第三章 ドワーフの国ドラスへ

第21話 エルフの里

一週間後、王と元帥に見送られガーランド王国王都から旅立つ。


セシルは、この1週間贔屓目ではなく本当に必死に修行をこなした。

最後は、オークも単独で頭を射抜き倒せるようになったのだ。

魔眼と射撃のスキルは良い組み合わせだ。


アルとウルもこの1週間、セシルを軸とした動きを徹底して訓練したのだった。


その中でアルとウルの能力も知った。


アルは、剣の舞という剣技スキルを持っており、攻防一体となった華麗な舞で敵を斬り刻んでいくスキルだ。

それと、支援魔法のスキルを有していた。


ウルは、氷属性魔法と大楯という盾スキルを持っていた。

セシルを軸とした戦いでは、この盾スキルを多用し、セシルの弓の体制作りに大いに貢献していた。


そして、今俺達は乗合馬車に揺られている。


「姫、この揺れに身を任せたほうが腰の負担は少ないよ。僕の経験だよ。

踏ん張ると腰にくるんだ。」


「ウル〜ありがとう!

助かりますわ〜。」


「もっと姫、私とウルに体重を掛けてください。それが力が抜けている証拠ですから。

見てください。

リリィさんを。

フミヤ様に体を預けているでしょう。」


「アル。本当ですわ〜

流石リリィさん〜

旅に慣れていらっしゃいますわ〜」


(……姫、これは違うと思うぞ。

リリィ、寝てるし。)


「早っ!

でも、すぐ寝れるのは僕、旅にはもってこいの能力だと思うんだ。

睡眠は体力回復にもってこいだからね。」


「姫も寝れる時に寝れるようになってくださいませ。

それが、冒険者ですわ。」


「成程ですわ〜努力しますわ〜

でも、今は無理だと思います〜

ワクワクが止まりませんから〜」


アルもウルも俺もそんなセシルに優しく微笑む。


(ドワーフの国ドラスが目的地だが、エルフ里、小人族の集落を経由して行くからな。

セシルだけでなく、俺もワクワクしてるよ。)


「フミヤ様。エルフの里まで半日くらいだね。僕とアルが案内するよ!」


「フミヤ様、是非世界樹アダムをご覧になってください!

姫は昔見られましたよね。」


「はい。今も変わらずですか?

懐かしいですわ〜

この旅でいつか〜対となる世界樹イブも見れるでしょうか〜。」


(へぇ〜対となる世界樹もあるのか。

どこにあるんだ。)


「西の大陸にあるエルフの国シルフィにありますわ。

行くには海を渡らないとなりませんから、簡単には行けません。

エルフの私達の悲願でもあります。

アダムの恩恵とイブの恩恵を受ける。

エルフの悲願です。」


「アル!ちゃんとフミヤ様に説明しなきゃ。

フミヤ様、僕らエルフは世界樹の恩恵を受けてスキルを獲得するんだ。

今の僕らのスキルは、世界樹アダムから授かったんだ。

姫もそうだよね。魔眼はエリシア様からの遺伝だけど、射撃と火属性魔法は世界樹アダムからだよね。」


「はい!そうですわ〜。5歳の時に〜叔父様に連れられて世界樹アダムの神託を受けましたわ〜。

世界樹アダムは〜世界樹イブの株分け。

両方の神託を受ければ〜より沢山のスキルと特別なスキルを得られると言われています〜。確かエルフの国のシルフィ女王、ただ一人その悲願を達成された方ですわ。

シルフィ女王は〜お母様のお母様ですわ〜。」


(えっ!ということは、セシルのお婆さんってことだよな!

ライデル元帥の母さんでもあるのか!

凄いじゃん!根っからの姫じゃん!

………だから、エルフ達がセシルを大事に大事にしようとするんだな!)


「お会いしたことがないのです。

ふふふっ。お会いしても〜私が孫だとわかって貰えないかもです〜」


「姫。僕は大丈夫だと思うよ。

だって姫、ビックリするくらいエリシア様にそっくりにお育ちになってるから。」


(じゃあ、いつかシルフィ女王に会いに行かなきゃな。

海を渡って別大陸に行くか。

それくらい、旅すればセシル。

セシルの旅の終点をエルフの国シルフィにしたら良いかもな。)


「フミヤ様!海を渡るのは並大抵ことではありませんわ。

皆、エルフ達が渡ろうとして渡れないから、シルフィ女王だけしか達成していないのですから。」


(アル。わかってるよ。

そこを目標に頑張るってことだよ。

セシルの旅の目標になるだろう!

まあ、海を渡る方法はいつか俺がなんとかするよ。

セシルにお婆さんと会わせてやりたくないか?)


「もちろん!会っていただきたいですわ。

私もウルも当然、シルフィ女王様のお顔を拝見したいですもの。」


「フミヤ様。僕らエルフには、シルフィ女王様は神みたいな感覚なんだよ!」


「うっう〜ん。神?なんの話をしてるんですか?」


(おっ!リリィ起きたのか!

エルフの国シルフィのシルフィ女王の話だよ。シルフィ女王がセシルのお婆さんなんだって。)


「ふむ。フミヤ様はこの世界の人ではないから知らないのはしょうがないですね。

私は、知ってましたよ!

だって、姫はエリシア様の娘ですもん。エリシア様はシルフィ女王の娘ですからね。」


(なんだ、ガーランド王国では、有名な話なのか。)


するとセシル姫が言う。


「……ガーランド王国で〜有名ではないと思いますよ〜。

お母様がシルフィ女王の娘と〜知ってるのはエルフの里の者と一部の聖職者のみです。

リリィさん!また、自爆しましたね〜。

大聖女様と〜何かしらの関係が〜あると言ってるのと一緒ですよ〜。

まあ〜私達はリリィさんが聖女であろうと、なかろうと関係ありませんけど。」


「…タハハハハッ。

自爆しちゃいましたか。

寝起きだから、思考が止まってましたね。

ふふふっ。」


リリィは、聖女の話になると歯切れが悪いな。


まあ、追求はしないが。


そんな話をしながら、馬車に揺られるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ある森の手前で、俺達は乗合馬車を降りる。

他の者は、降りることはない。

ここは、エルフの里に続くエルフの森。


エルフの同行者が居ないと立ち寄れない場所なのだ。


エルフの里まで辿り着いたとしても里の前で、追いかえされるのだ。 


何故なら世界樹アダムの守り手がエルフの里のエルフ達だから。

エルフが認めた者しか、入れないのだ。


それくらい世界樹アダムをエルフ達は大切にしているのだ。

世界樹アダムの奧には小人族の集落もあり、小人族の保護の為にもエルフ達が一役を担っているそうだ。

人族は、まれに小人族を奴隷にする者がおり、エルフはそれをさせないためにも、入里をしっかりと管理しているのだ。

これは、セシルの母エリシアが族長だった時から管理を始め、小人族は今でもエリシアに深い感謝の意を示しているそうだ。


エルフの同行者でも、ガーランド王国王都前でやっつけた"ゴブリンの嘆き"のような、犯罪者のようなエルフは、いくらエルフでもエルフの里には入里させないなど徹底しているのだ。


アルとウルの話では、エルフの特性なのか見たらある程度わかるというのだ。


不思議なもんだ。


俺達は、アルとウルの案内でエルフの森に入った。


入った時、感覚が狂わされるような感じになった。


「これは、世界樹アダムが出してるオーラなんだ。僕らは慣れてるからなんともないけど、

慣れない人は、多分歩いている方向がわからなくなって、いつまでたっても、森の入口付近をウロウロするだけで終わってしまうと思うよ。」


(ある意味エルフの里で長年暮らした者しか、近寄れないってことか。)


「そういうことだね。

世界樹アダムの自己防衛でもあるんだろうね。

世界樹の葉や、枝は高値で取引されるから、乱獲されないようにするアダム自身の守りなんだろうね。」


ウルが説明し、アルが先頭を歩いていく。


ある場所まで来るとアルが叫ぶ。


「我はエルフの里の戦士アル!

里を開かれたし!」


すると、目の前の景色が一変した。


まるで、幻術に掛かっていたかのように、今まで目の先が鬱蒼とした森だったのが、建物やエルフ達が歩いている景色に変わったのだ。


「結界でカモフラージュしているんだよ。

里に関係のないエルフでも結界は解かない。

まあ、その前にここまで来れないとは思うけどね。」


(凄えな。本当に徹底しているんだな。)



すると、エルフ達が集まってくる。


そして、皆がセシルの前で跪く。


「セシル姫!よくエルフの里にお帰りくださりました!

エルフの里は、セシル姫を歓迎いたしますぞ!

アル、ウル、護衛ご苦労だった。

同行者のお二人も歓迎いたしますぞ!

ごゆるりとなさってください!」


(ビックリした!

歓迎してくれているのな。

一瞬帰れと言われるのかと思ったよ。

なあ、リリィ。)


「そんなはずないじゃないですか。

アルとウルが居るんですよ。

姫も現族長の姪なんだし!

フミヤ様も、面白いですね。」


リリィは、俺にそう言って笑うのだった。


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