第27話 凶報

「できたで!

久しぶりに徹夜で叩いたわ!

流石はオリハルコン!

ええ音響かせよった。

ええ経験させてもうたわ!

ありがとうな!

って、ワシの声フミヤのアニキに聞こえとんやろか?」


昨日、あの後地上に戻り俺は、リリィの魔石ペンダントに憑依し、木の人形をドラス王の弟ドラゴにオリハルコンとともに預けたのだ。

そして、翌日の朝、完成したと報告を受けやって来たのだった。


(リリィ、俺がありがとうと言ってると伝えてくれ。

それと、本当に頑丈か試して見せてくれと伝えて。)


「ドラゴさん!フミヤ様がありがとうございましたとの事です。

それと、頑丈さを見たいらしいです。

なんか試してくれますか?」


「よっしゃ!

オリハルコンの凄さを見せたろか!

フミヤのアニキ、よう見ときや!

これ、ミスリルで作った剣や!

この腕の細い部分に叩きつけるからな!

思いっきりいくで!

うぉっ!とりゃっ!」


" キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン〜"


とても澄んだ音が響く。


そして、ドラゴが持っていたミスリルの剣が砕け落ちる。


そして人形の腕は、全くの無傷。

傷一つついていない。輝いているのだ。


「……いっいたぁ!手が痺れよったわ。

半端ない反発力や!

これでこそオリハルコンやで!

フミヤのアニキ!

どや?!満足したか?」


(満足だと伝えてくれ。

それと、作業代はいくら払えばいいか聞いてくれ。)


「フミヤ様が満足だと。

それと、作業代はいくら払えば良いかと聞いてます。」


「フミヤのアニキから金なんかとるかいな。

こっちもオリハルコンを叩くことができて喜んどるんやで!

ワシも満足や。お互い満足でええやんか。

あっそれと、魔石はアースドラゴンの魔石を三分の一加工して、頭に埋め込んどいたで。

そやさかい、もう表に魔石が出ることないわ!

それとな、フミヤのアニキも冒険者らしい格好にせな!

タキシードは動きにくいんちゃうか?

だからな、このズボンと服。

デビルスパイダーの糸で作った逸品やで!

それとアダマンタイトの胸当てや。

これは金貰うけどな。

金貨10枚でどないや!特別価格やで!」


(買おう!リリィ頼む。

それと、人形に着せてくれるか?)


リリィがドラゴに金貨10枚を渡す。

そして人形に服を着せる。


俺は、人形に向けて憑依する。

そして、受肉。


一通り動かしてみる。異常なし。


(いいな!ありがとうな。ドラゴ。

良い仕事だ。)


俺とリリィは礼を言って鍛冶場を出て行くのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その後、ドラス王が小人族族長に謝罪に行くというので同行することになった。


「小人族の集落には迷惑をかけてもうた。

すまんかった。

フミヤのアニキにもえらい怒られたわ。

ララの嬢ちゃんにもボコられたしな。

すまんかったな族長。」


「ホホホっ。塀もドワーフの兵士が直してくれたのじゃい。

もう気にせんで良いのじゃい。

ララが殴って無事とは、流石ドワーフの王は頑丈じゃい。」


ドラス王の謝罪は、なごやかな雰囲気で終わり安心した。


その時だった。

リリィが鼻を押さえて言う。


「ふっフミヤ様。

なっなんか焦げ臭くないですか?」


(確かに。焦げ臭いな。

何処かで焚き火でもしてるのか?)


「フミヤ様〜焚き火でこれだけの臭いは、おかしいですわ。

そうですよね〜アル。ウル。」


セシル姫がアルとウルに確認する。


ウルが答える。


「これは、かなりの木を燃やしているよ。

誰がこんなことをしてるんだ?!

森でこんな臭いがするくらい燃やすなんて!

僕信じられないよ!」


アルが臭いの方向を見る。

世界樹アダムの方向、いわゆるエルフの里の方向だった。


すると、その方向から光の玉がフワフワ飛んできた。


光の玉が俺達の目の前で止まる。


妖精だった。小さな人型に羽の生えた妖精だ。

妖精が言う。


「精霊イシス様から伝言でしゅ。

エルフの里が攻められているでしゅ。

フミヤ様にお知らせしろとのことでしゅ。」


アルが叫ぶ。


「なっなんで?!エルフの里が攻められるの?!」


ウルが言う。


「フミヤ様!僕らエルフの里に行かなきゃ!」


アルとウルが駆け出そうとするのを俺は止める。


(アル、ウル。俺の空間転移で行こう!

その方が早い。一度訪れた所なら行ける!

皆俺の体に触れていろ。)


俺は空間転移を念じる。


景色が一瞬にして変わる。

エルフの里に転移成功だ。


里は、バタついていたがまだ攻め入られてはいない。


「まだ攻められていないのです。

敵は外なのです?

なら、やっつけるのです。」


小人族のララだった。


(えっ!ララさん?!

付いてきてしまったの?)


「悪者は、ぶっ飛ばすのです。

ララは、正義の味方なのです!

いつか、勇者もぶっ飛ばしてやるのです。

だから、ララもフミヤ様のパーティに入るのです。

父様にも言ってきたのです。」


(いつの間に話したの?

暴走した訳ではないんだね?!)


「ララは、暴走なんてしないのです。

ちゃんと父様に集落から出て行くと、フミヤ様達のお力になると言って出て来たのです。」


リリィが言う。


「フミヤ様。また女性が増えましたわよ。

フミヤ様の女ったらし〜。」


(たっ!たらしてないだろう!

そんなことより、敵を殲滅しないと!)


アルが情報を聞いて戻ってきた。


「敵は二人ですわ。

エルフの里に入れなくて、周辺の木々に火を放ったようです。

エルフの戦士が交戦したのですが、なかなか強く、負傷したようですわ。」


(そうか!俺が行く。

セシル姫は、取り敢えずここで待機。アルとウルもここで姫の護衛。

リリィは、負傷者の治療を頼む。

ララさんは、「ララも戦うのです。」


(でっですよね〜。

じゃあ!ララさん行くよ!)


俺とララはエルフの里の門を飛び出たのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


外に出ると周りは火の海だった。


広範囲に火が回っている。


エルフ達が必死に消火をしていた。


(敵は?敵は何処にいるんだ。)


すると、スッと現れる影が二つ。


「ふふふっ。

聖女カシエラ。敵だって。

私ら、えらい言われようだぞ。」


「ふふふっ。

貴方が苛立って燃やすからでしょうに。

黒魔女ダビエラ。」


「カシエラ。お前が世界樹アダムに"聖属魔法極"を貰いに行くっていうから付き合ってやったんだろ。

なのに、エルフの里に門前払い。

イラつくだろうよ。

焼いちゃえば、世界樹アダムに行けるだろう。全ては、聖女カシエラの為にやってやったんだぜ。」


「やはり、怪僧ゲルを連れて来れば良かったかしら。エルフが居れば難なく入れたのかも。」


「ゲルも勇者シルバも今は、使い物にならんだろが。

女に溺れているから。

本当に、あいつらの性欲はどうなってんだ。」


ララが俺に言う。

「フミヤ様。………こいつら勇者パーティなのです。

聖女カシエラとあの獣人は、黒魔女ダビエラなのです。

これは、なかなか厄介なのです。

エルフの戦士が負傷するのもわかるのです。」


(ララさん、俺の後ろに。)


ララが一歩下がる。


すると、聖女カシエラが言う。


「あらあら。

私達を敵だと言いながら、後ろに下がるのは何故?

敵認定したの貴方達なのに。

私達は敵と言われたことは、もう許さないわよ。」


いきなり、黒魔女ダビエラが魔法を放ってきた。

俺は魔法障壁を念じる。


黒魔女ダビエラの魔法を弾く。


「へぇ。やるじゃないかぁ。

魔法障壁ねえ。

私の魔法とアンタの障壁どっちが上か、ハッキリさせてやろうじゃないの!」


黒魔女ダビエラは、そこから魔法を乱れ撃つ。


凄い手数だ。手を振るごとに魔法が飛び出してくる。流石は勇者パーティの黒魔女と呼ばれるだけはある。


俺は魔法障壁を念じるしかなかった。


獣人だから憑依して体を乗っ取れば良いのだが、その隙を与えてくれなかった。


黒魔女ダビエラは更に両手を使って魔法の射出を高めていく。


聖女カシエラが狂気の表情で言う。


「私達は、世界の救世主なのよ〜。

世界の救世主に向かって、敵と言ったこと。

救世主に世界樹アダムに行かせないエルフの里なんか、潰してやるわ!ふふふっ。

ダビエラ〜!早く障壁潰してしまいなさいな。

各魔法の極を使えば潰せるでしょう〜」


「まあ、待てよ。カシエラ。

折角のショーなんだから。

ゆっくりと楽しませろよ。

ふふふっ。ふふふっ。ひひひ。」


黒魔女ダビエラの気味の悪い笑い声がエルフの森に響きわたるのだった。



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