第7章 サンダ人民国へ

第68話 嘘まみれの国

アキノー商会、会頭アキノー氏に同行してサンダ人民国に乗り込むことになった俺達。


今アキノー氏が操車する荷馬車に乗って獣人国とサンダ人民国との国境近くまでやってきた。


俺は、皆に認識阻害をかけた。今回の旅には、獣人国の近衛騎士隊長のコリーさんも同行している。

黒魔女ダビエラの仇を討つという名目で。


「アルとウルが普通の耳なのです!

コリーさんもケモ耳が普通の耳になっているですよ!」


「これではバレようがないね。僕、思うんだけどララさんにまで認識阻害かける必要あった?フミヤ様?!

ララさんは、人族の子供でいけたと思うんだよね。」


(まあ。念の為だな。)


「ウル!誰が子供なのです?!

後でウルお仕置きなのですよ!」


「えっ!だってそうじゃん!認識阻害かけても何も変わってないじゃん。」


皆が笑う。


緊張感がないのはいつものこと。


そうしている間に国境に辿り着く。


国境では、衛兵がアキノー氏に尋問していた。


「貴様は何者で、サンダ人民国に何様だ。」


「はい。私はルシア帝国で商会を営んでいる会頭のアキノーと申します。

サンダ人民国5剣神の一人、チュンリ姫様に頼まれていた品を届けにやってまいりました。」


「チュンリ姫様?

誰だ?それは。そんな姫がいたか?我が国に。

まあ良い、では品を私が預かりその姫に渡せば良いだろう。

わざわざお前が入国する必要はない。

確実に届けてやろう。」


兵は自分が届けてやると言い出した。

すると、アキノー氏は笑い出し言う。


「ハハハッ。おかしなことをおっしゃる。

まだ、代金も頂いていない品を何故、身も知らずの貴方様にお渡ししないといけないのですか。

それに、貴方はチュンリ姫様のことを知らないと言った。

チュンリ姫様のことを知らない貴方がどうやって届けるのですか。

もう、よろしいですよ。

商人は品を直接、お客様にお届けするのが仕事。通過してよろしゅうございますね。」


すると、衛兵は言う。


「後ろは荷だけではないようだな。

後ろに乗っている者達はどういう者達だ?

商人とかいいながら、奴隷商人ではあるまいな。奴隷商は通さんぞ。サンダ人民国の奴隷商の商いの邪魔になるからな。」


アキノー氏が答える。

「後ろに乗っているのは、私の商会の者達です。

商談場所が多い為に同行させているだけですよ。」


衛兵はチラッと俺達を見てアキノー氏に言う。


「まあ、良いか。

王都は、突き当たりを右に折れろ。

すぐに王都につくだろうよ。」


「はいはい。わかりました。

それでは。」


アキノー氏が馬車を走らせる。


突き当たりを衛兵が言った右ではなく左に折れていく。


(アキノーさん!右って言っていなかった?)


アキノー氏は笑いながら答える。


「ハハハッ。フミヤ様!

お忘れですかな?

サンダ人民国の者達の言うことは嘘ばかりということを。

あそこで右に折れていると、ドンドン道が狭くなり、行き止まりになるんですよ。

それで、道も細いから戻ることも出来ない。

で、そうこうしているうちに賊がやって来て、積荷を全てやられてしまうのですよ。

まあ、一度は誰もが引っかかる最初の嘘ですな。私も若い頃にやられましたよ。」


(それは、衛兵と賊が繋がっているということ?)


「いえ、衛兵は純粋に嘘を言っただけ。

賊がそれを利用しているだけです。

繋がりはありません。」


俺達は、アキノー氏の話に頭を傾げたのだった。

何の為に嘘をつくのか?

賊と繋がっているというなら、嘘もそういうことかと納得いくのだが、繋がりはないという。ただの愉快犯的な物なのか。

俺達には理解不能なことであったのだ。


王都の門が見えてきた。

王都に入れば少しの間アキノー氏と別行動になるということは、アキノー氏と打ち合わせ済みだ。


王都の門を潜って少しすると俺達は荷馬車から降りるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


サンダ人民国の王都を見て回る。

沢山の出店が出ていた。


俺達は、お腹を満たす為に食べ歩きをすることにした。


【甘いよ!とっても甘い!これ以上の甘い饅頭はないよ!はいはい!そこのお嬢ちゃん買っていってよ!】


ララに声を掛ける店主。


「甘いですか?アンコの饅頭のようですね。

おいくらなのです?」


【銅貨5枚だよ!兎に角甘いから!買っていきな!】


「じゃあ、一つ貰うのです。」

「私も貰います〜」

「甘いのは僕は要らない」

「私は貰いますわ。コリーさんはどうします?」

「私は結構です。リリィさんは?」

「う〜ん。甘いのかぁ。太るかなぁ。

やめときます。」


結局ララさん、セシル姫、アルが饅頭を購入した。


そして、ガブリ。


3人が3人ともが、変な表情をする。


「甘くないです!

辛いのです!うっ嘘つきなのです!」


「確かに〜辛いです〜でも〜まずくはないですわ〜」


「甘いと思って食べましたのに辛いからリアクションが変になりましたわ。」


早速三人がサンダ人民国の洗礼を受けた。


【はいはい!買ってってよ!

ただのボアの肉だけど、一生懸命焼き上げたよ!騙されたと思って買っていってよ!

そこのお兄さん!イケメンのお兄さん!】


俺はリリィに言う。

(なあ、あれも嘘かな?

嘘だとしたら、あのイケメンのお兄さんってどういうことなんだ!?

ブサ男のお兄さんってことか?!)


「ムッ!フミヤ様はイケメンですわ!

これは、ちょっと抗議ですわ!」


リリィが肉串の店主に声を掛ける。


「フミヤ様は、イケメンですわ!」


【何怒ってんだよ。イケメンのお兄さんって言っただろ?!なんもまちがっちゃいないよ!】


「そっそうですわね。すみません。」


【お姉さん!絡んだんだから、買ってってくれるよな。2本で銀貨3枚だ!】


「銅貨じゃなくて、銀貨3枚ですか?

たっ高くないですか?」


【何言ってんだ?!

こちとら正直商売だぜ!買うのか買わねえのかどっちなんだい!】


(あっ!悪い悪い!美味そうだから二本貰うよ!銀貨3枚な!)


【おう!イケメンのお兄さん!

わかってるな!はいよ!二本な!】


俺は二本受け取る。


リリィは納得いってない表情で言う。

「フミヤ様。ボアの肉串で銀貨3枚は高いですよ。」


(いや、リリィ。ボアの肉ならな。

でも見てみろよ。この溢れ出る肉汁。

そして、見てみ。あそこの焼いていない串。

あのサシの入り方。どうみてもボアではないぞ。ボアはボアでもグレートビッグボアだよ。

グレートビッグボアの肉串なら銀貨3枚は安いんじゃないか?)


「たっ確かに。グレートビッグボアの肉のようですね。食べてみましょう!」


俺とリリィは肉串にかぶりつく。


「うわぁ!柔らかい!そして、溢れ出る肉汁!グレートビッグボアです!

美味しい!」


(これは、美味いな!)


俺とリリィの声で皆も肉串を買いに行った。


この店での嘘はボアと言った肉がグレートビッグボアだということ。

…………もしかして、イケメンっていうのも嘘????

俺は複雑な思いをしながら肉を食べたのだった。



色んな嘘に翻弄されながら出店巡りを終えた俺達。

宿を探すことにした。

一応、アキノー氏から宿のオススメは聞いているので、宿屋が立ち並ぶ場所に足を踏み入れた。


ここも嘘で溢れていた。

高級宿を謳う宿が、ボロボロのハリボテ宿。

安い、広いを売りにした宿がなかなかの高額で部屋が狭いとか。


そしてアキノー氏のオススメの宿も嘘で溢れていた。


高額でボロ宿とか言いながら、ピカピカの真新しい高級宿と言えるポテンシャルの宿で、銀貨一枚という安さ。

ベッドもとても大きく、布団はフカフカ。

本当にどうなってんだ?

この国は。


そんな嘘に振り回されながら、アキノー氏を待つ俺達。


そして、アキノー氏が一人の女性を連れて宿にやって来たのだった。


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応援ありがとうございます!

昨日は諸事情で更新出来ませんでした。

誠に申し訳ございません!

第7章も頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!


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