第43話 忘れていた

リリィは、空中でフミヤの勝鬨を聞いた。

フミヤの声がガーランド平原に響いていく。


帝国軍の兵士が剣を捨てていくのが見える。

それと同時に帝国軍の兵士が興奮剤が切れたのかその場にうずくまる姿が見て取れた。


リリィは空中で祈りに入る。

リリィの体が光輝き、リリィは、聖属性魔法LV8"大聖女の癒し"を発動した。


リリィの体から光が抜け出しガーランド平原全体に光が降り注ぐ。

まるで、光の雪が舞い落ちるようにしんしんと帝国軍、王国軍分け隔てなく降り注ぐ。

誰もが暖かな気持ちに包まれるそんな優しい光だった。

傷を負った者は、傷が癒えていくのに驚愕し、腕や足を欠損した者は、腕や足が再生する様を見ながら涙を流す。


丘の上では、皇弟がポカンとその様子を見ていた。

ドラス王が言う。


「やっぱりリリィは、女神様やで!

凄い力や!

ほんま凄い!凄すぎるやろ!凄い!凄い!」


興奮して、凄いしか頭に浮かばないドラス王。


元帥が皇弟に言う。


「皇弟様。帝国軍の兵士達にお話するのは皇弟様のお仕事です。

行きましょうか。」


「あっ!すまない!呆けていた。

しかし、我々は今ドラス王が言うように奇跡を目撃した。

リリィ殿の力。そして、フミヤ様の勇者を討ち破る力。

まるで英雄譚の本の世界を具現化したようなシーンであった。

おっと!すまない!私も興奮しているようだ。今私がすべきことをしなければな。」


元帥に促されて、皇弟が馬に乗って丘からガーランド平原に降り立つ。


リリィは、大聖女の癒しを終えてフミヤの元に降り立つ。


リリィは、降り立つと同時にフミヤに抱きつく。


フミヤは、それをしっかりと受け止める。


「うっ、うっうっうわ〜ん。」


リリィは泣き崩れる。


フミヤは抱きしめる手を強める。

何も言わずに抱きしめるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


皇弟が帝国軍の前に行く。

王国軍は、命を落とした者達を一つの場所に丁寧に集めて並べていた。

命を落とした者の横で泣き崩れる者。

少しでも綺麗にと、濡れたタオルで拭いてやる者。

それぞれがいろんな憤りを感じながら、向き合っていた。


皇弟が馬上から降りて、語りだす。


「ルシア帝国皇帝の弟、アレクである。

皇帝の傲慢で、やる必要のない戦争がおきてしまった。

そして、大事な命が……散った。

今、起きたことをどれだけ悔やんでも、嘆いても何も変わらん!

戦争という無意味な物を起こしてしまった事実は何も変わらんのだ!

悔やむなら、嘆くなら、戦争が起きる前にすべきことなのだ!

そして、愚かな考えだと思い直すのだ。

皇帝の圧倒的権力に逆らってでも、無意味な戦争はするべきではないのだ!

其方達には、愛する者達がいるのだろう?

其方達には、愛する物があるのだろう?

戦争を仕掛けた側に愛するものの為という大義名分などない!

そこには、傲慢な欲だけだ。

それと、逆に王国軍は愛する者達を守る為、愛する物を守る為という大義名分があった。

最初から、帝国に勝ち目などないのだ!

意志の強さ!最初から負けているのだ。

しかし、我は思う。

其方達もまた、皇帝の傲慢の被害者だと。

皆、すまなかった。

我は、ずっと皇帝を諌めておったが、皇帝の怒りを買い、毒を盛られた。

王国に逃げる選択をせざるえなかった。

本当にすまなかった。

我は皇帝の血縁者として、皇帝の被害者の救済をせねばならなん!

今から、我はこのまま進軍し皇帝をこの手で討つ。

そして、二度とこのような無意味な戦争が起きぬ国を作る!

民に笑顔を!共に、そんな国を作ろうぞ!

力を貸してくれ!」


「「「「「うぉぉぉぉ〜」」」」」」


最初は皇弟支持派からの雄叫びが上がるが、

一気に帝国軍全体へと広がったのだった。


俺は、リリィとともに皇弟の話を聞いていた。


皇弟の話は、説得力のあるものだと感じた。

国を統治すべき者の言葉だと思った。


その時、俺の背後に迫る影が。


『うぉぉぉりゃ〜!』


帝国軍の一人の兵士が俺に襲いかかってきた。


全くの不意をつかれた俺。


態勢が崩れる。


そこにウルがサッと盾を持って防御に入ってくれる。


ぶつかる帝国の兵士とウル。


『"勇者の仇討ちだ!踏み潰せ!"』


この声は!


兵士が足を振り上げた瞬間頭の鎧が外れる。


" 怪僧ゲル " だった。


(ダメだ!ウル!避けるんだ!)


怪僧ゲルの"言葉の暴力"

その言葉に乗ったゲルの足がウルの盾を砕き、ウルを一瞬で踏み潰す。


「キャアァァァァァ〜」


リリィの悲鳴が響きわたる。

アルがウルに駆け寄る。


俺は、"憤怒"が自然に発動し、魔素纏いを発動、剛力を発動。

魔剣ブラックローズで怪僧ゲルの首目掛けて振り下ろす。


怪僧ゲルの頭が吹っ飛び、首から噴水のように血を撒き散らしながら、首のない体が地に倒れた。


アルがウルに言う。


「ウル!ウルっ!嫌だ嫌だよ!

一人にしないでよ!ウル!」


リリィが必死に治療を試みる。


「"大聖女の癒し"………うっ!"大聖女の癒し"

……なんで!"大聖女の癒し"治療が追いつかない!

……ダメ!ダメよ!ウルさん!行っちゃだめよ!うっうっ!」


(ウル!)


ウルの側に俺は駆け寄る。ララもセシル姫も。


ウルは、目を微かに開け言う。


「…あっあれ?ごっほ!ごっほ!

………なっ何も見えないや……僕。

……皆んな……ゴホっ!

どこにいるの?ゴホっ!

あっアル…アル…僕…」

何度も何度も口から血を吐き出しながら弱々しく言葉を繋ぐうる。


「うっうっうっ!ウル!私はここに!

ここに!居るでしょ!しっかりして!

ウル!私達は二人で一人でしょ!

うっうっうっ。………一人にしないで……

ウル!」


アルの必死の呼び掛け。

リリィは、大聖女の癒しをかけ続ける。


「ゴホっ!ゴホっ!

………僕……死んじゃうの?……

……い…やだな……

もっと……みんな……と……

世界を……」


元帥とドラス王も駆けつける。


「うっ!ウル!」


「ウル!あかんで!行ったらあかん!

……さっ酒を又!一緒に飲もうや!

なっ!ウル!……うっうっ!クソったれが!

ワシ!お前と飲むの……楽しみに生きてんねん!……だから!ウル!行かんといてくれや〜たっ頼むわ〜…」


元帥とドラス王がその場に崩れる。


「ふっ……フ…ミ…ヤ…様……

……僕……もっと……みんな……を

守り………た……かっ…た。

みんな………大好き……ゴッゴッホッ!」


「「「「「「ウル〜!」」」」」」


ウルは……

皆に見守られながら、静かに息を引き取った………


最後は、俺達に微笑むように………。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


沢山のフォローありがとうございます!

フォロー数100人突破しました。

ありがとうございます!

PVも、もうすぐ10000です!

ありがとうございます!

皆様に支えられ、やってこれました。

これからも頑張って更新していきますのでよろしくお願いします!

よろしければ♡☆をポチッとお願いします!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る