第28話 精霊イシスの怒り

俺の魔法障壁に黒魔女ダビエラの魔法が次々とぶつけられる。

轟音を残し、弾いていく。


ダビエラは、手を休めない。

本当に魔法障壁を破るつもりだ。


そして、魔法障壁に亀裂が入る。


(ララさん!

俺に、しがみついてくれ!

行くぞ!)


俺は、"瞬歩"と"疾駆"を発動する。

瞬間的にダビエラの魔法から逃げたのだ。


黒魔女ダビエラと聖女カシエラの間を通って向こう側へ。


間をすり抜けようとしたとき、ララがしがみついていた手を離した。


ララは、聖女に向かって殴りかかる。


俺は、それを見て黒魔女ダビエラに憑依を念じる。


俺は、黒魔女ダビエラに憑依した。


ララは、すり抜け寸前で聖女に殴りかかったが、聖女カシエラは物理障壁で身を守っていた。


ララは、物理障壁を殴り続ける。


「ふふふっ。この子私の物理障壁を破る気だわ。できっこないのに。ふふふっ。

ダビエラ、早くこの子に魔法を撃ちなさいな。

男はやったのでしょ。そこに倒れているし。」


聖女カシエラの言葉に俺(黒魔女ダビエラ)は答えてやる。


(何勘違いしてるんだ?

ダビエラの体は俺が乗っ取ったぞ。

ララさん!その物理障壁、俺がやぶろうか?!)


「フミヤ様!大丈夫なのです!

ララの必殺技出すのです。

" 爆発しろ!爆烈拳!"」


ララの拳が赤い炎を纏ったと思うと、

カシエラの物理障壁にぶつかった瞬間、凄い音とともに爆ぜた。

物理障壁が粉々になる。

唖然とするカシエラをララが殴り倒す。

更にララがマウントを取って殴ろうとした時、カシエラが動く。


「くっ!舐めるな!

" 拘束" 」


ララが光の鎖で縛り付けられる。


カシエラは、拘束したララを蹴り上げようとする。


俺は、"覇気"を発動する。


【"聖女カシエラ!動くな!

ひれ伏せ!】


カシエラが蹴り上げようとした足を止める。


そして、その場にひれ伏せる。


「うぐぐぐぐっ。ダビエラ〜。

どういうつもりなの〜!

ゆっ許さないから〜!」


【" だから、ダビエラの体を乗っ取ったって言ってるだろう!ララさんの拘束を解け!

直ぐにだ!】


聖女カシエラが歯を食い縛りながら、ララの拘束を解く。


【ララさん。大丈夫?】


「フミヤ様!大丈夫なのです!

ララは元気一杯なのです!」


その時、俺(黒魔女ダビエラ)の横にスッと現れる影。

精霊イシス様だった。


「" 世界樹アダムよ〜。

愚かな者を捕らえたまえ"

" restraint of spirits " 」


聖女カシエラの体に蔓が何重にも巻きつき拘束したのだった。


イシス様が俺(黒魔女ダビエラ)に言う。


「フミヤ様。その者も拘束します。」


俺は、ダビエラから人形に憑依し、受肉する。


痙攣するダビエラ。


「"restraint of spirits"」


イシス様は、容赦なく拘束したのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「うぐぐぐぐっ!

殺す!殺す!殺す!

わっ私は、聖女だぞ!

聖女の私にこんなことをして!

聖教国マリア教会が黙って居ないぞ!

お前達絶対皆殺しだからな!」


「かっカシエラ!

そっその前に、勇者シルバと怪僧ゲル!

私らの仲間が黙ってないよ!

貴様ら!勇者パーティに手を出したこと、後悔させてやるからな!」


(はいはい。

もういいよ。いずれぶつかる運命だし。

勇者パーティがクズだということも理解できた。

その前に火を消さないと。)


俺は、ダビエラから奪ったスキル"水魔法 極"

の" ウォーターネット"を発動し、エルフの森を水の網で一気に被せる。

被せた途端、火が鎮火していく。


(後はエルフが消火してくれるだろう。

イシス様!拘束ありがとうございます。)


「フミヤ様。勇者パーティが害悪だと理解されましたか?

この者達は、力を自分の欲望にだけしか使いません。

いずれ、勇者はルシア帝国も巻き込み混沌の世界にするでしょう。

フミヤ様達パーティが世界の光となるでしょう。」


聖女カシエラが地面に転がりながらも悪態をつく。


「けっ!何が光となるでしょうだ!

精霊イシス!お前は、さっさと私に聖属性魔法極を渡せばいいんだよ!

私が大聖女となれば!世界は、光に満ち溢れるのだから。ふふふっひひひ。」


「カシエラよ。

貴方は、聖女と呼ばれているのも不似合いです。

その心、邪に染まりすぎている。

聖教国も邪に囚われたようですね。

今となっては、聖教国も邪教者の集まりのようです。」


「うっうるさい!さっさと聖属性魔法極を寄越せ!

世界樹アダムを焼いてしまうぞ!」


「!!!」


イシス様の表情が一気に変わる。

氷のように冷たい表情に。


「………愚かな。

世界樹アダムがあっての貴方達なのに。

聖女カシエラ、黒魔女ダビエラ。

お前達には、世界樹アダムの罰を与えます。

アダムに仕える精霊イシスが執行します。」


イシス様はそう言うと体から黒い煙を出した。


その黒い煙が聖女カシエラと黒魔女ダビエラに纏わりつく。


「………"スキル封印"………」


黒い煙が聖女カシエラと黒魔女ダビエラの体に吸い込まれていく。


「イっイシス!何をした!

ふざけやがって!」


「カシエラ、そしてダビエラ。

お前達のスキルを封印した。

聖女と黒魔女?

お前達は、相応しくない。

今日からお前達はスキル無し。

この世界で底辺の者だ。

弱肉強食のこの世界で生き抜いてみせよ。」


「なっなんて?なんて言った!?

スキルを封印した?

うっ嘘!嘘よ!

ヒール!ヒール!ヒール!

魔法が!聖属性魔法が!出ない!

わっ私は聖女なのよ!

こんなことがあって良いはずがないわ!

イっイシス!

世界の人を癒すことが出来なくなるのよ!

私しか癒せないのよ!

だったからスキルをかっ返して!

返せってば!返せ!」


「世界の人を癒す???

世界の人を汚すの間違いでは?

聖属性魔法極を欲していたが、お前にその資格は無かった。

聖属性魔法の最高魔法。"大聖女の癒し"すら、修得できていないお前に資格などない。

ふふふっ。スキル無しになったお前に教えてやろう。

どの道、お前が聖属性魔法極を手にすることは無かったのだ。

既に、このフミヤ様パーティのリリィ殿に聖属性魔法極は託されたのだからな。」


うわぁ。イシス様、今凄く悪い顔した。

ザマァという顔。


「うっ嘘よ!聖女でもない奴に、なんで!」


「だから、聖教国自体が教会自体が邪に染まっていると言っている。

大聖女マリアンの娘、聖女リリアンを迫害し、追放した。

真なる大聖女を。

この世界は、邪に染まろうとしていた。

しかし、光がさした。

真なる勇者パーティによって。」


イシス様。今サラッと凄いこと言ったぞ。

リリィの母親が大聖女。まあ、これは予想できた。

真なる勇者パーティ?

………聞かなかったことにしよう。


「フミヤ様…。この者達の処遇をお任せいたします。

再度、世界樹アダムを救って頂きありがとうございます。

では、また。」


イシス様はスッと消える。

あっさり居なくなったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


エルフ達の頑張りでエルフの森の火はすべて消火された。


俺がダビエラから奪ったスキルは、

"水魔法 極"

"雷魔法 極"

"闇魔法 極"

【疾風迅雷】【電光石火】

特級スキルが二つも。


極魔法三つと特級スキル二つ。

伊達に勇者パーティではなかったということか。


拘束されたままエルフ達に囲まれているカシエラとダビエラ。


イシス様にこの二人の処遇を託されたけど。

どうするか。


リリィが俺の側に来て言う。


「フミヤ様!勇者パーティ二人撃退!

やっぱりもう、勇者にも勝てるんじゃないですか!」


(何言ってんだよ。

やばかったんだからな。

聖女を殴り飛ばしたのはララさんだよ。

でもその後、ララさんも聖女に拘束されたんだからな。

イシス様が来なければ、どうなっていたかわからない状況だったんだよ。)


「フミヤ様!ララさんから聞きましたから!

イシス様が来た時には、片付いていたって!

ほらっ!ララさんが今も皆に語ってますわ。」


見るとララを中心に、アルやウル、セシル姫、里のエルフ達が集まっていた。


「そこで、フミヤ様が言ったのです!

"ララさん!俺にしがみついて!"

ララはその瞬間、フミヤ様の足にガシッとしがみついたのです!バッとじゃないのです。

ガシッとなのです。ここ大事なのです!

すると、風になったかのような早さで駆けたのです!

聖女カシエラの横に差し掛かった時、ララはここだっ!と思ったのです!

トウっ!っとフミヤ様の足から飛び出して聖女カシエラに殴り掛かったのです!………」


体を使って、物語のように語るララ。


(なっなんだあれ?)


「ふふふっ。小人族特有のものですわ。

英雄譚を詩にしたり、ああやって物語のように聞かせたりするんですわ。

詩吟家とか小人族が各国で活躍してるんですよ。」


(そっそうなのか?!

まあ、それはいいや。それより、イシス様にカシエラとダビエラの処遇を任されたんだけど、どうしたらいいと思う?)


「う〜ん。取り敢えず王国に一旦預けます?

でも、王国もルシア帝国との火種になるだろうから困るとは思いますけど。

でも、勝手にどうのこうのできないでしょう?」


(そうだよな。一旦王国に預けて、ガレーラ王と元帥に相談だな。)


その後、空間転移でガレーラ王国王城に飛んだ。





「なんだと!エルフの森をこやつらが燃やしただと!

ゆっ許せん!」


「まあ、少し落ち着くのじゃ。

ライデルよ。

勇者パーティの聖女カシエラと黒魔女ダビエラとはのう。

これは、王国で裁くわけにはいかんぞ。

ルシア帝国が、必ずこれをネタにしよる。

どうしたものか。」


「王よ!このままルシア帝国に帰らすのですか!

それこそ、勇者とルシア帝国がこれみよがしに戦争を仕掛けてきますぞ!

それに、聖女カシエラ……聖教国、教会も絡んできますぞ!」


「これは、困ったのう。」


「悪は叩くのです!

王国は何も悪くないのです!

堂々としていれば良いのです!」


「うん?この小人族は?」


リリィがララをバックハグしながら紹介する。


「小人族の族長の娘さんで、ララさんです。

フミヤ様のパーティメンバーとなりました。

拳聖の称号を持つ拳士でとても強いのですよ。聖女カシエラを殴り飛ばしたのですから。」


「ほう!拳聖……。

おお!"リトルパンチャー"か!」


「そうなのです!」


「そうか!しかし、なあララよ。

戦争は民も巻き込むのじゃ。

戦争など無いほうが良いのじゃ。」


(では、こういうのはどうかな?

俺のスキルで"記憶操作"というのがある。

聖女カシエラと黒魔女ダビエラの記憶を操作して、書き換えて、帝国に帰るのではなく、各々の国に帰って貰う。

すれば、帝国は何があったか勘付くこともない。

聖教国、教会も聖女カシエラのスキルが封印されているとなれば、カシエラに今までのような干渉、関心は無くなるだろう?

帝国での滞在中に能力を無くしたと記憶を改竄すれば、王国には何も無いだろう?!)


「なるほど!

お願いできるか!フミヤ様!」


俺は、その後カシエラとダビエラの記憶を操作するのだった。


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