第39話 味方

ガーランド王国王都にある教会は、一気に慌ただしくなる。

通信魔道具で聖教国マリア聖教会からリリアンを名乗る女を取り押さえろとのこと。

聖騎士を投入しろとの物々しい連絡だ。

それに、王族が介入してこようが治外法権を盾に押し切れとのことだった。


教会前に聖騎士が整列する。


そして、神官達が馬車に乗る。


聖騎士の軍隊を先頭に神官の馬車が行く。


目指す場所は、ガーランド王国の王城。


そこに、リリアンを名乗る女が居るという。


王都の民達は、教会の見せるただならぬ雰囲気に何事なのかと不安を隠さなかったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その頃、フミヤは王と元帥に近々勇者がルシア帝国とともに攻めてくることを伝えていた。


「……う〜ん。

いよいよか。もう、避けようのないことなのじゃな。」


(すまない。俺が勇者と揉めたことが、火種となってしまったようだ。)


リリィが慌てて口を開く。


「そっそれは、違いますよ!

フミヤ様は私を守る為、皆を守る為に勇者と一戦を交えたのですから!」


セシル姫、アル、ウル、ララも頷く。


王が言う。


「フミヤ様。ルシア帝国とは、いずれそうなる運命だったのじゃ。

皇弟が皇帝をずっと諌めてくれていたのじゃ。

元々、帝国は軍事大国。戦争を仕掛けて領土を広げてきた国じゃ。

皇帝は、侵攻する以外の選択をもたぬ。

反対していた実の弟を毒殺しようとしてまで自分の意思を貫く男じゃ。

だから、フミヤ様が謝ることではない。

しかし、勇者が出張ってくるとなると、勇者はフミヤ様に相手してもらわんと国を守るどころか、大虐殺されてしまうわい。

勇者はフミヤ様に任せても良いかの。」


(ああ!勇者のことは任せてくれ。

もう、あいつの好き勝手にはさせないから!)


その時、宰相が慌てた様子でやってくる。


「陛下!教会の神官が聖騎士達を引き連れて、リリアン殿の引き渡しを要求しています。

治外法権を盾に、有無を言わせぬ言いようで埒があきません!」


リリィの表情が曇る。

俺は、リリィを抱き寄せ言う。


(王よ。俺が対応しよう。)


「おっおお。そうか。

フミヤ様が。

何故、リリアン殿を聖騎士まで駆り出して身柄を……。」


(教会は、聖女カシエラがスキルを失くしたことに危機感を持っているんだ。

教会の威厳?みたいなものにこだわっているんだ。

そこに、大聖女の癒しを使えるリリィの存在を聞きつけたんだろう。

リリィの身柄を抑え、教会の威厳を未来永劫続くように子を産ませ聖女を作ることを考えているんだ!

俺は、教会をぶっ潰すことも考えている。

人の道を語る教会が裏では、非人道的な動きをしているなんて教会なんか必要ないじゃないか!)


「フミヤ様は、聖教国ともやり合うと。

…………あいわかった。

これから、揉めるのであろう?

やるなら、徹底的にやるのじゃ。

聖騎士を引き連れてここまでやってきてるのじゃ。

民達も何事かと心配しておろう。

徹底的に叩き潰して、民達に教会の悪を明らかにするのじゃ。

そして、王国は教会を拒絶することを宣言するのじゃ!

前々から教会は治外法権を盾に、好き勝手しよったからな!

ワシも教会の奴らは気に食わんかったのじゃ!大聖女マリアンが亡くなってから、あまりにも酷すぎる!

ワシは、王国は!フミヤ様を支持するぞ!」


(頼もしいよ。王よ。

じゃあ、遠慮なく徹底的にやってくるよ!)


俺は、リリィを連れて部屋を出て行くのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


王城の塀の向こうで聖騎士と神官達が待ち構えていた。


俺とリリィは、その前に立つ。


(一体、リリィになんのようだ?!

聖騎士まで連れて、まるで攻めに来たようだな。

人の道を説く教会が、武力行使するのか?)


聖騎士と神官の後ろには、沢山の民が何事かと心配そうに見ていた。


一人の神官が口を開く。


「何、そこの女が逆らわず投降するなら武力をしめす必要もないのだ。

さあ、こっちはこい!」


(投降ってなんだよ?!

リリィは何も悪いことはしていないぞ!

悪人は、お前ら教会じゃねえか!

投降とか言っている輩に大事なリリィを渡す訳ねえだろ!)


「なんだ貴様は!

関係ないだろうが!

リリアン!聖教国で枢機卿がお待ちだ!

投降しろ!」


(関係ないだと?

少なくても、お前らよりも関係大ありなんだよ!

お前ら、都合良すぎるだろ!

散々、リリィを迫害して、大聖女マリアンが亡くなった途端、教会から放り出したんだろう!

それなのに、聖女カシエラが聖女として使いもんにならなくなったら、リリィかよ!

だいたい、お前らがリリィに対して偉そうに物を言えるのがおかしいだろうが!

たかだか、神官ごときで聖リリアン・ドロテアにその口の利き方自体間違ってんだよ!

そんな奴らに、なんでリリィを渡さないといけないんだ!)


「うぐぐぐぐっ。

埒があかん!聖騎士!

取り押さえろ!あの男は殺せ!」


(おいおい!良いのか?沢山の民が見てるのに。

お前らの本性を見せて。

まあ、いいわ。かかってこいよ!

ぶちのめしてやるからよ。)


聖騎士がジワリジワリと距離を詰めてくる。


俺は、リリィを後ろに行かせて"剛力""鉄壁""魔素纏い"を発動する。


聖騎士が大剣を振るってくるのを俺は、腕で受け止める。"魔素纏い"でしっかり防御できるじゃないか。


そして、大剣に拳をぶつけて、大剣を砕く。


そして、聖騎士を持ち上げ、聖騎士達に投げ飛ばす。


聖騎士が後退りするが、俺はそれをさせない。


ツッコミ殴り飛ばしていく。


あっという間に聖騎士は地面に這いつくばる。


神官達は逃げだそうとする。

俺は神官が乗ってきた馬車をひっくり返す。


神官達は、悲壮な顔で走って逃げようとするが、そこにはガーランド王国の民達が壁となって行く手を阻んでいた。


すると、塀の上から王が言う。


「愛するガーランド王国の民達よ!

もう、教会の横暴にはうんざりなのじゃ。

今もガーランド王国の救世主のリリィ殿の自由を奪おうとした。

ワシは、もうガーランド王国に教会は必要ないと考えるが皆はどうかの?」


「「「「「「うぉぉぉ〜!」」」」」

王の言葉に民達が反応する。


神官が叫ぶ。


「王よ!こっこれは神に対する冒涜ですぞ!」


「ほう!教会が神を語るか。

冒涜というなら、貴様らがやっていることは神に対して正しいことですと、言い切れるのか!

聖マリアン・ドロテアは生前ワシに、こう言っていた。

神は教会にあらず、神は一人一人の心の中にあると!教会に崇めろと言われることでは無いと!

大聖女マリアンは、偉大な人じゃった。

その娘、リリアン殿も又、素晴らしい女性じゃ。

皆も知っておろう?セシルの目が癒されたことを!

教会がリリアン殿の敵となるならば、我らガーランド王国は、リリアン殿の味方となろうぞ!」


「「「「「「うぉぉぉぉ〜」」」」」」


民達が王の言葉に答える。


そして、民達が神官達に石を投げつける。


神官達は民の間を必死に逃げていくのだった。


俺はリリィを抱き寄せる。


「……王国が私の味方……」


そう言って涙を流すリリィ。


(嬉しいな。良かったな。リリィ。

王!カッコいいな!)


「ふふふっ。フミヤ様と出会ってから、素敵な出会いばかりです。

ありがとう。フミヤ様。」


そう言ってリリィは、微笑んだ。


俺はこの笑顔を守り抜くんだと改めて気合いを入れるのだった。


その後、民達によって王都の教会は潰された。

それが、王国のそれぞれの町に伝わっていき、王国から教会が消えるのだった。


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