第36話 鉢合わせ

次の日、次の精霊に会いに行く為、消耗品の買い出しにメンバーでガーランド王国王都を歩く俺達。


その時だった。

大きな声で叫ぶ男がいた。


『"こんなところにいやがった!

ふざけやがって!』


ルシア帝国帝都で、リリィに魅了を掛けて悪さをしようとした男だった。


その男の横には、エルフと思われる男も居た。


アルとウルがそのエルフの男を見て反応する。


「えっ?嘘……。」


アルは、黙ってしまう。


「あれは、怪僧ゲルだよね。僕見たことあるもん。………ということは、あのチャラ男………勇者だったの……」


ウルの言葉を聞いた俺。

瞬時に構える。


目の前に既に奴は居た。


吹き飛ぶ俺。


なんとか、空中で体勢を整え着地と同時に、"疾駆""剛力"を発動し、一瞬で勇者シルバの間合いに入り、右拳で顔面を狙って殴りかかる。

勇者シルバは、腕を顔の前でクロスしその拳を防御した。

しかし、"剛力"の乗ったパンチは、勇者シルバを吹き飛ばす。


手応えは十分だったが、何か鉄を殴ったかのような感触だった。


吹き飛んだ勇者シルバは、こちらを睨みながら両腕をしきりに振っている。


「くっクソが!生意気に、やりやがる!

腕が痺れたじゃねえか!

顔面だったら、頭が砕けてたんじゃねえのか!

貴様、何者だ?!

勇者の俺にビビりもせずに殴り返してきやがって!」


(仕掛けてきたのは、お前だろうが!)


「当たり前だろうが!

貴様が、俺の○ンポと○玉を潰したんだろうが!左目は、その横の女だ!

この怒りは、貴様を殺すだけでは足りねえ。

その周りに居る女全てを犯してやらなきゃ!

おさまらねえ!」


(ふん!怒ってんのはお前だけじゃねえんだよ!リリィに手を出そうとしやがって!

絶対に許さん!

てか、お前俺のメンバーを全て犯すって?!

○ンポと○玉治してからいいやがれ!

馬鹿が!

不能やろ〜が!)


うちの女性陣から笑い声が。


「くっクソが!

今俺が1番苛立つことを!

こっ殺してやる!絶対!殺す!」


「シルバ!俺もやろうか!」


「うるせえ!ゲル!

俺が、この手で殺してやるんだ!

もうブチギレた。

お前は手を出すなよ!」


勇者シルバは、そう言って剣を抜いて、一気に来る。


(皆んなは、離れていろ!)


俺は、"王剣""鉄壁"を追加で発動する。


しかし勇者シルバの剣筋が見えない。


ヒュンヒュン音はするのに、見えない。


更に、"鉄壁"を発動しているのに斬られている。


俺は一度距離を取る。


俺の頬から流れる血。頬だけではなかった。

腕も足からも流れる血。


なんだ?これは、勇者の剣筋が見えないだと!?


俺は瞬時に思考する。

明らかにおかしい。剣の柄は見えている。

刃の部分が見えないのだ。


「なんて硬い骨してやがんだ!

普通ならもう、腕も足もなくなってるはずなのに!くっクソが!」


俺は【疾風迅雷】【電光石火】を追加発動する。


俺は、一歩踏み出す。

その瞬間雷と風を纏いながら、たった一歩で勇者を通り過ぎてしまった。

俺の纏っている風と雷で勇者は、多少のダメージが入ったようだ。


「いっ痛え!風でキレやがった!それとこの痺れは雷か!

クソ鬱陶しい!動きも見えなかったぞ!

クソクソ!」


俺は、勇者の周りを縦横無尽に駆け抜ける。

勇者の顔、腕、体、足が血に染まっていく。


「くっ!なんなんだコイツは!」


「シルバ!一旦ひくか?

それとも加勢するか?」


「うっうるせえ!

俺一人で殺すって言ってんだろうが!

お前は、暇なら女達を捕まえておけ!」


怪僧ゲルが、リリィ達に襲いかかるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


リリィ視点



怪僧ゲルが襲いかかってくる。


セシル姫が"射速"を発動。

怪僧ゲルに矢の雨を降らせる。


「……【ハッ!】」


セシル姫の放った矢が、怪僧ゲルの【ハッ!】という言葉でポトポトポトと地面に落ちていく。


アルとウルは震えて動けない。


ウルが言う。


「言葉が、言葉が武器なんだよ。

僕ら、怪僧ゲルの話は長老から聞いているんだ。言葉の化け物だと。」


ララが"部分硬化"と"拳速"を発動し、怪僧ゲルの懐に入り込み、殴りかかる。


「……【鋼体!】」


" キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン"


ララが殴った後、金属音が響く。


怪僧ゲルは、唖然としているララの腕を掴み、持ち上げる。


リリィが"剣速"を発動し、ララを掴んでいるゲルの腕を聖剣ホワイトローズを振り下ろす。


" キィィィィィィィィィィィィィィィィィィン"


同じく金属音が響く。


「ふむ。鬱陶しいな。

一人ずつ動けんようにするか。」


怪僧ゲルは、ララの右腕に向かって一言。


「……【切り離せ!】」


「「キャアァァァァァァァァァァァァ」」

ララの悲鳴と血が降りしきる。


ララの右肩から腕が切断されてしまったのだ。


ララは痛みで、のたうつ。


しかし、ララの目は怪僧ゲルを睨みつけている。

小さな体で、右肩から血を吹き出しながら、まだ抵抗しようと必死に立ちあがろうとしている。


そんなララを嘲笑うかのように、怪僧ゲルは、蟻でも踏み潰すように足を振り上げた。


しかし、それを止めたのはウルの盾だった。

そして、アルがララを抱き抱え、右腕を拾い距離を取る。

リリィが駆けつけ治療を開始する。


怪僧ゲルは、受け止めたウルの盾をそのまま構わず踏み潰そうとしていた。


ウルは必死に堪えている。


体が重圧で震えていたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


フミヤ視点


「うっうるせえ!

俺一人で殺すって言ってんだろうが!

お前は、暇なら女達を捕まえておけ!」


怪僧ゲルが、リリィ達のほうへ歩いていく。


怪僧ゲルを止める!


そう思い動こうした時、俺の体に何かが巻きつく。


「貴様は、いかせねえ!

俺が殺すっていってるだろうがよ!

このまま、締め付けてスライスにしてやる。

ハハハッ!」


巻きついていたのは、勇者シルバの剣だった。


剣というのか?糸のような鋼線だった。

剣筋が見えないはずだ。


どんどん締め付けられる。

体に食い込んでいき、血が吹き出る。


痛覚はある。途轍もなく痛い。

痛みで歯を食いしばる。


「ハハハッ!血が吹き出してるぜ!

しかし、頑丈な骨してやがる。

おっと!お前、こんな状況でも女達が気になるのかよ!

そんな余裕はねえだろ?!

お前!もう死ぬんだぜ!」


ララの悲鳴が響く。

俺は、ララの右腕が切断されたのを見てしまった。

瞬間、時が止まったかのような感覚に陥る。

ララの小さな体が地面に落ちる。右腕が遅れて落ちる。

ララから吹き出る血。


体中が熱くなる。頭も熱くなる。

ドス黒い感情が湧き上がる。

一気に怒りが沸点を超えたのだ!

自然に"憤怒"発動。


(殺す!殺してやる!)


俺は巻きついている鋼線を構わず腕を両サイドに広げるように、ブチギッたのだ。

力が湧き上がる。

そして、ウルが盾で抑えている怪僧ゲルに一瞬で寄る。

魔剣ブラックローズを抜き怪僧ゲルに叩きつける。


甲高い金属音が響き、斬れない。


俺は、魔剣ブラックローズを投げ捨てる。


怪僧ゲルの顔面を拳で殴りつける。

途轍もないパワーで殴りつけた為、拳の肉が飛ぶ。

オリハルコンで加工された骨が飛び出る。

構わず、顎を殴る。

すると、怪僧ゲルの顎が砕けたのだ。

今まで、俺自身の肉が相手にとって、グローブの役目になっていたようだ。

オリハルコンで直に殴り付けると怪僧ゲルも砕くことができるのだ。


怪僧ゲルは顎が砕けたので言葉を吐けない。


(殺す!殺す!殺してやる!オラ!オラ!オラ!)


俺は、腕、ボディにも拳を打ち込んだ。

腕は曲がってはいけない方向に曲がり、ボディは、骨が折れ、皮膚を突き破り骨が出ていた。

怪僧ゲルは、もう半分気絶している。棒立ちだ。


顔面に思いっきり、打ち込もうとした時

勇者シルバがやってきて、怪僧ゲルの体に触れたと思うと、一瞬にして姿を消したのだ。


俺は、猛烈な痛みで我にかえる。


拳に広がる激痛。

拳は肉が削ぎ落ち骨が丸見え。

痛みで拳が痙攣していた。

そして、体中から噴き出す血。

あの勇者の剣を強引にぶちぎった故の代償。


俺はヨロヨロと、ララを治療しているリリィ達の元へと行く。


(ララさんの腕は?なっ治りそうなのか?)


セシル姫が答える。

「ふっフミヤ様!大丈夫ですか!

ララさんは、今〜リリィさんが大聖女の癒しで治療中です。時間が〜かかりそうです!

フミヤ様の治療もしないと。」


(俺は、一旦リリィの魔石ペンダントに行かせて貰う………多分それで痛みは無くなるはずなんだ。人形を頼んでいいか。)


「フミヤ様〜大丈夫ですか?

人形は任せてくださいませ。

責任を持って〜管理いたしますわ。」


俺は、意識を失いそうになるのを必死にたえて、魔石ペンダントに憑依したのだった。


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