第31話 絡み合う二人

男とリリィは、高級宿の一室に入っていた。


リリィは、頭ではあり得ないことをしている自覚があるのに、この男に逆らえないのだ。

リリィは思う。


(何故、フミヤ様にあんなことを言ってしまったのか?

私は、私は。

何故この男に逆らえないの。この男が顔を覗き込んできて、この男の左目から目が離せなくなった。

嫌だ。嫌だ。何をされるの?

嫌だと思っていても言葉に出せない、態度に出せない。

怖い……怖い……フミヤ様。助けて!)


心で悲鳴をあげるリリィ。


男はそんなことお構いなしだ。


男は部屋のソファに座っている。


「フフフっ。

さあ、始めようかぁ。

まず、服を脱ぎなよ。

下着だけになって、ベッドに横になるんだ。フフフっ。」


リリィは虚な目で、言われたとおりにするのだった。


服のボタンを一つ二つと外していく。


そして上着を床に落とす。


リリィの豊かなそして形の良い胸が下着だけで守られている。


次は、ズボンを脱ぐ。そして、床に落とす。


下着姿になったリリィ。


ベッドに横になる。


「フフフッハハハハッ!

これは良い!こんな上玉!

なかなか居ないぞ!

最高じゃないか!

ゆっくり楽しむとするか!」


リリィは思っていた。


(いっ嫌だ!嫌だ!なんでこの男に犯されないといけないの!

嫌だ!嫌だ!フミヤ様!助けて!

私は、フミヤ様のものなのに!

嫌だ!あの目、あの目を!」


男は自分の服を脱ぎ捨て、リリィのもとへと行く。


そして、部屋の壁に覆いかぶさる影が虚しく写っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「あっ。何処に行ったかわからなくなったのです!フミヤ様!探すのです!

フミヤ様!」


俺はララの腹パンで正気に戻る。


そして、女性陣が慌てて探そうとするのを静止した。


「なんで止めるのです!

フミヤ様は、良いのですか!」


(良いはずないだろう!

大丈夫だ。

二人が去って行く時、俺はスキル"影使い"をあの男の影に発動した。

今から、あの男の影を使ってその場所に行ってくる!皆は、今日泊まる宿を探していてくれ。リリィを連れ戻してくる。)


俺は、影使いを使って男の影へと移動するのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


男がリリィに覆いかぶさる。


「フフフッ。本当に良い女だぁ。

たまらねえな。」


リリィの右手が何かに制御されたかのように、動かない。

動かしたいのに動かない!

心で必死に抵抗する。右手が震えながら動きだす。


男がリリィの首筋に顔を埋めようとした時だった。


リリィの右手が、右の人差し指と親指がこの男の左目を捉えた。


そして、握り潰す。


「うっぎゃぁぁぁぁ!痛え!痛え、!」


男の左目を潰した瞬間リリィは、この男の支配下から解放された。


リリィは、すぐさま服を拾う。

代わりに床に落ちたのは、リリィの涙だった。

ギリギリ助かったとはいえ、リリィはフミヤに言ってしまった言葉を悔いていた。


痛みに、もがいている男の影が部屋の壁に激しく暴れている。

その時、その影からフミヤが現れたのだ。


(リリィ!自ら何かしらの催眠を解いたのか!?

……早く服を着ろ!

コイツ!殺してやる!)


俺は、ブチギレていた。

下着姿のリリィを見た瞬間に、男に殺意を覚えたのだ。


俺は、魔剣ブラックローズを鞘から抜こうとした。


それをリリィが泣きながら必死に止める。


「まっ待ってください!ふっフミヤ様!

私の為に人殺しなんて!

私は大丈夫!大丈夫ですから!

ごめんなさい!ごめんなさい!ふっフミヤ様!」


俺は魔剣ブラックローズから手を離す。


(わかった……早く服を着ろ!)


俺は剛力を発動し、もがいている男の股間を踏み潰す。

そして、壁に向けて蹴り飛ばす。


男は悲鳴とともに、壁にぶっ飛び気絶した。


俺は服を着たリリィを確認し、抱き寄せる。

そして、空間転移を発動したのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


転移した場所は、冒険者ギルドの前だった。


そこには、まだ姫、アル、ウル、ララが居た。


「リリィさん!大丈夫だったのですか〜!

心配しました〜!

なっ何もされなかったのですか〜?!」


「…………ごめんなさい!ごめんなさい!

うっ!うっうっ……」


泣き崩れるリリィ。

セシル姫とララさんがリリィを抱きしめる。


アルとウルが俺の元にくる。


(ギリギリだった。リリィが自分で男の左目を潰していた。

本当にギリギリだった……)


「……殺してきましたか!

あんなクズ殺さないと、被害者が増えます!」


(ブチギレて殺そうとしたら、リリィに止められた。自分の為に人殺しはと言われた。)


「なっなんで!なんでフミヤ様!

じゃあ!僕が殺してくる!

あんなの野放ししてたら駄目だ!

女の敵だよ!」


(いや、もう何も出来ないだろう。

股間を踏み潰してやった。

本当に殺してやりたかったが……)


「……股間を!

じゃあ、いい。

でも、僕も本当なら殺してやりたい!

リリィさんが危ない目にあったんだから。」


ウルもアルもそれ以上は何も言わなかった。

泣いているリリィを気遣ったのだろう。


俺達は、暗い表情のまま宿を取った。


その日、夕飯にリリィは出てこなかった。


俺達は、それぞれ無言で夕飯を取り、各々部屋に戻ったのだ。


夜が更けていく。

俺は、なかなか寝付けずにいた。


その時部屋の扉をノックする音。


俺は扉を開けた。


リリィだった。


ずっと泣いていたのか、目が赤くなっていた。


(どうした?寝れないのか?)


「……ごめんなさい。フミヤ様、ごめんなさい。……」


部屋に招き入れる。


「……あの男に操られていたとしても……フミヤ様に酷いことを言いました。……ごめんなさい!」


(女ったらしってやつか?

でも、その前にも言われたぞ。

何も変わらない。)


「……全然ちがいます!

その前に言ったのは、フミヤ様に甘えてのこと。………全然違うのです。

私は、ずっと悔いていました。

操られている時も。

……フミヤ様に助けを求めました。

何度も何度も!

私は、私は!

私の全てはフミヤ様の物なの!」


リリィは、唐突に俺にキスをした。


俺はそれを、しっかり受け止めた。

お互いが求め合うかのようにお互いの唇を吸う。


そして、自然とベッドに横になる。


唇を離すのが惜しい。

しかし、一度唇を離して聞く。


(リリィ。いいのか?)


「はい。私の全てをフミヤ様に……」


服を脱がしていく。

リリィの綺麗な肌が露わになっていく。


そして、下着を取る。


まるで彫刻のような綺麗なリリィの胸。

俺は、顔を埋めた。

甘い香りが鼻をくすぐる。


俺は、優しく宝物を触るかのようにリリィを愛した。


リリィは、最後に涙を一雫流したのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


朝、俺の腕の中でリリィは眠っていた。

いつもの光景だが、いつもと違う。

いつもは、大人の女性の寝顔のリリィが、今日はとても幼く見えた。まるで少女のように。

顔立ちが綺麗なので大人びて見えるが、まだ18歳なのだ。

でも、幼く見えたのはそれだけではないのは自分でもわかっていた。

愛おしくてしょうがないんだ。

その気持ちがそう見させているのだ。


俺は、リリィにそっと、キスをした。


リリィはゆっくり目を開ける。


そして、顔を赤らめ言う。


「………フミヤ様、そんな見つめないでください。恥ずかしいですわ。」


(ふふふっ。おはよう!

リリィ!これから、よろしくね。)


「……なっ何がですか?何をよろしくなのですか?

ちゃんと言ってくださいよ〜。」


(ハハハハッ!さあ!起きるぞ!

リリィ!お腹すいたろ!

顔洗って、朝飯食べにいこう!)


「ズルい!

ズルいですわ!何をよろしくか言ってくださらないのですか?!」


リリィは、プクッと膨れる。


俺は、指先で膨れた頬を突いてやる。


「ブ〜。ふふふっ。もう!フミヤ様ったら!」


俺とリリィはキスをした。


そして、手を繋いで顔を洗いにいく。


そして、朝食を取りに食堂に降りる。


すでに、セシル姫、アル、ウル、ララは食事を取っていた。


四人は、何も言わないが俺とリリィを見て微笑んでいた。


その四人の心遣いが、逆に照れくさくなって、俺とリリィは顔を赤らめるのだった。


朝食を取った俺達は、武具防具店でアイスの魔法が付与されたローブを購入し、その足でアッソ火山へと旅立ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


フミヤ達がアッソ火山に旅立った時、

あの高級宿の一室には、一人のエルフが訪ねてきていた。


「なっなっなんなんだ?!

しっシルバ!

どっどうした!?何があった!?」


左目から血を流し、更には股間から血を流した男を叩き起こす。


「くっ!うぐぐぐっ!痛え!痛えよ!

俺の左目と俺の股間が!

痛え!痛えよ!

ゲっゲル!カシエラを!聖女カシエラを呼べ!

治療をしてもらわないと!

俺のジュニアが!俺のジュニアがヤベェ!ヤベェんだよ!」


「……いや、だからよ!

カシエラもダビエラもどこにも居ねえんだよ!

あいつら、それぞれ国に帰ったかもしれん!」


「なっなんで!

ヤベェんだよ!おれの○ンポが!

おい!聖教国に行くぞ!

ダビエラはどうでもいい。

カシエラに俺の○ンポと目を治してもらわないと!」


「おお!じゃあ、乗合馬車で行くか!

……何してんだよ。早く立てよ!シルバ!」


「……立てないんだよ!

○ンポが○玉が痛すぎて、立てねえんだよ!

ゲル!担いでくれよ!

くっクソが!あの女とあの男!ゆっ許さねえ!カシエラに○ンポと○玉、それと左目治させたら、男はギタギタに殺してやる!

女は、犯して犯して犯しつくしてやる!

ゲル!早く担いでくれって!」


「しょうがねえな!

お前、股間俺に付けるなよ!

股間のその血は、なんか付けたくないからな!めっちゃキモいからな!」


リリィをスキル"魅了"で惑わせ、リリィの体を好きにしようとしていた男は、フミヤが今1番会いたくない勇者シルバだったのだ。


フミヤは、何も知らず勇者の○玉と○ンポを踏み潰していたのだ。


リリィも勇者シルバだと知らずに"魅了"の根源の左目を潰していたのだった。


聖女カシエラを追って聖教国に行くことにした勇者シルバと怪僧ゲル。

フミヤの思惑どおり、まだ当分対峙することはなさそうだ。


勇者シルバの○ンポと○玉はどうなってしまうのか!!

それは、少し先のお話。



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