第37話 夢の中
実質フミヤにやられて、逃げた形の勇者シルバと怪僧ゲル。
勇者シルバが使ったのは、転移ではなく瞬間移動だった。
要するに、フミヤ達の視界に入らないように物陰に隠れた形だ。
勇者シルバは、ボコボコにやられた怪僧ゲルを見ながら呟く。
「あの野郎!異常なほどの力だ……
最後のあれは、なんなんだ……俺の鋼線剣をぶっち切りやがった。
普通はあんな芸当できるはずがねえ。
普通は、骨まで切れるんだ……
それに、ゲルをここまでにするとは……」
「いっいてぇよ……痛え、シルバ。」
「痛えのは当たり前だ!馬鹿!
あばらの骨は突き出てるし、腕は曲がってはいけない方向に曲がってるし、顎は砕けている。ポーションぶっかけてやった。
当分痛みはあるだろうが、いつか痛みはなくなる。我慢しろ!
俺だって左目と○ンポと○玉を潰された時は、痛みが取れるまで時間がかかったんだ。
カシエラの馬鹿がスキルを失くしちまうから、即効性のあるヒールも聖女の癒しもねえ。我慢しろ!」
「あっアイツら……どっどうすんだよ……?
女達は、……大したことない感じだったが……あの男……厄介。」
「ああ!鬱陶しい!お前、もっとシャキシャキ喋れねえのかよ!」
「………むっ無理……言うな………顎が……砕けてる。………口が……動かん」
「口が動かないなんて、お前、なんの取り柄もねえじゃねえか!
"言葉の暴力"が、お前の取り柄なのに!
クソっ!取り敢えず帝国に引くぞ!
このまま行っても、あの男を始末する前に、こっちまでヤバい!
数で勝負だ!
皇帝に、ガーランド王国との戦争を吹っかけてやる。
俺が指揮するといえば、喜んで兵を出すだろ!
帰るぞ!ルシア帝国に!」
「………しっシルバ………おっ俺は動けん………運んで………くれ。」
「くっクソが!
ああ!面倒だ!」
「………そっそう言う……なよ……おっお前が………○ンポと○玉を潰された……時………運んで………やった……だろ。」
「チっ!クソが!クソったれが!」
「………くっクソは垂れて……ねえはず……だ。」
「ああ!もう五月蝿い!黙っとけ!」
勇者シルバは、怪僧ゲルを担いでガーランド王国を後にするのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ガーランド王国王城では、リリィの治療を受けたララが、意識を取り戻した。
「………うっ腕が……くっついているのです!
うっ動くのです。」
腕を切り落とされたララは、リリィの大聖女の癒しによって、腕が元通りになっていた。
何回も何回も動かすララ。
終いには、パンチまで繰り出す。
しかし、パンチを出した後、フラッと倒れそうになる。
セシル姫がララをベッドに寝かせながら言う。
「ララさん〜無理はダメです〜
かなりの血を流したのです〜
二、三日は安静ですよ〜」
「あの男達はどうしたのです?
フミヤ様が、やったのです?」
「あの後〜フミヤ様が〜怪僧ゲルを殴り倒したのですが、勇者シルバが怪僧ゲルを連れて一瞬で〜逃げてしまいました。」
「あの男を!フミヤ様は殴り倒したのです?
すっ凄いのです!
ララはパンチを打っても手応えすらなかったのです。
やっぱりフミヤ様は強いのです!」
「………けれど〜その代償も〜。
あの後、フミヤ様も〜意識が飛びそうな感じで〜リリィさんの魔石ペンダントに憑依されて〜………今リリィさんが魔石に話し掛けているのですが………返事が無い状態です。」
その時、リリィがララの元にくる。
「良かった!ララさん!
意識戻ったのですね!」
アルとウルも一瞬にやってきた。
ウルが言う。
「ララさん!ごめんなさい。僕、怪僧ゲルが怖くて……最初動けなかった。ごめんなさい。」
「それを言うなら私もです。ララさんごめんなさい。」
アルとウルがララに頭を下げる。
「何言ってるです!
ウルは、ララが腕切られて踏み潰されそうな時、盾で守ってくれたのです!
アルは、ララを抱き抱えて逃げてくれたのです!ありがとうなのです!
リリィさんも!腕を治してくれてありがとうなのです!姫も看病ありがとうなのです。皆んなありがとうなのです!
でも、フミヤ様にも助けてくれてありがとう言いたいのです!
まだお話できないのです?」
リリィの表情が曇る。
「そうですね。確かに魔石ペンダントに、いらっしゃるのです。
その感覚はわかるのです。
眠られているのか……話しかけても、返事がないのです。」
セシル姫がリリィを元気づけるよう努めて明るく言う。
「リリィさん〜大丈夫ですよ〜
フミヤ様は〜魔石ペンダントに憑依すれば〜自分の怪我は大丈夫だと言って行かれました。
痛みで気を失う寸前での憑依でしたから〜
きっと、眠られているのですよ。」
ウルが言う。
「受肉したときには痛覚があるけれど
それを解除したんだから、僕も大丈夫だと思う!リリィさん!元気出して!」
「そうですね!フミヤ様ですもの。大丈夫ですね!すぐに、よ〜く寝た〜!とか言って戻られますね!」
皆、頷き、誰もがフミヤが戻るのを待っていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は、深い眠りに落ちていた。
これは、夢なのか?
真っ白な世界で俺は寝ていた。
いや違う、寝ている俺を俺が見ていた。
すると、寝ている俺の側に光輝く女性がやってくる。
そして、寝ている俺に話しかける。
【霧島フミヤ………貴方は、先程18年の闘病の末18歳という若さで人生を終えました。
しかし、貴方は母親から溢れるほどの愛を注がれました。
よって、転生をする機会を得ました。
……………しかし実は、貴方に救っていただきたい世界があるのです。
そこは、弱肉強食の世界。
力ある者は、弱者を見下し、男は女を欲望を満たすための道具と考える者達が蔓延る世界。力の魅力に囚われた者達ほどこの傾向にあるようです。
このような世界にしてしまったのは…………
貴方が活躍すれば、必ず貴方の前に立ちはだかるでしょう。
その者は、この世界の破壊を考えています。
貴方と貴方が繋がる仲間とともにこの世界を救ってください。
貴方は、幽体のままこの世界に送り込みます。
これは、私からの贈り物と考えてください。
幽体のまま過ごすも良し、何かに憑依するも良し。
貴方は、この世界で永遠を生きるです。
18年の闘病で思い残し、したかったことをこの世界で叶えてください。
貴方は、ベッドでいつも英雄譚を読んでいましたね。
貴方が英雄となるのです。
この世界を破壊しようとしている者を打ち破ってください。】
女性は、言い終わると寝ている俺に手を翳す。
すると、俺が居なくなった。
救う世界に送り込んだのだろう。
なんだこれは?!
寝てる俺に語りかけて、一方的に送り込んだということだろう。
あの女性は、いわゆる女神か?
女神に一言言いたいわ!
寝てる俺に語りかけても、俺自身なんも聞いていないのですけどね!
そう思った時、目の前で寝ていた俺に語りかけていた女神らしき女性がこちらを向いて、こちらにやってくる。
【だから、今これを見せているんでしょ!
全く!寝てる貴方が悪いのよ!
女神が話しかけたら、目を覚ますものよ!
プンプン。】
(なんかごめん。)
【わかればいいのよ!
まあ、頑張っては、いるようね。
オリハルコンで人形を作ってそれに憑依し、受肉するとは、考えたわね。
褒めてあげるわ。】
(なんか、凄い上からだな。)
【当たり前じゃない。私女神なんだから。】
(さっきの語っていたキャラと変わってんだけど。)
【やだぁ!あれは、イメージよ!イメージ!女神っぽいでしょ。あの語り方。
こっちが素なのよ!
あのキャラのはずないじゃない!疲れるわ!
貴方もこっちのほうが喋りやすいでしょうに。】
(まあ、確かに。
で、あれを伝えたくて今のこの状況?)
【そうよ。なんか問題でも?】
(いや、肝心なことなんも言ってないなぁと思って。世界を破壊しようとしてるのが誰なのか。これ肝心なことじゃないの?)
【それは、貴方自身が言ってたじゃない。
自分自身の肌で感じると、自分で敵を見極めると。】
(………俺達の行動を見てんのかよ。
えっ!………もっもしかして、リリィとの行為も見てたりするわけ?)
【ああ、あれね!なかなか、甘いセ○クスだったわね。
私的には、もっとこう激しいやつが好みなんだけど………
あっそうそう!貴方、ここまでなかなか女性の引きは良いわ。
1番に出会ったのが聖リリアン・ドロテアとは!それも、もう、することした仲だし。
セシル・フォン・ガーランド、アル、ウル、ララも良い出会いよ。】
(やっぱり見てるんだ。
それは、見るなよな!恥ずかしい!
………で、世界を破壊しようとしてる奴って勇者?なの?)
【勇者?そんなはずないでしょう!
あんなのザコじゃないの!
勇者と言えば、あっ!あれも良かったわね!
あと少しで寝取られイベント!
ねえ!ねえ!ドキドキしたわよ!ねえ!】
(なあ!アンタが操作してるんじゃないだろうな!?)
【貴方、馬鹿なの?
その世界に私が干渉できるなら、貴方に世界を救うお願いなんかしないわよ!
私が出来るのは見るだけ!
本当に!プンプン!】
(そっそうか。
勇者がザコか……
その勇者に、かなり痛めつけられたんだけどな。)
【あれは、貴方の戦い方が悪いからよ!
というか、未熟?!
剣ももっと訓練しなさい!
スキルに頼りすぎるのは良くないわ。
剣にしても拳にしても、習熟度よ!
それプラスでスキルと考えなさい!
折角良い武器持ってんだから!
わかったぁ?!】
(はっはい。)
【それとね、これだけは教えといてあげるわ。勇者シルバは、ルシア帝国の皇帝にガーランド王国への戦争を打診するわよ。
気をつけなさい。
それと、マリア教会が聖リリアン・ドルテアを奪おうと動きを恐らく見せるわ。
皇弟を救った時にいた神官達が教会に戻り、聖教国の枢機卿の耳に入るのも時間の問題よ。
リリィは、絶対!教会に渡してはダメよ!
リリィが不幸になるわ!
教会に縛られ、軟禁され、都合の良いように使われて、種付けされる!
貴方も許せないでしょ!そんなこと!】
(ルシア帝国がガーランド王国を狙っているのは、知ってる。
教会はそんなに腐ってんのか?!
種付け?ふざけるな!家畜やペットじゃないんだぞ!
…………もしかして、リリィの母親大聖女マリアンもそうなのか?
それで、リリィができた?!)
【それは、違うわ。
マリアンとゾルドは純愛よ。
ただ、教会はそれを許さなかった。
二人は、教会によって別れさせられたのよ。
その時には、マリアンはゾルドの子、リリィを身籠もっていたというのに。
マリアンは、リリィ、お腹の子を教会から必死に守り続け、産んだのよ。
生まれてからも、リリィは教会に迫害され続けて……それをマリアンは守る日々。
マリアンの生涯はリリィを守る日々で終わってしまったわ。
もう、あんな悲しみはリリィには必要ない!
貴方が守るのよ!
いつか、ゾルドにも会わせてあげて!】
(何があっても守る!
……ゾルドさん?父親は、存命なのか?)
【当たり前じゃない!魔族よ!
寿命も人族と違って1000年は生きるわ!
リリィも何事もなければ寿命は長いわよ!
貴方がリリィとともに幸せになりたいなら、
意地でも守りなさい!
あの子には、本当に生き辛い世界なのよ!
本当に!】
(意地でも、守る!)
【良し!いいわ!
あっ!それと、リリィだけじゃなく、セシルも頼むわね。あの子も、苦労したのよ!
あの子も、ハーフエルフだから、人族より寿命長いし!
アルとウルもエルフで寿命長いし、ララも小人族でエルフほどではないけど、寿命長いしね。】
(その頼むっていうのは、どう言う意味なんだ?)
【貴方、そんなこと察しなさいよ!
まあ、取り敢えず貴方は、肌で感じあの子達に悪意を向ける奴らを叩きのめしなさい!
すれば、いつか悪の根源に辿り着くから。
その頃には、貴方もそいつに対抗できる力を付けているだろうしね。】
(………あんた、女神でいいんだよな。
なんか、リリィ、姫、アル、ウル、ララへの愛が凄く感じるのだが……)
【そんなの決まってんじゃない!
ずっと、見てるんだもの!情は湧くわよ!
ウダウダ言ってないでわかったら、すぐ戻りなさい!
女の子達が心配してるわ!】
(なっなんだよ!呼んだのはアンタだろうが!本当、メチャクチャな女神様だな。
アンタ、名前は?)
そう言った瞬間、目の前が白の景色から、真っ暗になったのだった。
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