第60話 暗いよ〜
「うわぁ!本当に底が見えない!
ふっフミヤ様!
本当に大地がありませんよ!」
俺達はあの後森を突き進み、失われた大地に辿り着いていた。
突然森の中に現れた大きな穴。
穴は直径100メートルはあるだろうか。
底は見えない。真っ暗。
かなりの深さがあるようだ。
穴の壁面には、グリフォン達が巣を作っていた。
これでは、普通の冒険者は立ち入れないだろうな。
セシルが魔眼でグリフォン達をチェックしている。
「フミヤ様〜。いましたよ〜。あの向こうの崖の上です。
なんか、メスと暴れてますよ。」
姫、それは暴れているのではなく、単なる交尾ですよ。
そう思いながら、姫に言う。
(姫、雄に威嚇射撃!)
姫は、銀翼の弓を引きしぼる。
そして矢を放った。
グリフォン雄の翼をかすめて、地に刺さる。
すると、グリフォン雄がこちらをロックオン!
一瞬にして、こちらに飛びかかってくる。
メスに比べ一回り大きい。体長10メートル超。
なかなかの迫力だ!
俺は、リリィに人形を頼みグリフォンに向けて憑依する。
グリフォンの魔石に収まる俺。
視界がグリフォンの物に変わる。
仲間達が見える。
リリィが人形をアイテムボックスに入れている。
ララさんが、俺(グリフォン雄)に向けて体全身を弾ませるように手を振っている。
俺は皆の元に飛び、地に降り立つ。
「フミヤ様!グリフォンのスキルなんなのです!凄い気になるのです!」
グリフォンで喋れるのかな?
喋ってみる。
(あっああ!喋れるな。
スキルは、特級スキルだな。
【鷹の目】だな。
鷲の頭の癖にスキルが鷹の目って笑かすよな。)
リリィが口を開く。
「それって、どんな効果なんですか?」
(まあ、言えばフィールドを空から視点で見ることが出来るみたいな感じかな。
街を探すのが楽になるな。
他にも使い道があるのかもな。)
「フミヤ様。その口ぶりからすると、イマイチといった感じですか?」
(う〜ん。まあそうかもな。
まだ使い道も掴んでないから、なんとも言えないけど戦いに使えるかと言えばそうでも無さそうだからな。
まあ、いいや。
さあ、みんな乗ってくれ。)
俺(グリフォン雄)は皆が乗りやすいように身をかがませる。
皆が恐々といった感じで俺に乗る。
「意外とふわふわですわ!」
「アル、そりゃそうだよ!羽毛だもん!」
(皆、しっかりつかまってろよ!
行くぞ!)
俺は翼を羽ばたかせる。
「うわぁ!浮いたのです!」
「フミヤ様〜重くないのですか〜」
(大丈夫だよ!この大きさだ!
かなりのパワーがありそうだ。)
すると、崖からグリフォンメスが追走してくる。
別に攻撃してくるという感じではなく、群れの長の雄が人を乗せて飛んでいるのを興味本意で見に来たという感じですぐに巣に戻っていく。
「やっぱり雄には、攻撃してこないですわ。
フミヤ様!この作戦バッチリですわ。」
(そうだな。さあ、下に降りていくぞ。)
俺は、大きな穴を降りていく。
段々暗くなっていく。
(皆、大丈夫か?しっかりつかまってろよ。)
「フミヤ様?こんなに暗いのに見えるのですか?ライトを発動しましょうか?」
(俺は、グリフォンの目で見えるけど皆何も見えないだろ。
いいぞ。ライトを発動しても。)
リリィがライトを発動する。
俺(グリフォン雄)の周りを四つの光の玉が囲う。
辺りがほんのり明るくなる。
すると、岩肌に鉱石がところどころに突き出ていた。
リリィが口を開く。
「うわわ。アキノーさんが言ってた通りです。
あれは、アダマンタイトの鉱石ですね!
オリハルコンもありそうな雰囲気ですよ!
フミヤ様!
こっこれは、お金持ちになりそうですよ!」
(良いな!まず精霊ノーム様に会ってそれから、鉱石も回収しようか!)
そう言って、俺(グリフォン雄)は、下降を続ける。
深い。
しかし、ようやく底が見えてきた。
その時だった。
【暗い……。暗いよう〜。寂しいよ〜。
シクシク。
暗いよう〜寂しいよ〜。
シクシク。】
なにやら、悲しげな声が響き渡るのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺(グリフォン雄)は大穴の底に降り立つ。
そして、仲間が順番に俺(グリフォン雄)の背中から降り立つ。
「フミヤ様?どうしますか?人形出します?
でもその後、グリフォン雄が逃げたら帰れませんよ?」
(リリィ取り敢えず話せるし、このままで良いかな。"覇気"で従わせても良いけど、隙見せて逃げられてもまずいしな。)
この間も、例の悲しげな声は響いている。
セシル姫が魔眼を使って辺りを見ている。
「あっ!いらっしゃいましたわ〜。向こうの岩の上に座って〜泣いていらっしゃいます〜」
ノーム様、岩の上に座って膝を丸めて顔を埋めて泣いていた。
【シクシク。
くっ暗いよ〜。寂しいよ〜。
シクシク。】
(ノーム様!なんで泣いてんだ?!)
すると、顔を上げるノーム様!
【ギャァ〜!ぐっグリフォン!怖いよ〜!
怖い!怖い!怖いよ〜シクシクシクシクシクシクシクシク!】
(あっ!ごめんごめん!驚かせたみたい!
グリフォンだけど、本当はグリフォンじゃないんだ。)
【シクシクシクシク!ぐっグリフォンが話してる………こっ怖いよう〜怖いよう〜
ママ〜怖いよ〜シクシクシクシクシクシク!】
なんか余計に怖がらせたみたい。
ママ〜って。精霊にママが居るのか?
すると、セシル姫が私に任せろと言う視線を送ってくる。
セシル姫がノームの元に行き、声を掛ける。
「ノーム様〜大丈夫ですよ〜あのグリフォンは、攻撃してこないですし〜中身はフミヤ様ですから〜」
【シクシクシクシク!つっ次は目が光ってる人です〜こっ怖いよう〜怖すぎるよう〜
シクシクシクシクシクシク。】
「わっ私が〜こっ怖いですか〜!?
えっええ〜!これは、ショックです〜。」
セシル姫撃沈。
セシル姫がイジけてしまったのだった。
すると、ララがノーム様が座っている岩の前に行き、見えていないのに岩に向かって話しだす。
「ノーム様、そこに居るですか?
何をそんなに怖がっているのです?!
皆んな、ノーム様に会いにきたのですよ!
なんで寂しいなら、こんな深いところにいるのです?
暗いのが嫌なら、明かりをつけたら良いと思うのです。
なんで、怖がりなのに一人でこんな大穴にいるのです?
ウジウジウジウジ。
精霊様の癖にみっともないですよ!」
あっあぁあ〜。ララさん言っちゃったよ。
するとノーム様が顔を上げて、ララさんを見る。
【かっ可愛いい子。可愛いい子が偉そうに私に意見してる。
でも、可愛いいから怖くない。
何故、寂しいならこんな深い所にいるのか?
それは、グリフォンのせいなのです。
浅いと私のスペースに巣を作るのです。
グリフォンを避けていたら、こんなに深くなったのです。
暗いのが嫌なら明かりをつければ良い?
それは、そうですね。
なんか意地になっていました。
怖がりなのに、なんで大穴にいるのか?
それは、地の精霊だからです。
数年は、怖くなかったのです。
でも、誰も訪れてくれないし……グリフォン怖いし……どんどん気分が暗くなっていって……。シクシクシクシクシクシク。」
「取り敢えず!ノーム様!
明かりを付けるのです!
それも、すっご〜く明るくするのです!
こんな暗いから、性格まで暗くなるのです!
良いですか!
人生!明るくです!明るく、笑顔で!
辛くても笑うのです!
これ、エルフの森集落の小人族の掟なのですよ!
笑ってみるのです!
ふふふっハッハッハ!
リピートアフターミー!?」
【………えっへへへへ。】
「なっなんかキモいのです!
もっと、感情をさらけ出すのです!
ふふふっはははっ!」
ララさんによる、笑顔の訓練が始まったのだった。
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