それにより、邪神カシエラの腕や足は曲がってはいけない方向に曲がっているのだが、邪神カシエラが背伸びをするような仕草をすると、それが全て元に戻るのだ。
それを見てララは呟く。
「無茶苦茶なのです。
フミヤ様は、まだかかりそうなのです。
どうしたらいいのです?」
ララは、腕組みをして考える。
そして、ララは唐突にカグラに声を掛ける。
「カグラ!
チェンにトドメを刺して良いのです?
フミヤ様を待たないとダメなのです?
あの邪神カシエラは無茶苦茶なのです。
フミヤ様でもまだ少しかかるのです。」
「ララ様!もうトドメを刺すあるね。
春麗様のことは、私が抑えるあるね。」
これに、春麗が反応する。
「ちょっと待て!カグラ。
私を抑える?どういうことだ?」
その瞬間、カグラが春麗を一本背負い投げで投げ飛ばす。その流れで柔道でいう袈裟固めで春麗を抑え込む。
「ぐっ!なっ何をする!カっカグラ!血迷ったか!離せ!」
カグラは抑え込みながら答える。
「春麗様!無礼は承知の上あるね。
後でいっぱい怒られるあるね。
今は我慢して欲しいあるね。
チェンを殺したら、春麗様は凶暴になるあるね。記憶が無くなっているあるね。
チェンに精神操作されて邪に染まっていたあるね。今、優しい春麗様なのは、ベコベア様のおかげある。
チェンに精神操作されて民に暴力を振るって、民の感情を治める為に、国ごとベコベア様は【天邪鬼】を使ったある。
春麗様にも当然ある。
民がおかしくなったのは、ベコベア様のせいだと春麗様は思っているあるが、それは全て春麗様の為ある。
忘れているあるが、ベコベア様は貴方のお兄様ある!長くなったあるが、チェンを倒せば春麗様は、チェンの呪縛が解かれるある。
そこでベコベア様が天邪鬼をとかなければ、凶暴な春麗様になってしまうある。
だから、ベコベア様が来るまで抑え込むある!
早く!ララ様!やってくれある!」
春麗がもがきながら言う。
「なっ何を!わけわからんことを!」
ララが動く。
チェンの懐に入り、ラッシュをかける。
そして、叫ぶ。
「おりゃー!コリーさん!
やるのです!」
その瞬間、ララが横に跳ねる。
入れ替わりにコリー隊長がチェンの正面に立ち、剣を縦に一閃する。
チェンの頭から真っ二つにしたのだ。
チェンは、声もあげることなく最期を遂げた。
すると、春麗の目の光が変わる。
鋭い眼光になり、凄い力でもがき出す。
カグラが必死に抑える。
カグラの腕に春麗は、噛み付く。
肉を噛み切る勢いで噛みついているが、カグラは痛みに耐えながらも抑える力は緩めないのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
フミヤは、拳と蹴りで邪神カシエラを相手していたが腕を折っても、足を折っても邪神カシエラの伸びですぐに元通りになるだけだった。
しかしフミヤはこの時、色々試していた。
体、足、腕を狙った時は、邪神カシエラは防御もせず余裕で笑みを浮かべながらそれを受けるが、頭部を狙った時は、邪神カシエラは物理障壁を掛けていた。
よほど頭を狙われるのが嫌だということをフミヤは感じとる。
殴りながらフミヤは思考を巡らせる。
弱点は頭部なのは明らか。
その中でも頭上にある漆黒の光輪が怪しい。
伸びをすると光輪が一時輝くのに気がつく。
フミヤは賭けに出る。
【影使い】を発動した。
瞬時に自分の影に潜り込む。
潜り込む際、魔剣ブラックローズを抜きながら。
そして、邪神カシエラの影から一気に抜け出し斜め下から斜め上にブラックローズを一閃する。
勇者の技【ブレイブスラッシュ】だ。
邪神カシエラは、フミヤの予想外の動きで反応出来なかった。
魔剣ブラックローズの切っ先が邪神カシエラの漆黒の光輪に届いたのだ。
魔剣ブラックローズは地の精霊ノーム様によってオリハルコンでコーティングされた逸品だ。
漆黒の光輪を砕いたのだ。
光輪から激しい光が漏れ出す。それが邪神カシエラにリンクするかのように、その瞬間、邪神カシエラは絶叫しながら、全身から血を吹き出す。まるで滝のように。
そして、シワシワになって倒れる。
倒れた瞬間、発火する。
辺りの温度が上がるくらいの高熱の青い炎で焼かれていく。
炎が下火になったとき、邪神カシエラは炭になっていたのだ。
フミヤは、呟く。
(カシエラ。お前もチェンの被害者だ。
ダビエラとともに安らかに眠れ。)
そう言うとフミヤは、ララ達の元に行くのだった。
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