第五章 聖教国編

第47話 まだ見ぬ味方

ドワーフ達と小人族がそれぞれ国と集落に帰った次の日。

ガーランド王国王城に、ある人物から連絡が入った。


ガーランド王とライデル元帥に呼ばれた俺達。


ガーランド王が言う。


「聖教国教皇から、聖教国の海の神殿を見学に来ないかという誘いがあったのじゃ。

もし、来られるなら教皇自ら案内をしてくれるらしい。

海の神殿は、簡単には入れないようカラクリがあるらしいのでな。

教皇ならば、そのカラクリを解けるというのだ。

どうする?」


(何故?教皇が?

聖教国マリア教会とは揉めたばかりだ。

王国自体も教会を閉め出しただろ?)


「まあそうなのじゃ。

まず、枢機卿のおこなったことについての謝罪があったのじゃ。

教会も二つに分かれておっての。

枢機卿が仮に過激派とすれば、教皇は穏健派じゃの。

教皇は、過激派のしたことを嘆いておった。

教皇は、セシルのことも気に掛けてくれておっての。

自分が案内すれば、過激派からの邪魔も受けずに安全に聖教国の海の神殿に行けると提案してくれたのじゃ。

ワシも元帥も良い話だと思っておる。

どうじゃ?」


リリィは、渋い顔をしていた。

やはり、リリィが教会から受けた迫害は深くリリィの心に刻みこまれている。


(それが、本当なら良い話だとは思う。

しかし、俺は俺達は、はいそうですかと二つ返事で納得はできない。

出来る限り教会のお偉い方との接触は避けて海の神殿を目指したい。

そうだろ?皆んな。)


「そうですね〜聖騎士まで投入して〜力でリリィさんを奪おうとしたのです。

穏健派だから〜といって〜信用はできませんね。」


「僕は、フミヤ様の御心のままに。」

「私も同じですわ。」

「ララは、教会なんて信用しないのです!」


俺は、リリィを見る。


リリィは、口を開く。


「……教皇とは、何度も会ったことがあります。

母、マリアンを大事にしてくれていました。

私も可愛いがって……

けれど、私は……何故か幼き頃からあの方のことが苦手なんです。

笑顔の中の目が…目がまるで蛇のようで……

あの人の前に立つと動けなくなったことを覚えています。

何故か、私のことを迫害していた人達よりも冷たい何かを感じていました。

可愛いがってもらっていましたけど。

できたら、あまり関わりたくないと思うのですが……旅は、冒険は、安全にしたほうがいいですよね。

姫もいらっしゃるし……」


セシル姫が言う。

「リリィさん〜私に気を使わないでくださいませ〜。

仲間じゃないですか〜。

リリィさんの冒険の選択に〜私は足枷になりたくないです〜。

明らかに今、教会はリリィさんにとって〜脅威となるものと〜私も判断しています〜。

ならば〜避けて通るのも賢明な判断だと思います。」


「姫!よく言ったのです!

ララは、冒険に危険はつきものだと思うのです!

安全に?旅行じゃないんです!

でもより安全に冒険することも大事はわかってるです!

なら信用できない者に、案内される危険より、コソッとお忍びでいって教会過激派に見つかったら戦う危険のほうを選ぶのです!」


「僕もそっちの方が、良いと思うな。」


「そうですね。安全だと油断していて、寝首を掻かれるほうが危険だと思います。」


リリィは、そう言う皆んなに頭を下げる。


(王よ。ということだ。

俺達は、誰の手助けも受けない。

信用出来る仲間達だけで冒険する!)


「………そうか。そうじゃの。

あいわかった。教皇には断っておこう。」


そこに宰相が慌ててやってくる。


「王よ!きょっ教皇が!聖教国、教皇が!おっお見えになりました!」


「なっなんじゃと!

昨日連絡を受けたところじゃと言うのに!

その後、すぐに来たというのか?!」


(ふん!断られることを想定して、迎えに来たということか。

………何を企んでやがる?

……王よ。会おう。

俺が教皇と会う。

場を設けてくれ。)


「フミヤ様。私も一緒に。」


(………リリィ。

わかった。皆で、パーティの皆んなで会おう。教皇の出方を全員で観察させてもらおうか!)


「「「「「はい!」」」」」


俺達は、急遽教皇と会うことになったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ここは、聖教国聖マリア教会本部の一室。


その一室を訪れる一人の年配の女性。

白の祭服を着て、肩までの金髪の髪。

50代の女性であった。


女性は、ノックして部屋へ入る。


そこにいたのは、枢機卿だった。


枢機卿は、鬱陶しそうに対応する。


「うん?ミーナ大司教。

ここにくるのは珍しいな。

白の祭服を着ているということは、祭り事があったのであろう?

ここに居て良いのか?」


「大聖女マリアンの降誕祭の日も忘れていらっしゃるのですか!

貴方達は!

高位の聖職者として、恥ずかしいと思わないのですか!

教皇自体も降誕祭だというのに、昨日から姿も見えない。

大聖女マリアンを貴方達は、どう考えているのですか!

大聖女マリアンが亡くなってから、貴方達の行動には目に余るものがあります!

信者にお布施の強要。

聖騎士を使った武力行使。

何をしようとしているのですか!

各国に対して治外法権を盾に、したい放題。

ついには、大聖女マリアンの祖国ガーランド王国からは、教会を撤廃されたではありませんか!

こんなことで大聖女マリアン様に顔向けができますか!」


「フフフッ。

そう荒ぶるな。

ミーナ大司教。我も教皇様も大聖女をないがしろにしているわけではない。

逆に、大聖女がいない今を憂いているのだ。

大聖女候補だった聖女カシエラも使い物にならず、困っておったのだ。」


「ふん!聖女カシエラ?

元々、大聖女の器ではなかったでしょう!

カシエラには、邪が過ぎた。

私は、最初から認めていません!

貴方達が押し切ったのでしょう!

聖女として相応しいのは、大聖女マリアン様の御息女、聖リリアン・ドロテア様だけ。」


「フフフッハッハッハッ!

その通りだ!

その通りなのだよ!

ミーナ大司教!

あの穢れた血の娘!奴が大聖女なのだよ!

"大聖女の癒し"に、あの奇跡の魔法、"女神の蘇生"まで行使できるのだ!

我も教皇も目を疑ったよ!

あの穢れた血の娘がな。

今、教皇様が自らガーランド王国に出向き、穢れた血の娘を取り込む為動いてくださっているのだ!

だから、ミーナ大司教も喜べ!」


「なっ何を今更勝手なことを!

散々迫害し、マリアン様の死後、教会から放り出した癖に!

私達が必死に探していたのを、鼻で笑っていた貴方達が、今になって手のひらを返すのですか!

都合が良すぎます!

聞いた話では、聖リリアン・ドロテア様は、今冒険者として、幸せに活動されていると聞きました。

もう、あの方を自由にしなさい!

マリアン様もきっと、それを望んでおられるでしょう!」


「フフフッハッハッハッ!

マリアンがそれを望んでいる?

笑かすな。

死んだ奴に意思などないのだ!

それにな大聖女の力を持つ者、穢れた血の娘でも教会に奉仕しなければならんのだ!

穢れた血の娘でも、使い道はあるのだよ!

フフフッハッハッハッ!」


「貴方と教皇は、何をしようとしているの?!

使い道?聖リリアン・ドロテアは物ではありませんよ!

何を何をしようとしている!

枢機卿!

海の神殿が最近、邪悪な気で溢れています!

何を企んでいる!」


「フフフッハッハッハッ!

そう強い言葉を吐くな。

今のお前に、我と教皇と戦う力など無いであろう?!

お前は、所詮大聖女マリアンが居てこその女。

マリアン亡き今、お前は何の力もないであろう。

お前は、大司教として民に敬って貰えるだけで満足していれば良いのだ。

のう?ミーナ大司教!

"次はないぞ。ミーナ大司教!"」


「うっ!ぐぐぐぐ。

きっ教会は、民に寄り添うもの!

そっそれだけは、枢機卿忘れないで頂きたい。」


「フフフッ。

わかっておるよ。

その為に、我と教皇は動いておるのだ。

さあ、お帰りは、そちらだ。

話は終わった。帰れ。」


ミーナ大司教は部屋を追い出されるかのように部屋を出た。


そこには、祭服を着た若い男と白い鎧、聖騎士の女性が立っていた。

すぐに、3人は移動し、一室の部屋に入る。


男が言う。

「ミーナ大司教様……いかがでしたか?」


ミーナは苦渋の表情で言う。


「ケイン司教……遅かったわ。

教皇がすでにガーランド王国にリリアン様を取り込みに動いたということです。

自由にして頂きたかったのに…」


聖騎士の女が口を開く。


「ミーナ様。我らは、これからどうすれば?」


「ローザ。取り敢えず

貴方は、聖騎士を集めるのです。

まだ、枢機卿派に取り込まれていない者も居るでしょう。

教皇と枢機卿は何かを企んでいます。

リリアン様を使って何かをしようとしています。

いずれ、聖教国は荒れますよ。

リリアン様を守る力を整えてください。

ケイン司教も、司祭や助祭などに声かけをお願いします。

いずれ、リリアン様は聖教国にお見えになるでしょう。

私達は教皇に、リリアン様と接触する機会は、阻まれるでしょう。

なのでリリアン様に同行しているお仲間に接触出来るよう動くのです。

良いですか。

大聖女マリアン様の御息女、リリアン様をお守りするのです。

それが我らの使命。

神に仕える聖職者としての使命です。」


「「はい!」」


3人は、手を取り合うのだった。



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