第81話 懐かしい光

ガッシャン!

ガラガラ!コロコロコロ。

ガッシャン!コロコロコロ。


魔王ゾルドは、槍で向かってくるスケルトンを薙ぎ払う。


しかし、数は一向に減らない。


逆に次々と地から溢れて出てくる為、減るどころか増えているのだ。


「くっ!キリがない!

【ブラックホール】」


魔王ゾルドは、スキルを発動した。


突然魔王ゾルドの前、空間に穴が開き、渦を巻きながらスケルトンを吸い込んでいく。


一瞬にして数百のスケルトンは、この【ブラックホール】で亜空間に追いやることが出来たが、このスキルを発動後、魔王ゾルドは片膝をついた。


「……このスキルは体力を持っていかれる……くっクソが!」


魔王ゾルドは槍を杖がわりに立ち上がる。


そして、すこしアンデットの群れから間合いを取れたことで、失われた体力を整えることに集中する。


アイテムボックスから瓶に入った液体を飲み干した。


そして、槍を握りしめる。


そして、アンデットの群れに向けて駆けていくのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


フミヤ達一行は、地獄剣山を進んでいた。


かなりの距離を歩いてきた。

【鷹の目】で確認しながら進んでいるフミヤは、目的地まで近いことは理解していた。

それを仲間達にも共有していたので、他の者達もそれを理解していたが、ここに来て異変を感じたのだ。


(………なんだ?この音。剣戟の音?)


「フミヤ様!誰かが戦ってるのでしょうか?」


「確かに剣戟の音がするのです!

それと、ガッシャンガッシャンという音もするのです!」


(………近いな。

皆!警戒態勢!

いつでも攻撃できる準備を!)


「「「「「「「了解!」」」」」」


警戒態勢のまま、フミヤ達は進む。


フミヤの前に大きな岩が現れた。


剣戟の音は、もうそこなのだ。


大きな岩から覗きこむ。


一人の男が、アンデットの群れに囲まれていた。

群れというか大群だ。

そのアンデットの大群の先には、チェンとカシエラの姿が見える。

チェンもカシエラも雰囲気が変わっている。

特にカシエラの存在感が凄い。

もしかして、邪神になったのかもしれないとフミヤは、そう思ったのだ。


アンデットに囲まれている男を見ると、白髪の長髪を後ろでくくり、肌は浅黒いが特徴的な赤い目。燃えるような赤い瞳をしていた。


(‥……魔族………。

もしかして……リリィの父親?魔王ゾルド?)

直感的にそう思ったフミヤ。

そのフミヤの呟きを聞いたリリィが反応する。


「えっ!………父様………」


すると、アンデットの奧に居るチェンが叫ぶ。


「ふふふッハッハ!魔王ゾルド!

まだ抵抗するか。楽になれば良いのに!

こちらは、もう目的を達したのだ。

だから、お前にもう用はない。

ああ!そうか。もうすぐここにお前の娘、リリアンが来るのだったな。

死ぬ前に会いたいなら、せいぜい生き延びてみろ!ふふふッハッハ!」


(……やっぱり。

リリィ!父親を助けるぞ!いいな!相手は、アンデット。あの数のアンデットを一瞬で消すことが出来るのはリリィしかいない。)


リリィは、一度目を瞑り。目を開ける。

そこにはもう迷いのないリリィが居た。


「はい!フミヤ様!やります!」


リリィは、胸の前で手を組み祈る。


そしてスキルを発動する。


「……鳴り響け!ホーリーベルよ。

そして聴き惚れよ。

"……聖なるホーリーベル!"」


リリィの体から光が抜け出す。


光がアンデットの大群を飲み込む。


まるで、溶けるように一瞬にしてアンデットの大群は消え去るのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


魔王ゾルドは、突然の光、その眩しさに思わず目を閉じた。


しかし、この暖かい光はとても懐かしい光だった。

唯一愛した女性。大聖女マリアンの光。


マリアンに抱かれたような気持ちで数秒を呆けた。


目の前にいたアンデットの大群はこの光によって溶けるように消滅した。


魔王ゾルドは後ろを振り返る。


すると、そこには一人の若い男の横に昔愛した女性によく似た若い女性。

その後ろには、その仲間と思われる者達が居たのだ。


「…………まっマリアン…‥ではなかった………そなたはリリアンだな。

大きくなったな……」


魔王ゾルドは、声を振るわせながらそう言ったのだ。


すると、フミヤに背中を押されてリリィが口を開く。


「…………とっ父様ですか?!

私の父様、魔王ゾルドですか?!」


「…………そうだ。

其方の父。魔王ゾルドだ。其方をこの外道チェンから守る為にここに来たのだ…」


リリィは、魔王ゾルドに駆け出す。


そして、魔王ゾルドはリリィを受け止める。


リリィは魔王ゾルドの胸で泣きじゃくる。


「……なっなぜぇ!何故母様を一人にしたのですか!……何故母様が苦しんでいる時に……会いに来てくださらなかったのですかぁ!………何故母様が亡くなった時に………私のもとに来てくれなかったのですかぁ!

……うっ!うっ!うっ!」


「………すっすまぬ。

なっなにを言っても言い訳になる。

………本当にすまぬ。」


魔王ゾルドは、リリィを抱きしめながら謝罪を繰り返す。


するとチェンが叫ぶ。


「穢れた血の感動の再会ですか!

ふふふッハッハ!

お前達は余裕ですね!

邪神カシエラと、その眷属の大蛇チェンの前で!死ね!」


チェンの腕から蛇が飛び出てくる。


その蛇は魔王ゾルドとリリィを喰らおうと大きな口で飛びかかってきたのだ。


しかし、その蛇の前に立ちはだかったのはフミヤだった。


魔剣ブラックローズで蛇の頭を叩き斬ったのだ。


そして、魔王ゾルドとリリィの前に割り込んだのは、フミヤだけではなかった。

フミヤに続くように、ララ、セシル姫、アル、ウル、コリー、春麗、そして春麗の護衛のカグラだった。


フミヤが口を開く。


(つくづくゲスな男だな!

ずっと会えずにいた親子の再会に水を差すんだからな!

邪神だか、その眷属だかしらないが!

邪魔はさせない!

俺達が相手だ!かかってこい!)


フミヤの声が響き渡るのだった。


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