第40話 いろいろな助っ人

ルシア帝国は、戦争準備に入り国民にも大きく、その影を落としていた。


国民にとって、戦争は喜ぶべきことではなく勝っても負けても、戦争資金を使った後ということで税収が引き上げられるのだ。

なので戦争の準備に入った時点で、ほぼ全部の商店が値上げを実施し、物価の上昇が国民の財布に大きな負担となっている為、国民の不満は募る一方となり、国自体の雰囲気がどんよりと暗くなっていたのだ。


この雰囲気も平民だけではなく、貴族にも流れており、元々、皇帝の政策に不満を持っていた反皇帝派、いわゆる皇弟を支持する貴族達が、ガーランド王国に亡命した皇弟に密かに連絡を取り、寝返りを示唆していたのだ。

ルシア帝国皇帝の20万の兵力という思惑は、最初から崩れていることを皇帝は知るよしもなかったのだ。


皇弟は、ガーランド王国から自分の支持派に対して策を講じていた。

支持派約五万が戦争開始とともに、寝返るよう指示を出していた。

ルシア帝国皇帝が考えていた帝国20万vs王国5万が根抵から崩されているのだ。

戦争開始時には、帝国15万vs王国10万となるのだ。


しかも、寝返る皇弟支持派の兵は、帝国軍の深くに位置し、いわば王国軍と挟み撃ちという形を取ることを皇弟は何度も支持派と打ち合わせをしていたのだった。

この時点で数の有利というものはなくなったに等しい。

戦争準備は、帝国だけでなく王国でも進んでいたのだ。皇弟がこうして動いていたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そんな中、王国王城ではララが一度小人族の集落に帰ると言うのだ。


(ララさん。集落に?

どうしたんだ?)


「フミヤ様!小人族もガーランド王国の民なのです!

ルシア帝国がガーランド王国に攻めてくるというのに、知らないではダメなのです!

小人族は王国に集落が転々とあるのです!

小人族をまとめ上げ、戦争までに王都にやってくるのです!

これをするのがララの今の仕事なのです!」


ライデル元帥が口を開く。


「ララ殿!それは助かる!

小人族の戦闘力は高いですからな!

しかし、個性が強い故小人族をまとめ上げるのが難しい。

ララ殿がそれをしていただけるというなら、こんな心強いことはない!」


「ライデル元帥様、ララに任せるのです。

どの集落にもララは顔がきくのです!

なんせ、ララは拳聖なのですよ!

すぐにまとめ上げるのです!

小人族一万の兵なのです!」


するとアルとウルも頷く。

そして、ウルが言う。

「フミヤ様、僕達も一旦エルフの里に帰るよ。

そしてエルフ達を連れて帰ってくる。」


(そうか。それなら、アル、ウル、ララさん。

空間転移で送るよ。

そのほうが良いだろ?)


「それは、助かるのです!

ララは沢山集落を回らないとだめなのです。

時間は大事なのです!」


「僕らも助かるよ!」


俺はアルとウルをエルフの里に、ララさんを小人族の集落に空間転移で送るのだった。


空間転移で王城に戻ってくると、何やら賑やかだった。


「なんや、ウルはエルフの里に帰ったんかい!

入れ違いか!

ガーランド王国王都の酒場で飲み比べしよおもってたのになあ。

でも、しゃあないな!

おっ!アニキ!フミヤのアニキ!

元気しとんかいな!」


ドワーフの国のドラス王だった。


ライデル元帥がドラス王の勢いに飲まれているようだ。


(ドラちゃん!見ての通りだ!

元気だぞ。

で、ドラちゃん、どうしたんだ?

ガーランド王国まで来て。)


「アニキ!そんなん決まってるがな!

ガーランド王国は、ワシら友好国やで!

帝国のアホが戦争仕掛けてくるって聞いて、じっとしとれんやん!

ワシら、ドワーフの国も一緒に戦うで!

アニキ!そう言うこっちゃから、よろしゅう頼むで!」


(えっ!そうなのか?!

他は?ドラちゃんだけで来たのかよ。)


「そや!二万の兵の行軍なんか時間かかるやん!ワシ、チンタラ嫌いやからな!

ドラゴに任せて、先チャ〜っと来てん。

多分、あいつら2日後くらいに到着するんとちゃうか!

早よ来たらウルと飲めるやん思ってきたけど入れ違いやったわ!ガハハハハ!

だから、アニキに付き合ってもらお!」


俺とドラス王のやり取りを見て、ライデル元帥が口を開く。


「フミヤ様は、ドラス王と親しいようですな。

どういう経緯で?」


「ワシら兄弟盃かわしたんやで!

アニキには、敵わんもん!

ドワーフの国の兵士みんな、アニキにボコられたんや。

ドワーフの国は、どこまでもアニキについてくで!だから、アニキ飲みにいくど〜!」


(まあ、待て、待てってば。

元帥!ドワーフの国が助っ人で共に帝国と戦ってくれることは、間違いないみたいだ。

二万の兵が2日後には、ここに来るらしい。

元帥!間違いなくアテにしていいから。

そうだろドラちゃん!)


「当たり前や!アニキに嘘つくかいや。

元帥!隊列に加えてくれてかまへんで!

それとな、ドラゴが剣や槍を大量に作って一緒に持ってきよるさかい、好きなように使ってや!

そや、アニキに割ってもろた岩盤あるやろ!

山程鉱石出てきたんや!

大漁やで!

だから、元帥!気にせんと使ったってや!

アニキ!ほら、行こうや!

あっ!リリィもおるやん!

リリィも飲みに行くで!

姫も来いや!飲まんでも、飯食うたらええねん!ほら、いくで!元帥は、忙しいんやろ!

暇なったら来いや!王さんも暇ならくるよう言うてや!

アニキ!さあさあ!」


俺とリリィと姫は、ドラス王に連れられ王都の酒場に行くのだった。


嵐が去ったかのような王城では、ライデル元帥が呟く。


「ドワーフの兵、二万。

それに、武器の提供。

ありがたい。

しかし、相変わらず賑やかだな。

ドラス王は、フミヤ様に任せておこう。」


元帥は、頼もしい助っ人に微笑んだのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日、小人族を連れてララとエルフ達を連れてアルとウルが戻ってきた。


王城の庭は、今小人族とエルフ達の仮設テントで、一杯になっていた。


そして、王城の一室に、俺、リリィ、姫、アル、ウル、ララが呼ばれた。


部屋には、ガーランド王、皇弟、ライデル元帥、ドラス王が居た。


ガーランド王が言う。


「皆、座るのじゃ。

帝国との一戦の最終打ち合わせじゃ。

では、元帥頼む。」


「はっ!

まず、明日より兵の移動を行う!

この地図を見てほしい。」


元帥が地図を開く。


皆、一斉に地図を囲む。


「我らは迎え撃つ側。できる限り王都から離れたところ、尚且つ地の利がある場所で陣を取りたい。被害を最小限に抑えたい。

そこでだ。

このガーランド平原の手前にある丘の上に陣を置く。

奴らは、王都に行くには必ずここを通るしかない。平原からこの丘までかなりの勾配がある。帝国の侵攻はここでスピードが落ちるのは明白。

ここで、足止めをする。

丘の上から遠距離攻撃で迎え撃つ。

ここで足止めし、平原での戦に持ち込むのだ。

そこからは、白兵戦となる。

その時に、帝国軍の後方約五万の兵が王国側へ寝返る運びとなっている。

そうですな!皇弟!」


「さよう!

私を支持する派閥の者達が寝返る。

王国の旗をその際掲げるよう指示している。」


(挟み込むということか!

なるほど。)


「私を支持する者の話だと、帝国の兵士は興奮剤を使っているとの話だ。

倍の力が出ると言われている。

油断は禁物だ。」


元帥が言う。

「この白兵戦、向こうが興奮剤を使用しているとなると、正直こちらが不利だ。

そこで、リリィ殿。

クーデターの時に出された、"ホーリーレイン"

をお願いしたい。」


リリィが口を開く。


「それは構わないですが、一つ懸念することが……。

あの時は、敵が向かってくる形でした。

なのであのホーリーレインを敵が自ら受けることになりましたが、ホーリーレイン自体そんな広範囲の物ではありません。

白兵戦となると、足は止まっていますよね。

出来る限り魔素を大量に取り入れて広範囲になるよう努力しますが、この前のような結果は期待しないでください。」


「ふむ。

少しでも相手を削れればよいのです。

それと、敵の動揺を誘えれば言うことなしです。

お願いできますか?」


「承知いたしました。」


「そして、この戦いは勇者を仕留めることが戦争を終わらすポイントとなります。

勇者が健在なうちは、帝国側のモチベーションは保たれるでしょう。

我ら王国は、兵も大事な民。

出来る限り被害を最小限に抑えたい。

フミヤ様。貴方様にかかっています。

勇者を出来るだけ早く討ち取り、この戦争を終わらせてください!」


元帥に続き、皇弟が言う。


「帝国の一般兵の殆どが戦争など望んでいない。しかし、上が望めばしたくない争いをしないといけない。

私からもフミヤ様に、お願いする。

勇者を討ち取り、この戦争を終わらせてほしい。

一般兵達にも家族が居る。

無事に家族の元へ帰らせてやりたい。

頼む。」


(わかった。出来るだけ早く終わらせる。

しかし、皇弟。

貴方は、覚悟はあるのか?

最終、皇帝をどうにかしないと何も変わらないんだぞ。)


「私は、戦争が終わった時点で帝城に支持者達と攻め込む。

兄をこの手で討つ。」


皇弟の覚悟が見て取れた。


この場にいる全ての者の表情が引き締まるそんな皇弟の覚悟を見たのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ルシア帝国軍が皇都を進軍を開始する。


冷めた表情で国民は進軍をみていた。


一般兵も冷めた表情で歩く。


一人、ニヤニヤしているのは勇者。

数の暴力で蹂躙してやろうと意気込んでいるのだった。


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