第78話 もう一人の訪問客
地獄剣山の祠。
そこに居るのは、チェンと堕天使カシエラ。
そこに、一人の訪問者が居た。
チェンがニヤリと笑い言う。
「ほほう。あの魔人族。
ちゃんと貴方に伝えましたか。
ふふふっ。
ようこそ!地獄剣山の祠へ!
歓迎するよ。
魔王ゾルド。」
魔王ゾルドは無表情に辺りを見渡しながら口を開く。
「………人外の。堕天使なのか。
なんとも趣味の悪い。
人族は、落ちるとこまで落ちたようだ。
マリアンが見たら、嘆き悲しむだろう。
チェンよ。
お前の悪趣味を見に来たのではない。
マリアンが残した娘。
私とマリアンの娘を迎えにきたのだ。
まさか、その人外だと言う訳ではなかろう。
どこに居るのだ。
話が違うのではないか。」
「魔王ゾルドよ。
其方は感じぬか?
もう、近くまできている。
気配を感じられないと?
魔族も、どっぷりとぬるま湯に浸かっていると何もかも衰えると見える。
もうすぐ向こうからやってくる。
待っていれば良いのだよ。
父と娘。感動の再会を夢見てな。
その感動の再会を私が邪魔をするのか、しないのかは、其方次第という訳だ。
其方の血液を私に差し出せ!
すれば、邪魔しないでやろうぞ。」
魔王ゾルドは鼻で笑いながら深くため息をつく。
「ふん。………フぅ。
チェンよ。お前は、相変わらずゲスな男だ。
必ずなにかを盾にしないと会話すらできない。
本当に昔から臆病で醜い男だ。」
チェンは、顔を真っ赤にして怒りながら言う。
「ゾルド!主導権を握っているのは、私だ!
誰に臆病と言っている!
こちらには、堕天使カシエラがいるのだぞ!
魔王ゾルドと言え、堕天使カシエラのこの邪悪な圧に敵うと思っているのか!」
すると、チェンの言葉に呼応するかのように堕天使カシエラが魔王ゾルドに向け圧を飛ばす。
魔王ゾルドは、左斜め後ろに飛び退き堕天使カシエラの圧を避ける。
「………邪に染まりきった人外め。
どうすればここまで邪に染まるのだ。
やはり、チェンをあの時討っておくべきだった。
マリアンが止めなければあの時息の根を止めていたのに。」
すると、チェンがニヤリと笑いながら言う。
「ふふふッハッハ!
魔王ゾルドよ!お前も老いたのではないか?!
昔話を語ろうとするとはな。
私は、マリアンの前では、邪を抑えておったからな。
あの時の私の演技もなかなかの物だったろう?
" まっマリアン様!おっお助けくださいませ!
わっ私はまだ死にとうございません!
こっこれからも神にお仕えせねばならないのです!まっマリアン様!魔王ゾルド様を、おっお止めくださいませ、"
ふふふッハッハ!こんな感じだったか?」
魔王ゾルドは無表情で答える。
「ふん!なにが演技だ。
この大根役者が。
マリアンは、優しい女だった。
どんなゲスな愚かなお前でも慈悲をみせる女だった。
そのせいで、数年後死ぬ羽目になってもな。
…………私の前で貴様がマリアンを語るな!」
「ふふふッハッハ!
まだ魔王ゾルドは、マリアンの幻影に囚われているようですな。
ふふふッハッハ!
娘のリリアンは、マリアンの面影を色濃く継いでいる。
能力も容姿も。
魔王ゾルド。会いたいでしょう?
再会を邪魔されたくないでしょう?
ならば、貴方の血液を早くよこしなさい。
すれば、貴方とリリアンの再会は邪魔しないでおきましょう。
リリアンが現れたらそく転移魔法で連れ帰ればいい。
こんな良い話がありますか?」
魔王ゾルドは、チェンを睨みつけ言う。
「私はずっと、使い魔を通してリリアンを見守っていた。
貴様ら教会は、散々穢れた血とリリアンを迫害し続けていた。
マリアン亡き後、私はリリアンを魔族の国に連れ帰ろうと考えた。しかしリリアンは一人の男と出会った。
その男は精霊のような男だ。
リリアンは、今その男と幸せに世界を旅しているのを私は知っている。
私は二人を引き裂くようなことはせぬ。
そんなのは、私とマリアンだけで十分だ。
貴様がリリアンとその男に、チョッカイを掛けないなら私の血液くらいくれてやる!
どうなのだ!」
「ふふふッハッハ!
チョッカイですか。
私は、もうチョッカイ掛ける気はサラサラないのですがね。
向こうが、私に興味津々でね。
今も私を討とうと、この地獄剣山まで追ってきているのですよ。
私も、黙って討たれる訳にはいきませんのでねえ。
だから勘違いしないで貰いたいですね。
チョッカイかけてるのは、私ではないということを。
さあ、血液をよこしなさい。
よこさないなら、直接いただくまでですがね。」
チェンが剣を抜く。
堕天使カシエラが邪の圧を強める。
二人が魔王ゾルドに襲いかかる。
魔王ゾルドも又、アイテムボックスから槍を取り出したのだった。
娘の幸せの為に障害となりうる者を討つ為に槍を振るうのだった。
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