第38話 あま〜い
俺は、女神に戻された。
こちらの世界では夜中のようだ。
すぐ近くに人形が見える。
なぜなら、リリィが人形にしがみついて寝ているからだ。
人形、硬いのに……
俺は、人形に憑依し、受肉する。
リリィの体温を感じる。
俺は、裸だ。
服が血に染まっていたからな。
やはり、一度憑依して戻れば痛みは綺麗さっぱりなくなっている。
切り傷一つない。
手を見る。
拳も同様に傷一つない。
後から思えば、あの時、魔素纏いを使っていれば良かったと少し反省。
しかし、結果オーライかな。
オリハルコンの拳が剥き出しになったから、怪僧ゲルをボコれたと言っていいもんな。
魔素纏いは、果たしてオリハルコン並の頑丈性はあるのかな。
それか女神が言うように、拳士としての熟練度をあげる、剣士としての熟練度をあげたほうが良いのか。
色々考えることがあるな。
今まで、スキルで押し切ってきたけど、それで倒せない敵が今後、どんどん出てくるのだろうな。
勇者のことを雑魚って女神が言ってたもんな。
そんなことを思いながら、自然と又眠りについたのだった。
何時間が経ったのか?いきなり、ぎゅっと締め付けられた。
それで目が覚める。
(う〜ん。苦しいよ。リリィ。)
「もう!心配したんですからね!
魔石に呼びかけても、答えてくれないんですから!」
リリィがプンプン怒りながら、抱きしめてくる。
俺は、優しくキスをする。
それから、求め合うように激しいキスに……
夜が明ける。朝日が窓から差し込む中、二人は愛し合うのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
勇者は、ルシア帝国皇帝と会っていた。
「皇帝!ガーランド王国を攻めるぞ!
俺が指揮をとる!
前から、言ってたろ!
その通り、ガーランド王国をとってやる!
兵を用意をしろ!
本気で用意しろ!
ガーランド王国にも、なかなか強い奴がいることがわかった。
俺と同等だ!
今のうちに数の暴力で叩きつぶす!」
皇帝は、ニヤリとし言う。
「勇者シルバよ!
その言葉、待ち侘びたぞ!
全力で兵を用意しよう!
20万だ!
ガーランド王国などエルフの戦士がいた所で、精々5万くらいだろう!
数でねじ伏せるのだ!」
「ああ!
それと、兵士一人一人に興奮剤を投与するのを忘れるなよ!
倍の力を増幅するのだからな!」
「おいおい!
そこまでする必要があるのか?
勇者シルバ、えらく慎重ではないか!?
どうしたのだ?」
「言ったろ!
油断ならない奴がいるんだ!
怪僧ゲルがそいつにやられて、今使いもんにならねえ。
念には念だ。
いざというときには、人壁になってもらわないとな!」
「怪僧ゲルがか……
わかった。興奮剤を用意させよう。」
「皇帝!頼むぞ!
奴は、早いとこ潰しておく必要があるからな!」
ルシア帝国は、この日を境にガーランド王国への戦争準備に入ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
聖教国では、ガーランド王国リースの町に送り込んだ神官が枢機卿に報告していた。
「大聖女マリアンの娘、聖リリアン・ドロテアは、すでにリースの町を離れていました。
リースの町の教会が、大聖女マリアンの死後すぐに、掘り出したとのことです。
行方を探りましたが、奴隷商の男に捕まったのは情報を得ましたが、その男もチコリの町の高級宿で死んでいました。
リリアンの足取りは、そこで途絶えています。」
「………全く!リースの教会も勝手なことをしおって!
足取りが途絶えた?
目撃情報もないのか?」
「チコリの町からの足取りは掴めませんでした。穢れた血なので、白髪に赤の目。
目立つはずなのですが……」
その時、扉をノックし入ってきた神官が枢機卿に言う。
「ルシア帝国の教会から報告がありました。
ルシア帝国の皇帝の弟に、皇帝が毒を盛った件は、ご存知だと思いますが、その毒を浄化し、いたんだ臓器まで治療した者が現れたとのことであります。
誠かどうか怪しいのですが、"大聖女の癒し"を行使したとか。
それも、大聖女マリアンの娘、聖リリアン・ドロテアを名乗ったとか。」
「なっなんだと!
ルシア帝国にいるのか!
穢れた血リリアンは!
すぐに、帝国の教会に連絡し、リリアンを取り押さえろ!」
「そっそれが…もう帝国には居ないとのこと。
皇弟、皇弟妃、娘、使用人、私兵ともども、そのリリアンの連れのスキルで一瞬のうちに消えたと。恐らく、皇弟妃の故郷であるガーランド王国に行ったのではないかと。
……これも又嘘のような話なのですが、リリアンの連れが空間転移とかいうスキルを使って、消えたとか……
それと、リリアンの見た目は、人族だったと。リリアンではない可能性もあると考えます。」
「………この際、リリアンでなくとも構わん!
大聖女の癒しが使える者なら利用価値はある!
ガーランド王国の教会に圧力を掛けて、身柄を拘束するよう指示しろ!
王族が出張ろうと関係ない!
治外法権を主張し、王国に介入をさせるな!
聖騎士を投入することも許可する!
すぐにだ!」
「………枢機卿。
もう一つご報告が。ルシア帝国がガーランド王国に対して戦争を仕掛ける話も情報として上がっています。
勇者シルバが指揮を取るとのこと。
そう遠くない時期に動くとのことです。」
「何?!
また面倒な!
その戦争に紛れてリリアンを名乗る者の行方がわからなくなる可能性もあるではないか!
尚更、ルシア帝国が動く前にリリアンを名乗る者を取り押さえねばならぬ!
すぐに、動くように指示しろ!
聖騎士も投入だ!」
「はっ!承知いたしました。」
ルシア帝国と聖教国。
フミヤとリリィの安らぎの日は、すぐにかき消されようとしていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「フミヤ様!起きたのです?!
まずは、ララはお礼を言うのです!
怪僧ゲルから助けてくれてありがとうなのです!」
(ララさん、腕大丈夫なんだな!
良かった!
改めて、リリィは、すげぇな。
スパッと切れていたよね。腕。
それをくっつけて、傷痕も残ってないなんて!凄すぎるだろ!流石リリィ!)
「ふふふっ。フミヤ様〜。
そんなに褒めてもなにもでませんよ。」
(純粋に凄いなって、思ってんだよ。
俺。リリィは本当に凄いよ。)
「甘い。あま〜い空気が流れてると僕思うんだ。アル、これは僕思うんだけど、リリィさんとフミヤ様、イチャついてるということでいいんだよね。」
「ウル、今頃何言っているんですか。
朝、お二人が部屋から出て来た時のリリィさんの火照ったような肌。
きっと、あま〜いことがあったのですわ。」
「あま〜いことですか〜?
それは〜どんな〜ことですの〜?
アル〜私にもわかるように〜教えてくださいませ〜。」
「姫、それはですね…………」
その時、ライデル元帥が言う。
「オッホン!アル!
姫には、まだ早い。
教えんでよろしい!」
「何故ですの〜!?
叔父様〜!
何故私だけ教えて貰えないのです〜
ララさん〜ララさんはわかるのです?」
「姫、ララは姫よりお姉さんなのですよ!
わかってるのです!
そうですね!
マッサージなのです!
女性は、マッサージすると綺麗になるのです!」
「マッサージですか〜!
フミヤ様は〜マッサージもお上手なのですね〜
是非〜私も〜して頂きたいですわ〜。
そうかそうかそうなのですね〜
リリィさんも火照るくらい〜気持ち良かったのですね〜」
「だっダメですよ!姫でも、ダメですから!
フミヤ様!わかってます?!
ダメですよ!フミヤ様!
拗ねますからね!」
(リリィ、あのね、姫は勘違いしてるんだよ?わかってる?)
「私のフミヤ様なんだから!」
なんか、怒られる俺。
でも、なんか悪くない気持ちなんだよな。
幸せだと思い、それを噛み締めるフミヤだった。
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