第67話 アキノー商会へ

ザラ第二王子の謀反は獣王ガネーシャがあっという間に鎮圧した。

ザラ第二王子は国家反逆罪と民をサンダ人民国に売った罪でおそらく死刑となる見込み。


獣王ガネーシャと王太子は身内を裁くことに対して、深い悲しみを抱えたが、これを見逃すと民への示しがつかないということで、苦渋の判断をした。


俺達は、明日行われる黒魔女ダビエラの国葬を待って、明後日旅立つことにした。

コリー近衛騎士隊長が同行するからだ。


今日は、サンダ人民国の情報を集めようとルシア帝国に空間転移で皆で飛んでいた。

何故、ルシア帝国なのかというと獣人国に入る前に会ったアキノー商会の会頭アキノー氏に会う為だった。

アキノー氏は、世界を飛び回っており当然サンダ人民国の有力な情報も持っているだろうという推測からやってきたのだ。

それと、オリハルコン鉱石の売買という目的もある。

アキノー氏に失われた大地に行くならと、お願いされていたからな。


ルシア帝国にやってきた俺達は、帝国の雰囲気がとても明るくなったと感じた。


以前来た時は、忙しなくただ漠然と歩いていた街の人達が、今は笑顔で活気に満ち溢れていた。


何よりビックリしたのが、あちらこちらで天使の羽を模したお菓子や、アクセサリーが売られていることだった。

以前来た時は無かったのだが。


店主に聞くと、先の戦争で天使様が現れたと。戦死した兵を天使様が生き返らしたという話が加熱して、今ルシア帝国では天使ブームが起きているらしい。


これには、リリィが焦りに焦っていた。

思わずその天使、ここにいますよと言いたくなったのはリリィには、内緒。


街を警備している兵達には、俺達の存在はバレていて、警備中にも関わらず、立ち止まり俺達に敬礼をしてくれる始末。


なんとも、気恥ずかしい思いをしたのだった。


アキノー商会は、皇都の大通りの角地にあった。

恐らく一等地なのだろうな。

一際大きな建物だった。

店舗の入り口には、私兵らしき者が二人立っていた。


俺は、その私兵に声を掛けてみる。


(俺達は、ガーランド王国のセシル王女殿下一行だ。

会頭のアキノー氏と獣人国で知り合って、アキノー氏が買取りたいと言っていた品を持って来ている。

会頭のアキノー氏と面会がしたい。

取り次いでくれるか?)


私兵は、ガーランド王国セシル王女殿下一行と聞いて姿勢を正す。

そして、答える。


「……なにかセシル王女殿下とわかる物をお持ちか?

我々も簡単に取り次ぐ訳にいかない。

理解を頼む。」


(そりゃそうだな。

セシル王女殿下、頼みます。)


俺は、セシル姫に振る。


セシルが、ガーランド王国の紋章を出して私兵に確認をさせる。


私兵は更に姿勢を正し、答える。


「たっ確かに!確認させていただきました!

では、中へどうぞお入りください!」


私兵一人が先導して店に入る。

そして、一人の男に俺達を紹介して、私兵は又持ち場に帰っていく。


紹介された男はまだ30代くらいの若い男だった。


「セシル王女殿下におきましては、お初にお目にかかります。

私は、このアキノー商会の番頭をしております。レオ・アキノーと申します。

会頭のジン・アキノーからお話は聞いております。

取引をさせていただけるとか?

今日はそのご用件でよろしいのでしょうか?」


セシル姫が言う。


「ここからは〜私の所属している冒険者パーティのリーダーに対応してもらいますわ〜

フミヤ様〜お願いします〜」


(フミヤだ!よろしく頼む。

取引もそうなんだが、貴方の父上に少し話を聞きたくてやってきたんだ。

いらっしゃるか?)


レオは笑顔で答える。


「父は、帝城に商品を納めに行っておりまして、昼頃には帰ると思います。」


(そうなのか。

じゃあ、待つ間に買い取って貰いたい物があるから、貴方に見て貰おうかな。

確か、貴方の父上が自分が居ない時は、貴方にと言っていたからな。)


レオが目を輝かせて言う。


「父から話を聞いております!

もっもしかして!貴重な鉱石でしょうか!?

そっそれでは、ここではなんですので、応接室のほうへご案内いたします。

どうぞこちらへ!」


レオに案内されて応接室に行くのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



リリィにオリハルコン鉱石を一つ取り出して貰い、レオに見せる。


レオは、興奮した様子でルーペを取り出し熱心にオリハルコン鉱石を鑑定していた。


(これをそれと合わせて6個は卸せる。

どうだ?)


「こっこれは素晴らしい!もう少しお時間よろしいでしょうか!少々お待ちを!」


レオはオリハルコンの魅力に取り憑かれたようにルーペを覗いている。


すると、リリィが俺に言う。

「フミヤ様?6個ですか?

後二つ残りますけど。」


(ああ。あとの二つはもう渡すところが決まってるんだ。

ここで売る6個は、皆んな各々の取り分だ。)


ララが口を開く。

「私達もお金貰えるです?!

これは、考えていなかったのです!」


(なんでだよ!皆で失われた大地に行ったじゃないか。皆、権利を主張できる!

そりゃ、普段の魔物を売り捌いたお金とかはパーティの運営資金にするけどさ。

オリハルコン鉱石は莫大なお金になるんだ。

個人ごとの資産にするべきだ。)


ララ、アル、ウルは莫大なお金、どうしようなどと話はじめた。


リリィが更に聞いてくる。


「後二つは何処に渡すのです?」


(一つはガーランド王国に返そうかと。

ほら、ガーランド王国の宝だったオリハルコンを貰っただろ。

でも、あれからなんやかんや言ってガーランド王国には世話になってるからな。

もう一つは、ドラちゃんにあげようかと。

ドラちゃんは、戦争に駆けつけてくれた恩があるだろ。)


「流石!フミヤ様です。そうすべきです!

私も同意します!」


(皆んなそれで良いかな?)


「「「「はい!」」」」


そのような話をしていると、レオがやっとルーペを机に置いた。


「…フゥッ〜!

いやぁ!素晴らしい素晴らしいです!

全く混じりっ気のないオリハルコン鉱石です!

これが6個ですか〜。

私どもの金で足りる物ではございませんよ〜。

しかし、う〜ん惜しい惜しいなぁ。

全て買取りたい!買取りたいのは山々なんですが、これ一つでもいくらの値をつけてよいものか………前例がありませんから。」


(そうだろうな。ガーランド王国では、国宝とされていたものな。

俺達は、出せる金で良いぞ。

そのかわり、貴方の父上からしっかり情報を頂くけどな。いくらなら出せる?6個で。)


レオは必死に考える。


「………非常に厚かましい話ですが…

我がアキノー商会が今出せる金額は、白金貨20枚です。」


(おっ!意外と出せるんだな。

白金貨6枚と言うのかと思ったが。

それなら、白金貨18枚で良いや。

それで良いよな皆んな。)


皆が笑顔で頷く。


するとレオが言う。


「えっ!なんでですか?白金貨20枚出しますよ!」


(いや、18枚で良い。そのほうが俺達が分けやすいから。一人白金貨3枚だろ。

そのかわり、レオさん。

オリハルコンの価値を下げないようにしてくれ。色んな使い道があるだろうけど、しっかりと値付けして売ってくれよ。)


「それは、勿論!

私どもは商人です!恐らく武器や防具に加工したら、10倍の利益は得るでしょう!

安く仕入れたから安く売るでは商いは成り立ちません!

その品質で値付けしないと!

オリハルコンの相場は下げませんから、ご安心ください!」


俺達とレオの取引は成立したのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



そうこうしているうちに、会頭のアキノー氏が帰ってきた。


「失われた大地に辿り着かれたのですな!

オリハルコン鉱石をお安く取引させて頂いたとか。

ありがとうございます!」


(オリハルコンの相場だけは下げないように頼む。)


「それは、もう!私どもは商人です。

価格は上げても下げはしませんとも!

それで息子から聞きましたが、私からは情報を希望されておるとか。

その情報込みでお安くしてくれたと。

そのご期待に添えるかどうか不安ではありますがいかような情報でしょうか?」


(俺達はサンダ人民国に行きたい。そして、5剣神の長チェンを討つ。

なんでもいい。サンダ人民国の情報が欲しいんだ。)


アキノー氏は成程といった表情で話を始めた。


「サンダ人民国は人族優先主義国です。

皆さんは、ほぼ亜人ですが、そこはフミヤ様のことです。何かの手段があって人族に模することができるのでしょうな。

しかし、人族に模することができても簡単にはサンダ人民国には入れませんぞ。

まず検問でアウトでしょう。

それくらい入るのに困難な国なのです。」


(では、どうすればいい?)


アキノー氏は、うんうんと頷きながら答える。


「手っ取り早いのが通行証を持っている者に同行することですな。」


(その通行証を持ってる者に心当たりはないのか?)


「ハハハッ!フミヤ様!お忘れですか?

私は世界を股にかけ商品を売り捌いているのですぞ!

当然、サンダ人民国も商売させて頂いておりますよ。

私が同行しましょう!

そして、信用できる人物をご紹介します。

きっと、お力になってくれると思いますよ。

それか、共闘されるかと思います。

サンダ人民国でも5本の指に入る実力者です。」


(アキノーさんも人が悪いな!

自分が持ってんのかよ。

それと、紹介してくれる人ってサンダ人民国でも5本の指に入る実力者って。

まるで5剣神のようだな。)


「まさしく!5剣神のお一人ですよ。

ご心配はいりません。

このお方は、他の5剣神とは違います。

この方は高貴なお方です。

サンダ人民国の姫様なのですから。

私のお客様として長年お付き合いをさせて頂いておりますが、姫様はサンダ人民国の人族優先主義を憂いていらっしゃるのです。

この方はサンダ人民国唯一の正義あるお方だと私は考えております。

サンダ人民国に囚われた亜人達を助けようと色々動かれているのですが、一人ではなかなか進まないようで……

いつ会っても、光を灯す者、真の勇者を待ち望んでいらっしゃるのです。

私は、それが皆様だと思っておるのですよ。」


(……何故そのような身分の方が5剣神に?)


「人族優先主義を潰すには、力と考えられたようですな。

実際、5剣神の中で2番目に位置づけられていたはず。

兎に角、姫様は信用しても大丈夫なお方だと私が断言いたします。

姫様以外は信用したらダメですよ。

ここからは、サンダ人民国の国民性を説明します。

"サンダ人民国の者が言うことは、信用するな"です。

まず嘘を言っていると考えて間違いないです。

本当に見事なまでの嘘を使いこなすのです。

目的の場所を聞いても、まともに教えてくれません。北に行けばあると言われ行けば、実は南だったとか。

初めて行った時は、もう翻弄されましたよ。

だから、生真面目な方は必ず痛い目に合います。そこは、お気をつけてください。」


すると、ララが口を開く。


「大丈夫なのです!ララは、嘘つきとはお喋りもしないのです!」


「ハハハッ!ララ様は、そう言いますが、このサンダ人民国の国民のタチが悪いのは、やたら愛想が良いのですよ。

すぐに話しかけてくるのです。

そして、巧みな話術で嘘を吐く。

気を付けてくださいませ。」


ララは、唖然としていた。


「あっ!でも、サンダ人民国の姫様は誠実なお方ですよ。

嘘などつかれたことはありませんから。

姫様の言うことは真実だと頭に入れておいてください。」


なんかとんでもない国だな。

俺達は、その後アキノー氏と2日後に同行させて貰う手筈となったのだった。

この時は、まだサンダ人民国の闇を知る由もなかったのであった。



     ー第6章 完ー


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

応援ありがとうございます。

これで第6章獣人国編は終わりです。

明日からは、第7章サンダ人民国編に突入です。

第7章は若干長くなると思います。

途中て章を区切るかもしれませんが。

是非お付き合いのほど宜しくお願いします!

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