第58話 迷惑

(ここは、スルーしよう!

見なかったことに。変態は、スルーするのが一番だ!

ウル、アル!ララさんを挟んで前を歩け。

姫は、俺とリリィが連れて行く。)


「フミヤ様!僕、ぶっ飛ばしたらいいと思うんだけど。」


(ウル!変態は、かかわらんほうが良い。

変態の思考は理解できんからな!

何するかわかったもんじゃない。

スルーが一番!)


「わっわかったよ!すっスルーしよう!」


俺達は、見なかったことにして一切振り向かず前だけ見て進んで行く。


「なん!なんで無視すると!

お〜い!無視ばするとは、許さんたい!

このバカちんが!」


(……………)


「……………」


前だけ向いて進む。

すると、王都を囲む塀が見えてきた。


俺達は、王都に入る為列に並ぶ。


マルスが後ろに付いてきている。


「王都に行くとや?

王都久しぶりったい!

美味い店知っとるけん!

お前らも連れてってやると!

金は、お前ら持ちやけん!情報料たい!

俺の分は、お前らが払うったい!」


(………………)

「………………」


「お前ら、無口なタイプやと?!

まあ、よか!

お前ら無口やけん、俺がその分盛り上げたるったい!」


(…………………)

「…………………」


俺達の番が来て、獣人の衛兵の元に行く。

セシル姫が衛兵に言う。


「ガーランド王国王女のセシルです〜

これが、身分を示す紋章です〜

今〜私を含め6名で世界を見て回っています〜」


セシル姫はガーランド王国の紋章を見せる。


「たっ確かに!確認しました!

………しかし王女殿下。

6名と言われましたが、7名いるようですが。」


「一番後ろの〜小人族の男は知りません。

私に一切〜関係のない人です〜」


ここで俺が衛兵に耳打ちする。


(なんか、山道で絡まれて………

ストーカーのように付いてきたんです。

こちらは、王女殿下を連れている為問題にしたくなく、出来る限り無視していたんですが。衛兵の皆さんで対応してもらえませんか?)


俺は、衛兵に金貨を握らせる。


衛兵は、ニヤリと笑い。

「お任せを。

ガーランド王国王女殿下一行6名!

ようこそ!獣人国王都ガネーシャへ!

さあ、お通りください!」


俺達は、門を潜って王都に入る。

俺達に付いてマルスも行こうとすると、

衛兵がマルスの後ろ襟を掴む。


「なっなん?なんばしよっと!」


「お前は、ガーランド王国王女殿下の連れではなかろう!

王女殿下一行に山道で絡んだそうだな!

今から、お前を取り調べる!」


「なん!俺は、獣人国集落の小人族族長のマルスったい!

取り調べるってなん?!

何も悪いことしとらんけん!」


「ガーランド王国王女殿下一行に絡んだことじたい、不敬罪で捕まえることができるんだぞ!

王女殿下から今は、苦情という形なので我らも取り調べで済ませてやろうとしているのだ!逆らうなら、公務執行妨害で引っ捕えるぞ!」


「こっ公務執行妨害?!

なん!?俺悪いことしとらんけん!

取り調べに応じるけん!

それでよかやろ?!」


マルスは、衛兵に連れて行かれたのだった。


(今のうちに、さっさと行こう!)

俺達は、急足で王都を歩いたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


取り調べ室では、マルスが取り調べを受けていた。


「俺は、獣人国集落の小人族族長マルスったい!

ガーランド王国のエルフの森集落の族長の娘、ララが俺に会いに来たけん!

声を掛けたと!」


「お前に会いにきたなら、何故お前から声をかける?

それに小人族の中でもエルフ里の集落は、小人族の王族の集落だろう!?

小人族の姫ではないか!

獣人国集落の小人族は、いわば爵位で言えば騎士爵、男爵クラスだろう?

身の程知らずか!

お前の集落は全員で何人だ?」


「俺入れて8人ったい!」


「お前、それでよく集落を名乗れるな。

………まあ良い。

そのララ姫は、お前に会いに来たわけではない!ガーランド王国王女殿下に付き添って世界を見て回っておるだけだ!

勘違いも甚だしい!

これ以上、付き纏うとストーカーだぞ!」


「そうたい!俺は、ストーカーったい!

ララが俺の物になるまで付き纏うったい!

ストーカーは、俺の集落では褒め言葉やと!」


「………褒めておらんわ!

お前、獣人国王都で問題おこすなよ!

それも、ガーランド王国王女殿下一行相手に!国際問題に発展したらどうなるんだ!

お前は、獣人国の国民なのだぞ!」


「俺は、獣人ではないけん!小人族ったい!

それに、ガーランド王国王女殿下なんて興味ないけん!

俺が興味あるのは、ララだけったい!」


「お前!獣人国に集落を作っているのだから、獣人国の民だろうが!

その小人族の姫が、ガーランド王国王女殿下と旅をされているのだ!

お前が付き纏うと、ガーランド王国王女殿下に間接的に迷惑がかかるのだ!」


「ガーランド王国王女殿下なんか知らんけん!逆にこっちが、迷惑ったい!

今もこうして取り調べを受けとるけん!

迷惑ったい!」


「お前、牢屋で暮らしたいようだな。

俺は、注意したぞ。公務執行妨害になるぞと!

わけわからんことばかり言うなら、牢屋に入れてやるぞ!」


「まっ待って!

わっわかった!わかったけん!

めっ迷惑かけんと!

迷惑かけんったい!

それでよかやろ!」


「わかればいい!

お前!接近禁止命令だ!

ララ姫の10メートル以内に近づくな!

いいな!

近づいたら電撃が体に走るように魔法契約を交わせ!

ここに、血を一滴垂らせば解放してやる!」


「わっわかったったい!

ここでよか?

………はい!たらしたけん!

これでよかやろ!」


マルスは、ようやく解放されたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



フミヤ達一行は、冒険者ギルドで失われた大地の場所を聞き、情報を集めていた。

しかし、場所以外は情報を得られず、夕方、食事をレストランで取ることになった。


レストランでワイワイ食事をしていた時、それを少し離れた場所から見つめる目。


(ララさん!見てるな。)


「フミヤ様!見ているのです!」


「フミヤ様。何故、彼は近づいてこないのですか?逆になんか怖くないですか?」


(リリィ、きっと衛兵に怒られたか、接近禁止命令されたかだろうな!)


「フミヤ様〜接近禁止命令は〜魔法契約をするんですよ〜近づいたら体に電撃が走るとか〜。

だから、あの距離がギリギリなんじゃないですか〜?

だから、ララ先生〜そんな警戒しなくても〜大丈夫ですよ〜。」


「姫!それでもあの視線は、きっキモいなのです!

姫は、お子ちゃまだからモテモテのララ先生の気持ちはわからないのです!」


「まあ〜ララ先生〜!

私も〜素敵なレディになるため日々勉強しているのですよ〜

モテモテのララ先生ですか〜。

キモい人にモテモテでも〜羨ましくないですよ〜!」


「姫!言っていることはわかるのです!

キモい奴からモテモテでも羨ましくない!

そうなのです!でも!しかしですね!

全てはそこからなのですよ!

そんな奴さえ、惚れさせることのできない女が!恋愛マスターになれるのかって話なのですよ!

ここ大事ですよ!

姫!これは、試験に出ますよ!

いいですか!」


「ちょっと〜待ってください〜

いきなり試験範囲〜ですか〜!

今メモりますから〜。

たっ確かに〜そんな奴くらい惚れさせることができないようでは〜良い殿方が魅力を感じるレディではないと言うことですね!

なっなるほど!さっ流石!恋愛マスターララ先生です!」


ウルが口を挟む。

「あのさ。僕思うんだけど……そんな試験あるの?」


アルが言う。

「ちょっとウル!それを言ってしまうのですか?!」


すると、ララが言う。


「えっ!ウルとアルは知らないのですか!

ガーランド王国エリシア恋愛研究所の存在を!

こっこれは!由々しき事態なのです!

だっだから!エルフの戦士の既婚率が低いのですよ!」


(そんなの本当にあるのか?セシル姫)


「はい〜間違いなくありますよ〜

母様が設立者だと〜この母様の日記にも〜書いてあります〜。王国の女性を素敵なレディに!というのが謳い文句ですわ〜」


(知ってた?リリィ?!)


「エリシア恋愛研究所は聞いたことがありますよ。王都の花屋さんの二階が、その本部ですよね。」


「そうなのです!流石!

リリィさんなのです!素敵レディのリリィさんは、やっぱり知っていたのです!

それに比べて………アルとウルは………

う〜ん全くなのです!」


ララが両腕を広げて、あ〜あ、といった感じで呆れたような態度を取る。


「えっ!えっ〜!

ぼっ僕ら、もっもしかして取り残されてるの〜!アル!やっヤバイじゃん!」


「………うっウル!すっ少し、落ち着きましょう!

リリィさん!リリィさんは、その研究所知ってるだけですわよね。

入会してないですわよね。」


「入会してませんよ!私は、もう必要ありませんもん!ねっ!フミヤ様!」


リリィが抱きついてくる。


ウルとアルは、焦ったようにララさんと姫に研究所のことを必死にヤイヤイ聞いていた。


その時、店の従業員がやって来て言う。


「あのう…すみません。

あちらのお客様が、こちらに会計を付けるように、おっしゃるのですが……。」


マルスが俺達に会計を押し付けてきたのだ。


(あっ!無理無理!俺達、知らない人の分まで払う気ないですから。

あかの他人なんで!ご自分で払うように言ってください!)


「そっそうですか。わかりました。」


従業員は、それをマルスに伝えに言ったのだ。


すると、大きな声で騒ぎ立てるマルス。

そして、他の客達もマルスを抑えこもうと動きだす。

向こうは向こうで、てんやわんやしたのだった。


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応援ありがとうございます!

ガーランド王国に恋愛研究所があったんですね!セシルの母様エリシア様もなかなか面白い人だったようです。

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