第70話 邪神像の前で
頭を下げる春麗に俺は声を掛ける。
(貴方が共闘してくれるなら、俺達も心強い。なんせ、サンダ人民国のことが全くわからんからな。
こちらこそよろしく頼む。
早速なんだがチェンの姿を見ていないか?
確実にこの国の方向に飛んだんだ。)
春麗は、頭を上げるとクールな表情を崩して笑顔を弾けさす。
最初とかなり印象が変わった。
そして春麗が言う。
「チェンは、見ていないが奴が籠る場所ならあそこしかない。地獄剣山の邪神像がある所に祠がある。必ずそこにいるだろう。」
(そうか。でも、まず奴隷の解放だな。
この国は奴隷商が数多くあるのか?)
「奴隷商人と呼ばれる者達は、かなりの数がいるが全ては一つの場所で取り仕切っている。
私の部下を一人潜入させている。
元締めをやっているのが私の部下だ。」
(えっ?春麗も奴隷商と繋がりがあるのか?!)
ララ、コリーが表情が固くなる。
「いや、勘違いしないで欲しい。
あくまで、5剣神のブルスリとガオシュンを監視するために、部下を数年前に送り込んだ。
そいつは、仕事ができる奴でな。
元締めまで昇格しているが、信用のできる奴だ。ブルスリとガオシュンの目を盗んで私を内部に入れてくれていた。
私は奴隷というものが許せなくてな。
特に幼い子が奴隷落ちするのが見るに堪えないので、子供達中心にオークションにかけられる前に買い取って、保護していたのだ。
獣人の子供達は、ほとんど保護している。」
コリーが口を開く。
「子供達を!
大人はどうなっているのですか?」
「大人は、女ばかりだが………オークションにかけられて……
本当に最低な国だ!申し訳ない!
私が保護している子供達は、いつでも獣人国に連れて行ってくれていい。
子供達もそれを望んでいるだろう。」
「獣王様に、お金を出して貰って買い戻してもらわないと。」
すると、春麗が言う。
「買い戻す?
そんなことしなくて良い。
我が国の奴隷商が、攫った子達だ。
国としての責任がある。
私が払った金も国の金だ。
迷惑をかけているのは、我が国サンダ人民国だ。連れて行ってくれたらいい。
我が私邸で保護している。
コリー殿と申したか?
後で子供達に会ってやってくれ。」
すると、ララが言う。
「小人族はどうなっているのです?!
獣人国にいた小人族が奴隷落ちしているはずなのです!
どうなのです。」
「ああ。小人族は纏めてオークションを掛けるとかで、まだ奴隷商の牢屋に入れられているだろう。
そのオークションが行われるのが明後日だということだ。
オークション当日が、奴隷解放するなら一番適していると思う。
会場の管理などで人手がそちらに取られるからな。」
(人手?別に全てをやっつけるのだから、そんなもん気にしなくていいだろう?)
「それで、小人族を人質に取られて、小人族が命を落とす可能性もあるぞ。
あいつらは、人族以外は殺すことに躊躇いはないのだ。
いくらフミヤ殿が強くても、必ず全員を救えるのか?
救出にリスクを払って、良い結果になるとは思えない。
そこで5剣神のブルスリが出てきたら、フミヤ殿はブルスリと戦いながら、小人族を他の奴隷商人から守ることができるのか?
我らも共に戦うが、奴隷商人は数百人いる。
必ず全員を無事に救出できるという確証はないぞ。
オークション当日ならその数百人がバラける。
そのほうが無事に救出する可能性があがると思わないか。」
確かにそうだ。リスクを払って最悪な結果になるほど後味の悪いものはない。
そこに人の命が掛かっているならなおさらだ。
俺は、春麗の話に納得するのだった。
その後、明後日の打ち合わせを入念に行い、気がついたときには、もう明け方になっていたのだ。
春麗も一緒に数時間仮眠をとり、更に話を続けたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは、サンダ人民国の地獄剣山と言われる難所。
そしてその奥深くに祠が建っていた。
その祠には邪神と言われる像が五体祀られている。
そこに居たのは、あの聖教国で教皇として君臨していた5剣神の長チェンと堕天使として覚醒したカシエラだった。
堕天使カシエラは所詮チェンの言いなりにすぎない。
チェンが命じれば力を発揮するが、それ以外は無表情でその場に立っているだけであった。
今も、カシエラは五体の邪神像の前で無表情に立っていた。
チェンは、もう一人の5剣神のブルスリと話をしていた。
「チェン様、久しぶりに帰ってきたと思ったらこんな堕天使を作っていたあるね。
それで、本当にガオシュンは死んだあるね?
ガオシュンを倒す奴、なかなか強敵あるね。
信じられないあるね。」
チェンは、酒をグイッと煽りながら言う。
「ガオシュンさんは、間違いなく死んでますね。あの男が私の前に再び現れたのがその証拠です。
あの男が強いのは勇者を倒した時点でわかっていましたが、まさかあの短時間でガオシュンさんがやられるとは思ってもいませんでしたね。
つくづく、イラつく男です。
かなりの量のスキルを所持しているようです。
間違いなく、私の障害となりうる男です。
まあ、このサンダ人民国に追ってくるのも時間の問題でしょうね。」
「その割には、チェン様落ち着いているあるね。
何か打ち手があるということあるね。」
チェンはニヤァと笑いながら、堕天使カシエラの手を取り抱き寄せる。
そして、無表情の堕天使カシエラの唇を貪る。
手は、カシエラの胸と下半身に伸びていく。
カシエラは、されるがまま。
吐息は漏らすが声は漏らさない。
そして、手を動かしながらチェンは、ブルスリに言う。
「フッ。この堕天使カシエラが全てを解決してくれる。
こやつが、全ての鍵よ。ふっハッハッハ。
それで、春麗王女の動きはどうなのです?
奴もこの国で邪魔な存在ですよ。」
「春麗に何もできないあるね。
奴の仲間はほぼ居ないあるね。
国で孤立した存在あるね。
心配なら殺してしまえばいいあるね。」
「フッ。
何を言っているのですか。
あれだけの上物の女。
殺すなんて勿体ない。
心を縛って、好きなだけ楽しんでやらないと。
その後ですよ。殺すのは。
私もやっとこの国に帰ってくることが出来ました。
フッフッフッ。
やりたいことが、いっぱいありますね。
フッフッフッ。」
そう言ってカシエラの上に覆いかぶさるチェン。
「チェン様堕天使と、まぐわうのか?
相変わらず狂っているあるね。」
「フッ。これも、心を縛る上で大切な作業なのだよ。
それにな。実験でもあるのだよ。
堕天使が子を孕めば生まれてくるのは、なんであろうか?
フッフッフッ。
まあ、その前に此奴を邪神にして、我が邪神とならねばならんのだがな。」
「邪神になるには、大聖女と魔王の血がいるあるね。
それは、失敗して堕天使止まりとなったと言っていたあるね。
どうするあるね。」
「フフフッ。一応大聖女と魔王の血を少し入れて道筋はつけた。
カシエラは、これでも元聖女なのです。
後は魔王の血を入れてやれば完成ですよ。
魔王には、マリアンとお前の子供を手に入れたと魔人族に話を流しておいた。
"お前の血液を寄越せと。すれば娘はお前の元に送ってやろう"と。
まあ、その前にあの穢れた血があの男と共にやってくるのが先かもしれませんがね。
フッフッフッ。どちらが手に入るか楽しみですね。ふんふんふん。」
まるで人形のようにされるがままのカシエラ。
心が死んでいるのは、せめてもの救いなのかもしれない。
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