第65話 5剣神チュンリ
獣人国とサンダ人民国の国境。
サンダ人民国側の町に獣人国第二王子のザラは居た。
「なっなに?!
姫二人の拉致に失敗?!
何してんだ!
あれだけ、獣人国に入れるように手を回してやっていただろうが!」
ザラの怒鳴り声が響く。
相手は、サンダ人民国の奴隷商の元締めだった。
奴隷商の元締めが言う。
「まあまあ!落ち着くあるね!
今、5剣神の一人チュンリ様が来てるあるね。
チュンリ様から、ザラ王子に話があるね。
落ち着いてくれあるね。
そのような、態度チュンリ様に見せたらダメあるね。
斬り捨てられるあるね。
良いあるね!落ち着くあるね。
……では、チュンリ様をお連れするあるね。」
奴隷商の元締めが席を外す。
「チッ!本当に使えない奴らだ!」
悪態をつくザラ。
周りにいるサンダ人民国の奴隷商人達は、ザラを冷たい表情で見る。
冷たい表情というか、見下しているのだ。
サンダ人民国は、人族優先主義が全国民に根付いている。
人族以外は下等種族と見下しているのだ。
しかし、ザラはそのようなことには気付いてもいない。
獣人の習性なのか、あまり細かいことには拘らないのだ。
少しすると、奴隷商の元締めが戻ってくる。
その後ろに女が居た。
体のラインが出た、深いスリットが入った、所謂青のチャイナドレスを着た女だ。
髪は黒髪。後ろで一つに束ねていた。
ツンとした感じの無表情なイメージ。
クールビューティーという例えが合う女だった。
女が部屋に入るなり、口を開く。
「其方が獣人国のザラ王子か。
其方は何がしたいのだ?!
正直いって訳がわからん。
サンダ人民国に何を求めている?!
こんな奴隷商人と付き合って、自国の民を売り飛ばすような真似。
私は、其方が獣人だからとか抜きにして、純粋に軽蔑している。
私は差別主義者ではない。
其方が、今の私の問いに対して納得のいく答えを返してくれるなら後ろ盾になろう。
どうなのだ?」
すると、ザラは顔が真っ赤になるくらい激昂していう。
「軽蔑だと!
貴様ら、サンダ人民国が奴隷を求めるから我民を売ってやっているのだ!
感謝されるべきであって、軽蔑とはどういうことだ!
何がしたいか!決まっておろう!
獣人国を我が手に!
それだけだ!
その為には、我が民も我の為に糧となるのだ!
サンダ人民国は、そんな私に兵を貸し出せば良いのだ!」
「…………愚かな。
お前には、自国に味方はおらぬのか。
他国に自国の民を売ってまで、縋る。
そのような者が、サンダ人民国が力を貸して獣人国の現体制を打破出来たとて、国を統治できるとは思えぬ。
無駄な時間だった。
帰らせてもらう。」
5剣神の一人チュンリは、そう言い放って席を立つ。
すると、ザラが目の前にあった酒瓶をチュンリめがけて投げつける。
その瞬間、チュンリは回転しながら足でその酒瓶を蹴り返す。
その酒瓶がザラ王子の頭に当たり砕ける。
「うがぁっ!」
「つくづく馬鹿な奴だ。
悔しければ己の力だけで獣人国の現体制を打破してみろ!
サンダ人民国は手を貸さん!私が絶対にそれを許さぬ!
お前は、自分の欲だけだ。
大義のない者には興味はない!
それと、奴隷商人どもよ。
貴様らも下衆な商売ばかりしていると、身を滅ぼすぞ!
必ずそれを許さん奴らがお前達を倒しにくるぞ!
ゆめゆめ忘れずにな!」
殺気を放ちながら言い放ち、部屋を出ていくチュンリ。
チュンリは呟く。
「光を灯す者………。真の勇者様。
いつ現れるのか……。」
呟きとともに、姿をスッと消すのだった。
部屋では、頭から血を流すザラが激昂していた。
「くっクソが!やってやるよ!
我に味方がおらぬはずがなかろう!
王太子の体制など叩き潰してやる!」
遠吠えのように叫ぶザラであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺達は、王城で歓待の宴に参加していた。
しかし、豪快だ。
料理も豪快。デカい骨つきの肉がドンとテーブルに盛られている。
果物もテーブルに山程盛られていた。
酒も樽ごと沢山用意されていた。
獣王ガネーシャは、片手に骨つきの特大肉。もう片手に酒樽を担いで、酒を煽っている。
「ガハハハハ!
久しぶりだぞ!こんな美味いと感じる酒は!
ハハハハハ!
やはり健康なのは素晴らしいことだな!
ガハハハハ!」
リリィが獣王ガネーシャに呆れたように言う。
「獣王様。健康って、獣王様は病では無かったのですよ。言うなら、怪我です。
最初にちゃんと治療していれば、苦しむ必要もなかったんですよ!」
「おお!大聖女!そうだったそうだった!
まあ、細かいことを申すな!
さあ、飲め!さあ、食べろ!」
リリィに酒と肉を進める獣王。
すると、ウルが獣王に声をかける。
「獣王様。このお酒、僕初めて飲むよ。
なんてお酒なの?
凄くフルーティだけど、結構度数は強そう!
王都の酒場では無かったよ!」
「おお!エルフの戦士のアル!いける口か!
これは、ジンという酒で王家でしか飲めぬ!
王家に酒蔵があるからな!」
「アルはあっち!僕はウル!
凄く美味しいよ!
柑橘のような味わいと喉にガツンとくる強さ!最高だよ!
僕、世界の色んなお酒を飲むのが夢なんだ!」
「ウルか!もう覚えたぞ!
美味いだろ!最高だろ!
そんな小さなコップで飲んでも美味くないだろう!樽ごといけ!
あっ!その細さじゃ樽を持ち上げれんか!
ガハハハハ!」
ウルは、"剛力"を発動して樽を持ち上げ樽から酒を煽る。
「獣王様!見かけに騙されたらダメだよ!
僕も樽くらい持ち上げられるんだから!」
「ほう!驚いた!
ウル!気に入った!
飲み明かすぞ!ガハハハハハ!」
ウルは、酒飲みオッサンに大人気だな。
俺は、コリーさんと王太子と静かに話をしながら、食事していた。
コリーが言う。
「フミヤ殿。サンダ人民国にカシエラとチェンを追うとのことですが、フミヤ殿のパーティは亜人がほとんど。
入国も難しいと思うのですが。」
(ああ。人族優先主義国だもんな。
でもそれは、大丈夫だ。
俺はスキルで認識阻害をもってる。
皆に掛けて、人族だと認識させることができる。)
「そうなのですね!
では、私も一緒に連れて行っては貰えないでしょうか?
あっ姉の仇を、仇を討ちたいのです!」
(……姉妹仲が良かったんだな。)
「いえ、亡くなる前は仲が悪かったです。
姉は、いつからか道徳的に道を外れていましたから。昔は優しい魔法使いだったのに。」
(そうか。性格が変わったのも、全ては5剣神のチェンの洗脳のせいだ。
だから、ダビエラもコリーとの事悔いを残しただろうな。)
「…うっ。そうなのですね。
……尚更!連れて行ってください!」
(……いいけど、獣人国はいいのか?
近衛騎士隊長なんだろう?)
すると、王太子が口を開く。
「フミヤ殿!連れて行ってやってください。
ダビエラは、獣人国の英雄。
獣人国は、ダビエラに何かと世話になった。
コリーよ!行ってこい!しかし、無理はするな!相討ちなどと考えるな。
生きて帰ってくるのだ!
姫達が悲しむのでな。良いな!」
「はっ!ありがとうございます!」
コリーの同行が決まったのだった。
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