第33話 守り手
アッソ火山に訪れて2日目。
未だに精霊カッカ様と会えずにいた。
「本当に〜どこに〜いらっしゃるのかしら〜。とうとう火山の反対側までやってきましたわ〜。
もしかして、もうすれ違っているかも〜。
私達が会うに等しくないと〜判断されていたとしたら〜。」
セシル姫が、すこし泣き言を言ったのだ。
(姫、疲れたか?
まあ、火山を一周して会って貰えないなら諦めるしかないよ。
もう少し頑張ろう!)
「すみません……少し弱気になっておりました〜大丈夫です!頑張りますから〜!」
女性陣が姫に向かって笑顔で頑張ろう!と声を掛けている。
多分すれ違ってはいない。
俺には見えるはずだからな。
精霊イシス様の時も俺には見えたから。
リリィ達には見えなかったが。
姫は、魔眼を使えばイシス様を見れたようだけど。
何かを守っているのなら、それらしいものがあるはずなんだが、今の所そういった物は見当たらない。
アッソ火山そのものを守っているのだろうか?
そう考えている時、アッソ火山の山肌に不自然に突き出た岩が目に入る。
そして、その岩の上に全身が炎のような女性が立っていた。
(いた!あの突き出た岩の上にいらっしゃるよ!)
俺の言葉にリリィが答える。
「えっ?見えませんわ。岩が突き出たところですよね。
う〜ん。精霊イシス様も私達には見えなかったから、見えなくて当たり前ですね。」
「あっ。本当ですわ〜。魔眼を使えば見えましたわ〜手を振られています。」
セシル姫の言葉で、女性陣が湧き上がる。
俺の言葉だけでは信じないのかよ。
少し拗ねる俺。
リリィがそんな俺を見て、微笑む。
俺達は、岩の突き出た所まで登るのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
岩の突き出たところまで、やっとのことで辿り着いた俺達を、精霊カッカ様は笑顔で迎えてくれた。
【精霊イシスから、念話で話を聞きました。
いずれ、フミヤ様の冒険者パーティが訪れるだろうと。
フミヤ様で間違いないですね。】
(俺がフミヤだ。精霊カッカ様ですね。
イシス様から?イシス様には、カッカ様に会いに行くのは言ってないのだけど?)
【強くなろうとする者、スキルを得たいと思うもの。
精霊からスキルを得ようと考える者達が、訪れるのが守り手の住処。
イシスはその辺りを予測したのでしょう。】
(守り手の住処?
イシス様は世界樹アダムの守り手。
では、カッカ様は……アッソ火山?)
【間違いではありません。
世界樹アダムが枯れると、この大陸が沈むのはイシスから聞きましたね。
アッソ火山のマグマ、溶岩は海に流れ、その大陸の基盤となるもの。
アッソ火山が活火山であるためにアッソ火山には、神聖竜チーロン様がおられます。
私は、神聖竜チーロン様の守り手。
イシスから聞いた通りです。
貴方は、私達と同族のように感じます。
貴方に問います。
貴方はスキルを得て、力をどう使う?】
(力をどう使うか………。
ハッキリいって、今まで大事な人を守る為に強くならないとダメだと思ってきた。
この世界は、とても暴力的だ。
特に力のある者、力のある男達は女性を凌辱することしか考えていない。
それに、差別的思考も強い。
そんな者達から大事な人を守りたいと思っている。
今は、仲間も増えた。
仲間一人一人に家族もいる。
仲間が大切にしている国、里、集落がある
それを含めて守りたいと考えている。
その為には、力が必要と考えた。
守れる力をと。
彼女達も自分で守れる力を欲してここにやってきた。)
【貴方も、守り手なのですね。
守る為に力を欲する。
良い答えです。
イシスが真の勇者と見込むのも納得しました。
ふふふっ。そちらには大聖女もいますね。
拳聖、天弓士、王家の盾士、王家の支援魔法士。
役者は揃っていますね。
貴方達なら守れるかもしれません。】
精霊カッカ様はそう言うと、体の炎を強めた。
そして、炎の玉を俺達の体に入れたのだった。
スキルが流れ込んでくる。
【活火激発】
特級スキルだ。
女性陣もスキルを得たようだ。
【フミヤ様は、もうすでに沢山のスキルを有しています。
普通スキルを与えても意味がないので特級を一つ。
女性の方々は今必要とする普通スキルを二つずつ。
大聖女には、"魔法連弾"と"剣速"
拳聖には、"自然治癒"と"拳速"
天弓士には、"物理障壁"と"射速"
王家の盾士には、"戦盾"と"幻盾"
王家の支援魔法士には、"魔法効果倍"と"遠距離支援"
それぞれが今必要とするスキルです。
以前より戦いやすくなるでしょう。】
(ありがとうございます!
カッカ様。
その他の精霊様の情報を教えて貰えないだろうか?
ダメかな?)
【氷の精霊は、魔族の国の閉ざされた氷塊。
地の精霊は、獣人国の失われた大地。
水の精霊は、聖教国の海の神殿。
雷の精霊は、サンダ人民国の地獄剣山。
闇の精霊は、魔族の国の端、全てを飲み込む穴にいます。
取り敢えず、地の精霊ノームか水の精霊ウンディーネですね。
後は、色々問題があります。
魔族の国は行くのに苦労します。
サンダ人民国は、それこそ差別の激しい国です。人族優先主義の国ですから。
人族以外には厳しい国です。
比較的楽に行けると思えるのが地の精霊と水の精霊のところですね。】
聖教国と獣人国かぁ。
なんか勇者パーティとの因縁が付き纏うよなぁ。
皆も俺同様苦笑いしていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
勇者シルバと怪僧ゲルは、聖教国のはずれにある草原のカシエラの家に来ていた。
「はい!あっ!
なんでアンタ達!
私に用なんてないでしょう!
帰れ!」
「まあ待て!
俺の左目と○ンポと○玉を治してくれ!」
「知らないわよ!
なんで解雇された私に言ってくるのよ!」
「カシエラ!いつ解雇したんだ?!
俺達は何も言ってない!
何を言ってんだ?!」
「えっ?!でっでも!
私はスキルが消失したのよ!
治せと言われてもできないわ。
もう、私は聖女でもなんでもないの!
もう静かに暮らすんだから!
邪魔しないで!」
「本当にスキルが消失したのか?!
そんなことがあるのか?」
「知らないわよ!消失したんだから、そんなこともあるんでしょ!
それに、その目完璧に潰れているじゃない!
私がスキルを使えたとしても、"聖女の癒し"では潰れたものの再生は無理よ!
"大聖女の癒し"じゃないと再生は不可能よ!」
「じゃあどうしたらいいんだよ!
じゃあ、左目はいい!
○ンポと○玉を!」
勇者シルバは、ズボンを脱ぎ出す。
「うっぎゃ〜!なんで脱ぐのよ!
気持ちの悪い!
あっダメダメ、無理無理!
左目と同じじゃない!
"大聖女の癒し"使える奴に言いなさいよ!」
「どこに居るんだよ!」
「"大聖女の癒し"と言えば、大聖女マリアンでしょ!」
「死んで居ないじゃないか!」
「えっ!……そうね。
なんで、こんなことを……口にしたんだろう……
……………………聖属性魔法極………
大聖女マリアン………の娘………。
そう!大聖女マリアンの娘よ!
そいつに治して貰えばいいじゃない!」
「そいつは、使えるんだな!
どこに居る?」
「知らないわよ!
………大聖女マリアンが居た教会にいるかも。
ガーランド王国のリースという町の教会に居るかもね!」
「ガーランド王国のリースだな!
わかった!
ゲル行くぞ!
カシエラ!お前本当にスキルなくなったんだな?
じゃあ、本当に用無しじゃねえか!
本当に役に立たない奴だぜ!
その大聖女の娘をパーティに引き入れてやる!綺麗な奴だったらいいな!
お前みたいなブスなら、治療させてこき使えるだけこき使ってやる!」
「うるさい!早く帰れ!」
家の扉を叩き閉めるカシエラ。
ある意味、こんなクソ勇者と縁が切れたのは良かったのかもしれない。
そう思うカシエラだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【あっそうそう。
イシスと私は比較的まともだけど、
他の精霊は結構クセが強いから。
気を付けて〜。】
カッカ様、最後に爆弾ぶん投げやがった。
クセが強いって……どのように?
不安になるフミヤ達だった。
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