第71話 突入
日が過ぎ奴隷オークションの当日の夜を迎えた。
奴隷オークション。言わば闇オークションなので日中に堂々と行われることは無かった。
日時が変わる時間帯で行われるのだ。
オークション会場は5剣神ブルスリの屋敷でおこなわれる。屋敷の裏庭にはテントが建てられ、その日に出される商品、所謂奴隷達をそこで管理しているのである。
俺達の作戦は、俺単独で表玄関から攻め入る。客の到着を出迎える為に、ブルスリも表玄関にいるということだ。
とにかく俺が玄関で暴れブルスリを引きつける。そして、各持ち場に配置された奴隷商人達を表玄関に一気に引き付けるのが俺の仕事だ。
奴隷達の居るテント側を手薄にして、奴隷達を出来る限り無事に救出する御膳立てをすること。
そして、ブルスリを討つこと。
その他は、俺が暴れている間に奴隷の保護につとめる。
かなりの数の奴隷達を誘導して、春麗の私邸に保護するのだ。
ブルスリとの戦いがどれだけの時間がかかるのかわからないが、奴隷達の保護が終わると仲間も駆けつけて奴隷商人達の残党たちの討伐に討ってでてくるという流れ。
奴隷商の元締めが春麗の部下ということで、裏側の入口は警備を甘くしてくれているとのことだった。
俺は、皆より先に宿を出る。
夜中ということもあり、街は人通りは全くといってないが、俺は"隠密"を発動して警戒しながら街を駆ける。
この隠密。初めて使う。
とても不思議な感覚だった。辺りは真っ暗だが、俺の目には辺りの様子が鮮明に映し出されていた。音も敏感なほど耳に届いてくる。
俺の駆ける音は、隠密の効果なのか強く地面を蹴りつけようが全く響かないのだ。
暗闇の街を駆けるが、この隠密によってまるで昼間に駆けているような錯覚させ思わさせる。
大通りの突き当たりに夜中にも関わらず煌々と明かりを灯している大きな屋敷が見えてきた。
ここが5剣神ブルスリの屋敷なのだろう。
この屋敷を視界に捉えた時点で、ゆっくりと駆けるスピードを緩める。
そして一度建物と建物の隙間に入り、様子を伺う。
馬車が入っていく。客なのだろう。
続々と連なって入っていく。
馬車の扉が開き客らしき男が降りてくるのを確認する。
その客に近づく一人の男。
均整のとれた体。頭は剃り上げている一人の男に注目した。
奴がブルスリだ。春麗からの情報と合致している。
なによりも、自分は強者だという立ち振る舞いがそれを物語っていた。
確か、ブルスリは三頭の虎王の像を崇める男。【特級スキル】は【剣拳魔】だったか。
一度の攻撃で剣と拳、魔法の三つが飛んでくるとか言っていたな。
俺は、建物の影から"闇属性魔法極LV1メテオレイン"を屋敷の門目掛けて発動する。
いわゆる破壊活動だ。
混乱している間に、中に入り込むことにしたのだ。
夜の闇の空に複数の隕石が現れ、隕石が火を纏う。
それにより地が明るく照らされる。
その明るさで、ブルスリも何が起こっているのかを把握したようだ。
「敵襲あるね!メテオ!いや複数?!
メテオレイン!?闇属性魔法極!
高位の魔法スキル持ちあるね!
お客様を門に近づけるな!」
隕石が次々と落下する。
" ドッカ〜ンドッカ〜ンドッカ〜ン!
バラバラバラ"
轟音が響き渡り、屋敷の門や塀を粉々にして行く。
俺は、その間に中に入り込むのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(救出班サイド)
リリィ達はフミヤが先行してすぐに、屋敷の裏側へと回り込んだ。
「春麗さん、フミヤ様は何かしら派手な音で私達に知らせてくれるはずです。」
「ふむ。そうだろうな。
しかし、こちらは、すぐには動かぬぞ。
手薄になった時点で、送り込んでいる部下が手引きしてくれる。それを待つんだ。
救出組はリリィさん、セシル姫、ウルさん、コリーさんで。
奴隷商人との戦闘は、私とララさん、アルさんで!手引きしてくれた瞬間に、私とララさん、アルさんは突っ込む!」
「「「「「「はい!」」」」」」
そう言っている時、闇で真っ暗だった空が赤く染まっていく。
リリィは見上げる。
隕石の雨だ。赤く炎を纏いながら隕石が落ちてくるのを目撃する。
「フミヤ様のメテオレインです!」
春麗は、リリィのその声で空を見上げる。
凄い数の隕石が落ちてくるのを見て一瞬呆けてしまう。
「すっ凄い‥…こっこれがふっフミヤ殿の力なのか………!?」
ララが口を開く。
「春麗さん!フミヤ様の力はこんなもんではないのですよ!
こんなのごく一部なのです!
フミヤ様は凄いのです!」
" ドッカ〜ンドッカ〜ンドッカ〜ン!
バラバラバラ"
轟音が響き渡る。
その後、屋敷内が騒然となっているのが裏の外にいてもわかるくらい、悲鳴や叫び声が聞こえてきた。
屋敷の敷地内は、喧騒とした雰囲気に包まれ大混乱していることがここまで伝わってきていた。
すると裏口が開けられ、一人の男が手招きしていた。
春麗が言う。
「ララさん!アルさん!行くぞ!」
駆け出す三人。
その後を追うように時間差でリリィ達も駆ける。
「チュンリ姫様!中は今大混乱中です!
テント前の警備も弱まっていますが、まだ何人かは残っているあるね!
気を付けてくださいある!」
「ご苦労だった!お前は、もう城に戻って良い!ご苦労だった!」
「はい!お気をつけて!」
春麗、ララ、アルは裏口から突入した。
春麗は腰につけていた円月刀を両手に装備し、アルはアルの剣を抜く。
アルの剣は、獣人国を出る前に地の精霊ノームによって、元の素材を変化させアダマンタイトからオリハルコンに変えてもらっていた。
ララは、"魔素纏い""剛力"を発動して、
すでに何人かの男を殴り飛ばしていた。
「ララさん!早いですわ!私が抜く前にもう殴り飛ばしてる!」
「アル!まだまだ沢山いるです!
心配無用なのです!」
アルに襲いかかる男。
アルはアルの剣で斬りさく。
「ふふふっ。さらにキレ味があがりましたわ。最高の剣ですわ。」
「アルだけじゃないのです!
ララもこのメリケンサックをフミヤ様に貰ったですよ!
ノーム様にオリハルコンにしてもらったです!」
ララの両手にはメリケンサックが握り締められていた。
これは、ララがフミヤにウルとアルだけズルいと駄々をこねて武器屋でプレゼントして貰っていたのだ。
それをノーム様にオリハルコンに素材変化してもらった品なのだ。
素手でも破壊的なララのパンチの威力がこのメリケンサックで、恐ろしいまでの威力に上がったのは、言うまでもない。
殴られた男の頭が、" べっちゃっ!"と音を立てて陥没しているのだ。
当然死んでいる。
ララは、奴隷商人に生きる価値なしと思っているのだ。
そんなアルとララだったが二人は思わず目を止めた。
それは、春麗の戦う姿を見たからだ。
春麗の戦う様は、まるで舞を舞っているかのように優雅にクルクルと回転しながら、両手に持った円月刀二つで奴隷商人の首を斬っていた。
時には、かがんで足払いをして倒したところを円月刀で首を斬る。
クルクル回転したかと思えば知らぬ間に円月刀を投げていて、敵の首を斬り落としていた。
華麗な舞と華麗な円月刀さばきに二人は目を奪われたのだ。
すると、春麗が二人に声をかける。
「どうしたのです?!
最初だけですか?!」
アルとララは正気に戻り言う。
「今からぶっとばすのです!」
「同じくぶった斬りますわ!」
春麗は二人に微笑んで言う。
「奴隷商人達を駆逐しましょう!」
ブルスリの屋敷の裏庭が、真っ赤に染まっていくのだった。
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