第20話 決闘

翌日謁見の間で、王と元帥に二人のエルフの女性戦士を紹介された。

セシル姫の護衛という形らしい。


元帥が言う。


「アルとウル姉妹だ。

エルフの里でも、この姉妹の強さは抜き出ている。

本人達も姫の護衛には、やる気を見せている。

フミヤ様、リリィ殿。よろしく頼む。」


アルとウルの鋭い視線が俺達に飛ぶ。

エルフだから美形なのだが、自分達は強者だという主張が強い。

どこか、俺達を見下している感もある。


(まあ、姫だから護衛も必要なのかな?!

まあ良いけど俺達は、あくまで仲間として同行できるのか、この1週間で見極めるだけだ。

条件は、聞いたか?

姫が最低でもゴブリンを単独で仕留めることができるか?

オークとの戦闘で、連携を取れるか?ということを見る。

護衛だか何だか知らんけど、甘やかすだけなら邪魔でしかないからな。

その辺わきまえてくれよ。)


アルとウルの表情がより厳しいものに変わり、口を開く。


「偉そうに!

ライデル様!姫の冒険に、何故このような者達が必要なのです!

姫のことなら私達二人だけでもしっかりと守って見せます!

こんな得体のわからない冒険者など必要ありません!」


「アルの言う通りだよ!

ライデル様!アルと僕で充分さ!

僕が姫の盾となり、アルが剣となる。

こんなお兄ちゃんとお姉ちゃんなんか必要ないね。」


「お前達、失礼だぞ!

このお二人は、王と姫の命の恩人だぞ!

実績も申し分ない!

オークキングとサタン級悪魔を討伐したのだぞ!

それだけ考えても、お前達より強いことは明白だ。」


(王と元帥よ。

俺達は、別にいいぞ。

姫との同行をこっちが頼んでいる訳ではないんだから。

頼まれたほうなんだからな。

そっちは、そっちでやるってんなら面倒だ。

俺達は断るぞ。

何かの縁と思って条件付きで同行しても良いと思ったけど、なんか面倒臭いな!

まあ姫を守れると言うなら、守って見せろや。

魔物だけが敵ではないんだぞ。

勝手にしたらいい!)


「本当に偉そうに!

何様のつもりかしら!

姫と同行できるだけでも光栄だと思うべきなのに、条件?

ふざけてんじゃないわよ!

ぶっとばしてやろうか!」


「アル!僕も同じだよ!

こいつ、舐めすぎ!

決闘を申込む!

逃げるなよ!お兄ちゃん!」


「まっ待て!おっお前達はどうして、そうも血の気が多いんだ!」


(元帥!良いぜ!

その姉妹の決闘を受けてやるよ!

エルフの里の戦士かなんか知らねえけど、

閉鎖的な場所で強いと、持ち上げられていたってことを、いや、世界は広いってこと教えてやろうじゃないか!

決闘って言ったんだ。

模擬戦とか眠いこと言うなよ。

魔法ありの真剣使いの正真正銘の決闘だ。

良いな!)


「ぶっ殺してやる!」

「アル!僕に先やらしてよ!僕が、ぶっ殺す!」


(お前ら二人でかかってこいよ。

俺は構わないぞ。

お前ら二人と俺の決闘だ。)


「へぇ〜お兄ちゃん!カッコつけてるね〜。

僕、今まで同じようなこと言う奴何度も見てきたよ。

その度に、ぶっ殺してやったけど!」


「本当舐めてるわね。

ぶっ殺す!」


(はいはい。

ぶっ殺してみろよ。

ぶっ殺すぶっ殺すばかり、なんの語彙力もねえな。)


俺はなんか苛立ち、アル、ウル姉妹と決闘をすることになったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


城の中庭。

王と元帥、セシル姫が心配そうに見ている。


リリィが言う。


「フミヤ様!憑依でスキル奪って、痙攣させるのでしょう!

もう、余裕ですね!

フミヤ様の憑依は最強ですわ。」


(リリィ!今回は憑依を使わんよ。

なんか、ガチで腹立ったから。

実力で、わからせてやる。

体で理解したらいいんだ。)


「えっ!え〜!

こっ殺したら駄目ですよ〜。」


(リリィ!殺さんよ。

痛い思いはしてもらうけど。

誰かを守る、守って見せるっていうのが傲慢な考えだということを教えてやるんだ!

俺みたいにチート能力を持っているならともかく、一般人より少し強いだけでその台詞を吐くなんて、なんて傲慢なことか。

こんなチート能力を持ってる俺でもリリィを守る為に、まだ全然足りないと思ってるのに!)


「確かに、フミヤ様はオリハルコンで人形を作ろうと考えてますもんね!」


(ああ!それでも足りないと思ってるよ。

だって、そうだろ。

この世界は、本当に弱肉強食。

弱い奴は強い奴に食われるんだ。

リリィもそれなりに戦えるだろ?

ゴブリン程度なら、斬り伏せれるだろ?!

俺はリリィを守るけど、100%ではない。

どうしても目を離さないといけない状況も出てくる。

その時に、リリィならほんの数秒敵に抵抗する力があるだろ。

その数秒で俺がリリィを守れるんだ。

だから、セシル姫も抵抗する力を付けなきゃならない。

あんな、守れると言い切る傲慢なやつに守られているだけでは、姫はいつか命を落とすよ。

それをまず、傲慢なエルフの女戦士二人に、わからせてやる!)


「おい!何ウダウダ言ってるのですか!

今更怖くなったのですか?!

女に泣き言聞いてもらって情けないですわね!」


「アル、僕は別にいいと思うな。

遺言として、女に最後の言葉を残しているんでしょ。

だって、あのお兄ちゃん、もう死ぬし。」


(本当、弱い奴ほど強い言葉を吐くな。

お前ら、俺を倒す作戦考えんでもいいのか?

俺をみくびってんなら、そこからしてお前ら姫の護衛失格だぞ。)


「お前ごときに、何の策がいるのさ。

アルと僕のコンビネーションがあれば、楽勝さぁ。」


元帥がやってくる。


「フミヤ様。出来たら殺さないでくれんか?」


(心配するな。殺さんよ。剣も抜くつもりはない。しかし、痛い目はしてもらう。)


「そっそうですか。

では、フミヤ様、そしてアル!ウル!

始めますか?!」


俺とアル、ウルは距離を取る。


アルとウルは、それぞれ剣を抜く。


俺は、何もしない。


「……それではよろしいか。

……はじめぇぇぇぇぇぇぇ〜!」


俺はその瞬間、瞬歩を念じ一瞬でアルの目の前に動き、左頬を平手打ちした。

そして、続けてウルの右頬を平手打ちした。


二人は突然のことで、かわすことも出来ず身構えることも出来ず倒れる。


(おい!それでよく守ると言ったな。

今、本当ならば護衛対象の姫は死んだぞ!)


そう言って俺は最初の場所に戻る。


「あっあのお兄ちゃん、消えたと思ったら

アルの目の前に!

何をしたんだ!」


(ビックリしてるところ悪いな。

次、お前らに先攻撃させてやるよ。

いつでもどうぞ!)


「なっ舐めやがって!

ウル!やるよ!」


ウルが、魔法アイスランスを放つ。


俺は魔法障壁を展開する。


障壁にアイスランス当たって砕ける。


「えっ!……」


すぐさま、アルが距離を詰め剣を振りかぶる。

俺は、瞬歩で避ける。


アルの剣が地面を叩く。


俺は、アルの後ろをとり、顔面を地面に叩き付ける。


そして、ウルに向かって"吸収"を念じる。

ウルが、俺に向かって飛んでくる。


俺は、ウルの腹にパンチを入れる。


終わりだ。


(セシル姫!守られるだけでは、君はいつか命を落とす。

数秒でも、敵に抵抗できる力をつけないと駄目だ。

その数秒が君の生死の境目だ。

俺達に同行するなら俺が君を守れる数秒を自分で作らないと駄目だ!

この世界、俺より強い奴は居るぞ。

勇者は、山程スキルを所持してるんだろう?

そいつが、君の敵として立ちはだかった時、君はどうする?

俺に数秒をくれないか!

すれば、空間転移で君を逃すことも可能なんだ。

これが、君に条件を出した理由だ。)


「フミヤ様!一週間!

一週間必死で力をつけますわ〜。

だから〜お願いします!」


「私からもお願いする!

フミヤ様!セシルをセシルを頼む!」


「フミヤ様。アルとウルはどうしたら。

不要ですか?」


(数が多いほど、危機を打開する手を打ちやすいが、さっきのような態度では邪魔になるだけ。元帥!意識を戻して、俺をパーティリーダーと見るならこのまま預かるよ。

リリィ、治療をしてやってくれる?)


「わかりましたわ。フミヤ様。」


リリィが、"大聖女の癒し"でアルとウルを一気に回復する。


王と元帥は感心する。

元帥が言う。


「フミヤ様の絶対的力と、リリィ殿の聖女を超える聖属性魔法。

姫をお任せするのは、やはりお二人しかいませんな。」


(姫を預かるなら、数年後には姫も凄い弓士になってもらうよ。

アルとウルもパワーアップしてエルフの里に返すよ。)


王が言う。


「フミヤ様。先程セシルに言った言葉なんじゃが……フミヤ様は、勇者が敵になるとお考えなのか?」


(まあ強者が誰だろうと考えた時、勇者を例えにしたらわかりやすいかなと思った。

でも、なんか俺が本で読んだ誠実な正義の味方的な勇者と違う気がするんだよなぁ。

ギルド本部長に話を聞いた限り、女好きだというし、魔王退治というのは掲げているだけの私利私欲にまみれている奴って印象だ。

そんな奴とバッタリ俺達パーティが遭遇して見ろ。

リリィも姫も間違いなく、勇者は色目を使うだろう。アルとウルだって、エルフで綺麗。

勇者が絡んでくるのが目に浮かばないか?

そうなった時、必ず敵対することになる。

そう思わないか?)


「成程。フミヤ様の考え通りでしょうな。

今もルシア帝国の皇女のケツを追っかけているという話ですしな。

その時は、戦われるので?」


(そうなった時はな。

でも、まだ敵わんだろうから出来るだけ鉢合わせにならんように行動するつもりだ。

一生会わないに越したことはないけどね。)


その時、アルとウルが意識を取り戻した。


俺は目の前に行き言う。


(姫を守るという気持ちは大事だが、姫にも相応の努力をしてもらって、危機の時数秒の抵抗ができるようになって貰わなければ、全滅するぞ。

守るのと、甘やかすのは違う。

それをしっかり理解しろ。

俺がパーティリーダーだ。

気に入らないというなら、お前らが外れろ。

実力は示した筈だ。)


アルとウルは、その瞬間跪き言う。


「フミヤ様の元で修行させてくださいませ!お願いします!」


「僕もお願いします。

もっと強くなりたいです。」


「フミヤ様!決まりですわね!

パーティ出来上がりです!」


リリィが上機嫌に言ったのだった。


その後迷いの森の屋敷に皆で向かうのだった。


ーーーーー第二章完ーーーーーー


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応援ありがとうございます!

2章完となります。

3章は、ドワーフの国ドラスへ

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