第82話 眷属との戦いの始まり

ここは、魔族の国の王城。

魔族にも種族がある。

魔人族、巨人族、鬼人族、竜人族、翼人族。

この魔族の国は、この五種族で成り立っている。

魔族の王ゾルドは魔人族。

一番数が多いのは五種族の中で魔人族である。

魔人族の多くは、魔族以外は認めない過激派。

人族、エルフ族、獣人族、小人族、ドワーフ族を滅ぼせという思考を持っている。

今、魔族が攻めていないのは、魔王ゾルドの存在が大きい。

魔王ゾルドが大聖女マリアンと恋に落ち、不可侵を打ちだしたのだ。


そこに穏健派の巨人族、鬼人族、竜人族、翼人族が魔王ゾルドを支持したのだ。


数の多い魔人族だが、魔王ゾルドと4種族と敵対は出来ないと判断し、魔人族の過激派リーダー、公爵のラークは泣く泣く魔王ゾルドの不可侵を認めざるえなかったのだ。


このラーク公爵は、魔王ゾルドの弟であった。


そのラーク公爵が王城にやってきていた。


「魔王ゾルド様は?」


ラーク公爵が目の前の竜人族の男に問いかける。


「これはこれはラーク様。

お久しぶりでございます。

魔王様に何か御用でしょうか?」


「用がなければ魔王ゾルド様、……いや、兄上に会いに来てはいけないのか!

で、何処におられる?

答えろ!宰相メビウス!」


宰相メビウスと呼ばれた竜人族の男が落ち着いた様子で答える。


「フフフッ。おかしなことをおっしゃる。

答えるはずがないではありませんか。

お忍びで出かけられておるのに、答えてしまえばお忍びにならないではありませんか。

フフフッ。」


ラーク公爵は、激怒し叫ぶ。


「私は王の弟だぞ!

何故貴様は、私に歯向かうのだ!」


宰相メビウスは、激怒しているラーク公爵に落ち着いて答える。


「………歯向かう?

歯向かっているのは、ラーク様では?

魔族の王、ゾルド様が決められたことが全て。

魔族は侵略はしない。

それに歯向かっているのは、貴方。

ラーク様ではございませんか。

魔人族の過激派思考を煽り続け、魔王ゾルド様に歯向かっているのは貴方です。

おわかりですか?

では、お帰りを。

近衛騎士団長。ラーク様がお帰りのようです。」


「まっ待て!メビウス!

一方的すぎるぞ!

キャビン!離せ!離すんだ!」


キャビンと呼ばれた鬼人族の近衛騎士団長が、ラーク公爵を掴んで連れて行こうとしていた。


宰相メビウスが言う。


「一方的?

魔王ゾルド様がいらしたら、有無も言わさずラーク様を城の外に吹き飛ばしておられますよ。

過激派の思考を変えてから城に訪れてくださいませ。では。またお越しくださいませ。」


キャビン近衛騎士団長に引きづられるように、ラーク公爵は連れて行かれてしまったのだった。


メビウス宰相はそれを確認し、呟く。


「魔王ゾルド様の思いが魔人族に伝わるのはいつになるのでしょうか……」


メビウス宰相は溜息をつくのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「フフフッハッハッハッ!

かかってこいだと?

笑わせる。

邪神カシエラとその眷属の私に向かって、ふざけた戯言を。

………良いでしょう。

相手をしてあげましょうか。

ふむふむ。

そちらの戦力は、小人一人、獣人一人、エルフが二人とハーフエルフ一人。春麗さんとその従者と、魔王ゾルドとリリアン。

9人ですか。丁度良いでしょう。

邪神カシエラ。

この九人は私にお任せを。

そのムカつくガキは、邪神カシエラにお任せしてよろしいでしょうか?」


邪神の眷属となったチェンは、そう邪神カシエラに告げた。

すると、邪神カシエラが答える。


「フフフッ。その男、力に満ち溢れていますね。

良いでしょう。私がお相手しましょう。

チェンよ。楽しい遊びにしましょう。」


「はい。楽しみましょう。」


そう言うとチェンは、体を変化させる。


どんどん巨大化し、8本首の大蛇の姿になる。

すると、それが分裂する。八人の蛇男になった。


フミヤはそれを見て言う。


(とうとう、人間を辞めたか。本当に化け物になりやがった。

春麗さん、カグラさん、ララさん、コリーさん、アル、各個撃破。

ウルと姫はパーティで一体撃破。

リリィは全体を後方支援。

魔王ゾルド!二体相手できるか?)


魔王ゾルドが口を開く。


「任せろ。これでも魔王だ。」


そう魔王ゾルドが言った時、邪神の眷属、八体のチェンは動き出したのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る