第53話 飛ぶ
次の日の朝、枢機卿を空間転移でガーランド王国に運び元帥に引き渡した。
元帥とガーランド王は、セシル姫に聖騎士を向けたと聞いて、激怒。
教皇が枢機卿の裁きを王国に任したと聞いて、枢機卿を牢屋に投げ入れた。
これから、色々取り調べを受けるだろう。
聖教国にすぐに戻ったが聖教国は、とても慌ただしかった。
昨晩教皇が人族優先主義を撤廃する宣言をし、人族優先主義者を取り締まった。
今日はその名残りもあり、人族達が戦々恐々
としていたのだ。
ミーナ大司教も亜人達に、事の経緯を説明し、これからの聖教国について語ったりしていた。
そして、翌日。教皇との約束の日となるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
教皇とともに、徒歩で聖教国を出る俺達。
ミーナ大司教とローザ隊長も同行していた。
ミーナ大司教が口を開く。
「教皇。海の神殿は大丈夫でしょうか?
なにやら邪悪な気で溢れていると聞きますが。枢機卿が何か良からぬことをしていたのでは?
確か邪神がどうとかということを口走っていたのですが。」
「そうですね……。
実際、私も長い間海の神殿にいってないので。
なんとも言えないですね。枢機卿が海の神殿に近づくことを許さないといった感じでしたから。
もし、悪き物ならば放置することもできません。
調べることから始めましょう。
フミヤ殿。貴方はお強い。
手をお借りするかもしれません。
お願いしてもよろしいですかな?」
(ああ。そういうことなら喜んで協力するよ。)
「そうですか。助かります。
よろしくお願いします。」
すると、仲間が口々に言う。
「フミヤ様にかかれば楽勝なのです!」
「僕、フミヤ様が負けるところは想像できないよ。」
「フミヤ様は、勇者も倒したお方ですからね。」
「フミヤ様〜私達も戦える相手なら〜一緒に頑張りますわ〜」
「うわぁ。皆んなのフミヤ様への視線が熱い!だっダメですよ!
フミヤ様!私が一番なんですからね!」
という感じで、危機感もなにも感じず海の神殿に向かっていたのだ。
しかし、その雰囲気が一変する。
海の神殿まであと少しといったところで、襲撃を受ける。
聖教国入り前に襲撃してきた奴らだ。
"疾駆""剛力""魔法剣"発動。
火属性魔法極LV1業火を付与。
魔剣ブラックローズを抜く。
ブラックローズが青い炎を纏う。
斬り伏せていく。斬られた賊は、斬り口を青い炎で焼かれていく。
すると、激しい剣筋で一人の男が俺の前に立ちはだかった。
この男を相手しながら、他の賊を斬り伏せていく。
「うっ!化け物あるね!
しかし、私は簡単にはいかないあるね!」
(もう!お前だけだぞ!)
「私一人でもお前を倒すあるね。
その後、皆殺しあるね!」
俺の"剛力"のパワーにも互角に打ち合ってくる。
互角というか、力をうまく流されている。
剣技が優れているのだ。
男は、俺を攻撃する合間に激しい剣筋でリリィ達も狙おうとする。
その度に俺は、守りに入ることになり攻撃になかなか移れないでいた。
(守りながらはキツイ!
先に行ってくれ!コイツを倒してすぐ行くから!リリィ!)
俺は、鍔迫り合いをしながらリリィを見て言った。
「フミヤ様!必ずですよ!
すぐに来てくださいよ!」
俺は再度リリィを見て言う。
(すぐ行くから!任せておけ!)
俺は鍔迫り合いの中、左手で相手の腕を掴む。
(リリィ、すぐ戻る。)
"空間転移"を発動した。
俺と男は空間転移でガーランド王国王城の中庭に飛んだのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「消えたのです!空間転移なのです!
何処に行ったのです?」
「……フミヤ様は、私達の危険を排除する為に、空間転移で場所を変えたんです。
離れた場所。ガーランド王国でしょうか。」
「あの男強いよ。フミヤ様の力を受けていたもん。僕、フミヤ様の判断は正しいと思う。
悔しいけど僕らを背負って戦うのは、フミヤ様の負担になるから。」
皆が頷く。
そこで教皇は言う。
「…フミヤ殿が言っていました。
先に行けと。
先に行きましょう。
よろしいですね。リリアン様。」
「……そうですね。
フミヤ様はすぐに戻ると言われました。
先に行っておきましょう。」
海の神殿に向けてリリィ達は動きだした。
坂を下り、ある岬にたどり着く。その岬の先に下に降りる階段があった。
階段を降りていく。
そして、岬の崖下に降り立つ。波が打ち付ける。
海を見ると降り立ったところから約50メートルくらいの所に小島?磯?と思われる場所に白い神殿が建っていた。
その神殿からは、黒い霧のような物が立ち込めていた。
ミーナ大司教が言っていた邪悪な気というのがこれだろう。
教皇が指に嵌めていた指輪を海に翳した。
すると、指輪から光が海に飛び、海から皿の様なステージが現れた。
教皇が言う。
「では、行きましょう。リリアン様。」
教皇がリリィの腕を掴んでステージに乗り込んだ。リリィは咄嗟に側にいたセシル姫の腕を掴む。
ステージに乗ったのは教皇とリリィ、セシル姫だった。
すると、ステージが動き出し岸から離れていく。
ミーナ大司教が叫ぶ。
「どういうことですか!教皇!」
ステージ上で、リリィが動こうとするのを教皇が何処からか剣を取り出し首元に剣を添えていた。
もう片方の腕でセシルの首を絞めながら。
「ハッハッハッ!ミーナ大司教!聖教国は、貴方に差し上げますよ。
聖教国など私は興味もクソもありません。
私は、今から邪神様を復活させるのです!
この聖リリアン・ドロテアを贄にしてなぁ!
フフフッハッハッハッ!
邪魔な男は、自ら何処かに行ってくれた!
フフフッ!まあ、その男もサンダ人民国の5剣神の一人ガオシュンが殺してくれるでしょう。
この日まで長かったぁ!
何が大聖女マリアンだ!
この私が聖職者?笑わせる。
私は、サンダ人民国の5剣神の長。チェンだ!
邪神様を復活させて、世界を手に入れるのだ!ハッハッハッ!
おっと!動くなよ。リリアン!
まだ、お前の血は大事だからな。」
岸に残されたミーナ大司教、ララ、アル、ウルは、ステージが海の神殿につくのを、ただ見守るしかなかった。
海は激しく打ち付けており、泳ぐことなど到底無理なのだ。
「………教皇、やはり貴方は信用してはいけない人だったのね。
姫は、関係ないでしょ!その手を離しなさい!」
「うっぐぐぐ〜リリィさん。
わっ私の……ことは気にしないで……
…………」
「フフフッ。やっと気を失いましたか。
さあ、これで、私とリリアン。二人だけだ。
さあ、行くぞ!」
リリィの首に腕をまわして、剣を突きつけながら歩く。
そして、教皇とリリアンは海の神殿に入って行くのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ガーランド王国王城中庭に空間転移で飛んだ、俺と男は激しい打ち合いをしていた。
突然戦闘中の二人が中庭に現れて、城は騒ぎになっていた。
「元帥よ!何事じゃ!」
「突然、フミヤ様が男と戦闘しながら現れました!
推測ですが、聖教国で襲われたのだと。
それでフミヤ様が姫達を危険に巻き込まない為、戦いながら空間転移を使ったのでしょう。」
「助太刀しなくて良いのか!」
「とても、手出しができる戦いではありません!勇者との戦い同様に、英雄譚に出てくるような戦いです。」
「そっそうか。見守るしかないのじゃな。」
騎士や、元帥、王が見守る中、俺は、打ち合いながらも冷静にこの男の動きを見ていた。
雷を纏い体のキレを増しているのがわかる。
このキレを封じなければ、負けることは無いが戦闘が長引くと判断し、俺は、鍔迫り合いの最中に"水属性魔法極LV1ウォーターネット"
を発動する。
近距離で水の網が男に被さる。
その瞬間、男は自ら纏っていた雷で感電する。
それを逃さず俺は、思いっきり踏み込み左下から右上へ魔剣ブラックローズを振る。
それは、いつか見た勇者の剣技、"ブレイブスラッシュ"だった。
男は、斜めにスパッと斬り離された。
右の腹から、左の肩まで。
斜めに真っ二つになったのだ。
そして、青い炎が男を焼いていく。
周りで見ていた騎士や元帥、王が歓声を上げる。
(ガーランド王!悪いがこの死体の処理をお願いしたい。
なんか嫌な予感がしてならない。
今すぐリリィの元に行かないと!)
「なっ何があったのじゃ!」
(見ての通りだ。襲われた。)
「セシルは大丈夫なのか?」
(他の敵は倒してから、ここに飛んだから大丈夫だと思うが。
しかし、だからすぐ戻る。
死体は頼んだ。)
俺は、リリィの元へと急ぐのだった。
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応援ありがとうございます。
ガオシュン、意外とすぐ死んじゃいましたね。
5剣神の一人とか言っていたのに。
フミヤが、戦闘に慣れてきたと思ってください。勇者の必殺技をコピーしたしね。
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